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112話 アリス戦決着!

【アリスレポート:その5 】

件名:アリスのリア充さについて。

 

 アリスはリア充である。

 容姿は非常に優れており、華奢で愛らしく、出るとこは出て、引っ込むとこは引っ込んでいるワガママボディで、世の男共を魅了している。

 本人もそんな自身の魅力をよく理解しており、その魅力を最大限に使って男共を虜にし、貢がせ、搾取し、最終的にその魂を奪う極悪非道の悪女である。尚、奪う相手はイケメン限定。

 

 更に魔界のファッションリーダーとも言われ、魔界のファッション雑誌『ManMan』でも常に表紙を飾るほどであり、魔界女子達の流行の最先端を先取りするスーパー女子である。

 

 尚、その『ManMan』での独占インタビューにおいて………。

 

『流行の可愛い服を着るのは女子の常識。逆に鎧を着てる女子とかアリエナイ。特に血管浮いたような鎧を着て、悪魔みたいな兜被った芋っぽい女子とかナイナイ。女子力が低いとかの問題じゃなく、地面にめり込んでるww』

 

 と、語っている。

 

 更に更に、彼女は常にお供としてセバスチャンという悪魔を従えている。

 このセバスチャンだが、銀髪・長身・イケメンの片目にモノクルをかけた執事風の悪魔であり、非常に忠誠心が高く、彼女は彼に自身を『お嬢様』と呼ばせ、常に行動を共にしている。尚、下にセバスチャンの写真を添付する。

 

※めっちゃイケメン紳士のセバスチャンの写真。

 

 更に、アリスとセバスチャンと

 

※アリスがセバスチャンに紅茶を入れて貰っている写真。

 

※アリスがセバスチャンを椅子にして座り、セバスチャンは恍惚とした表情をしている写真。

 

※アリスがセバスチャンにお姫様抱っこされている写真。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 香は激怒した。

 レポートの内容を聞いた香は一瞬頭が真っ白になり、その後直ぐにどす黒い感情に支配された。

 

 そして、必ずや邪治暴虐なる悪女を成敗すると心に誓う。

 

 香はレポートの内容を何度も聞き、アリスについての情報を頭に叩き込んだ。性格・能力・戦闘スタイル。ありとあらゆる情報を頭に入れ、そこから様々な対策を練り出していく。高校受験の時にも、これほど集中したことはないという程の真剣さだ。

 その鬼気迫る容姿は余りにも凄まじく、ザッドハーク以下の仲間達が一切の声をかけることができなかった程である。

 

 香は明け方近くまで作業に没頭し、その後は朝食も摂らずに手早く装備を整えると、ハンナに邪魔が入らないように人払いの結界を準備させた。その結界は、アリスのプロファイリングから予想される行動に伴い、ここだという出現位置に設置するよう指示した。そうして自分は王都正門近くに移動すると、嫉妬と憤怒に燃えたギラついた目で張り込みをはじめた。

 

 そして、数時間………。

 

 獲物がのこのことやって来た。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 そうしてかかった獲物は、今は呻き声を上げながら地面に伏していた。

 

「ぐっ………ふっ………はっ………?!」

 

 ピクピクと無様に悶える虫けらを見ていると、なんとも言えない快感が沸き上がってくる。

 

「クフフ……良い様ね、アリスちゃ~ん。女子力地面にめり込んでる奴に地面を舐めさせられるのはどんな気分でちゅか~?」

 

 甘く優しい猫なで声でそう言えば、アリスは親の仇でも見るような形相で睨んできた。

 

「な……にを意味分かんないことを………。あんた一体………?」

 

「おや?私が分かんない?分かんないんだ。ハッ!!自分は情報収集に優れてるの~とか自慢してるくせに大したことないのね。ウケる」

 

 鼻で笑いながらそう吐き捨てると、アリスは暫し戸惑っていたが、直ぐに何かに思い至ったようにハッとした表情となった。

 

「おまえ……?!まさか勇者か?!」

 

「せ~い~か~い~からの、ご褒美脛殺し!!」

 

「おごえっ?!」

 

 素早く脛殺しを放てば、アリスは悲痛な叫びを上げながら転げ回った。

 

「ヒャヒャヒャ!いい~様ねぇ!凄くいい!だけどね、その程度じゃ私の溜飲は下がらない。下がらないわ……。下がる訳ないじゃない!あんなイケメン引き連れて余裕かましてる写真見せつけられて下がる訳ねぇぇだろ!この糞ビッチがぁぁぁぁぁ!!」

 

「ひっ?!」

 

 私が闘気を全開にすれば、アリスが顔を引きつらせた。そうして慌てた様子でポシェットに手を伸ばすと、ぶら下がっていた奇妙なマスコット?のストラップの紐を引きちぎった。

 

「あ、遊べ遊べ遊べ私のお人形!『ホワイトラビット』!『マッドハッター』!『チェシャ猫』!あ、あいつを………勇者を殺せ!」

 

 アリスが引きちぎって投げた三体ストラップがムクムクと大きくなる。その大きさは私の背丈よりも遥かに大きく、約三メートル程か。また、あの玩具兵とやらだろうけど………他のと比べ、どこか特別くさい。

 

 そんな三体の玩具兵だが、一つは、時計を持ったツギハギだらけの白い兎のぬいぐるみ。もう一つは、緑色のでっかいシルクハットを被った不気味なデカイ顔をしたセルロイド人形。最後は、ニヤニヤ顔をしたピンクの猫のぬいぐるみだった。

 名前と姿からして、童話の不思議の国のアリスに出てくるキャラを模したデザインだ。

 いや、なんで不思議のアリス知ってるのとか疑問はあるが、今はいいか。

 

 三体の玩具兵はアリスの命令を遂行すべく、ノシノシとした足取りで私へと迫ってきた。

 

「く……はぁはぁ……はは、は!これまでだね勇者!そいつらは私の玩具兵の中でも特注中の特注!一体一体が十三魔将に匹敵する力を持っている最強の玩具兵よ!」

 

 玩具兵達の後ろでは、ヨロヨロと立ち上がったアリスが私を睨みながら笑い声を上げていた。

 

「どうやって私が来るのを知ったのか知らないけど、さっきのでとどめを刺さなかったのは間違いね!もう油断はしない!これから全力でお「はい、脛殺し!」いぎゃあああ?!」

 

 なんか戯れ言を言ってるアリスを脛殺しで黙らせる。アリスは脛を押さえながら『なに?なんなの?!』と叫んでいた。


 そうこうしてる内に玩具兵が距離を詰めてきていた。ホワイトラビットは時計を構え、マッドハッターは被っていた帽子をこちらに向け、チェシャ猫はスッと姿を消した。

 

 それを見て、悶絶していたアリスが笑い声を上げた。目の端には涙を浮かべていたが。

 

「きゃ、キャハハ!そいつらは元々特殊なスキルを持つ者達の魂を利用した玩具兵!それを、私が更に底上げし、より強力「はい、黙りな脛殺し!」ブギャアアア?!」

 

 何かを自慢気に語ってるアリスを黙らせると、私は玩具兵を指差しながら指示をだした。

 

「だったらこっちも手勢を使ったるわ!やっちまいな、ザッドハーク!ゴア姐!ミロク!」

 

「「「おうっ!」」」

 

 私の指示に従い、ザッドハーク達が背後から飛び出した。

 

「その首に別れを告げよ!『断首断罪』」

 

『超熱光線!!』

 

「秘技!『昇天生搾り』」

 

 ザッドハークが蒼く燃える大剣を振るい、一撃でホワイトラビットの首を落とす。首を落とされたホワイトラビットから何か魂的なものが出ていき、後には首がない兎の人形だけが転がる。

 

 ゴア姐が、チェシャ猫がいた辺り一帯を纏めて熱光線で薙ぎ払う。すると、『に"ゃ?』という呟きの後、ジュッという何かが蒸発する音が聞こえた。

 

 ミロクがマッドハッターの股間部分に手を伸ばして掴むと、目にも止まらぬ早業でなんかやりはじめた。マッドハッターはセルロイド人形のくせに、「ンァァァァァァァァ?!」と喘ぎ声を上げた後、糸の切れた人形のように倒れ動かなくなった。その顔は非常に満足そうであった………。

 

 ザッドハーク達はそれぞれの標的を仕留めると、私の背後へと移動して香ばしいポーズをとった。

 

「フム。またつまらぬものを斬った」

 

『フウ。またつまらぬものを蒸発させたわ』

 

「フフ。またつまらぬものをシゴいてしまいました」

 

「ミロクの発言が飛び抜けてヤバイなぁ……」

 

 ミロクのあんまりな発言に呆れながらアリスを見れば、彼女はこれでもかと目を見開いてこちらを見ていた。

 

「な……な……な……わ、わた、わたしの玩具兵が………い、一瞬で?そんなバカな………」

 

 口をパクパクししながら信じられないとばかりに唖然とするアリス。彼女はやがてへなへなとその場にへたれ込んだ。

 

「なんなのよ………あんたらは………?こんなの知らない………聞いてないわよ………。こんなの、勝てる訳がないよ………」

 

 こちらを見ながらぶつぶつと呟くアリス。

 その目はウルウルと涙で潤んでおり、身体も微かに震えている。どうやらこちらの力に完全に萎縮し、戦意を失ったようだ。

 

「ふう………どうやら勝負あったようね」

 

 などと、全て終わったようなことを言いつつ、私は右足に力を込めていく。

 右足が紫色の光に覆われ、なんかギュンギュンと凄い音が鳴り始めた。

 

 そんな私の様子にアリスが慌てはじめた。

 

「えっ………?ちょ、ちょっと待って?!わ、わたし、いま、ほぼ降伏的な発言したでしょ?!明らかに戦意喪失した雰囲気出したでしょ?!ふ、普通はここで終わりじゃないの?!」

 

「いや、罠かもしれんし」

 

「わ、わ罠じゃないわ?!もう、私の奥の手やら最大技とか破られたし?!降伏する!降伏するわ?!ほら、もう何もないわよ!」

 

 そう言ってアリスはポーチを投げてきた。確かに中身はない。

 

「確かにないわね」

 

「で、でしょう?完全に降伏するわ!だからそれ止め………………いや、心なしか音………大きくなってない?」

 

 アリスの言う通り、私の足から鳴る音はギュンギュンからギュオンギュオン!と甲高い音になっていた。

 

「いや、だってギア上げてるもん」

 

「何で上げてるの?!」

 

「何でって…………そりゃさ………」

 

 私は充分に力が溜まった右足をゆっくりと後ろへと上げ、勢いをつけていく。そして最大まで上がったところでピタリと止め、アリスへと顔を向けた。

 

「アタシ。やる時は徹底してやるタチだから。ゴメンね?」

 

 そう言ってニヤリと笑いながら、右足に貯めた力を蹴りと共に開放した。

 

「くらえゃぁぁぁ!!嫉妬と脛殺しのコラボ技!※『ベンケイ・ザ・クライポジション!』」

 

※香は英検5級程度の英語知識しかありません。技名については御容赦ください。

 

 その日、アンデル王国中に誰もが身震いするような痛みに悶える絶叫が響き渡ったとか………。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 近場で香達の様子を伺っていたゴルデ達視点

 

「あんた………やったわね?」

 

『やったって何のことかしら?』

 

「しらばっくれないで。あのアリスって奴の情報………脚色したわよね?カオリが乗りやすいようにさ?」

 

『あら、気付いてたの?』

 

「気付かないでか。聞く限り、あんたは情報操作が得意なんでしょう?だったらカオリが率先して動くように細工をしないはずがないわ。というか、さっきからアリスもアリスでカオリの発言に本気で戸惑ってるようだし………」

 

『流石は糞ビッチ(仮)兼(笑)。なかなか目ざといはね』

 

「次言ったら本気で殴るわよ。私が目ざとい訳じゃないわ。普通に考えたら分かるでしょう」

 

『でも、カオリは騙されてくれてるわよ』

 

「あんた………それ、気付いてて言ってるでしょう?」

 

『何がかしら?』

 

「はあ……。じゃあ、言うけど。カオリは単純にさ………」

 

『単純に?』

 

「乗せられやすい馬鹿なのよ……」

 

 ゴルデは呆れたように深々とため息をついた。

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