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99話 決着!愛と嫉妬の戦い!!

数多くの感想による声援ありがとうございます。

おかげ様でパワーアップすることができました。

声援をくださった方々に深く感謝を述べます。

それでは、いよいよ愛を示す戦いがクライマックスとなる本編をどうぞ!!

 

 目を閉じ、手にした剣に意識を集中させる。


 感じる……僕達が手にする慈愛剣アフロディアに数多くの人々の愛が集まってくるのを。


 世界中、ありとあらゆる場所から人々の『愛』が届いてきていた。愛は、淡く温かな光となって剣へと集約され、剣の輝きが更に増してくる。


 いける……これだけ多くの人々の愛があれば、カオリを打ち倒すことができる!!


 僕とローズはカッと目を見開くと、掲げていた剣をカオリ目掛けて勢いよく振り下ろした。


「「束ねるは愛の息吹、輝ける愛情の奔流!!受けるがいい!愛羅武勇アイラブユー!!」」


 剣から純白のハート型の光が奔流となって迸る。それは、膨大な愛情の集約。全ての人々の愛の証。強大なる愛の力である。


 解放された愛は、僕達と対峙するカオリ目掛けて突き進む。そして、カオリが放つどす黒い光と激突した。


 純白と漆黒の光の衝突し、辺りに衝撃波が走る。

 地面が割れ、暴風が吹き荒れた。


 二つのぶつかり合う光は拮抗し…………たように見えた。が、僅かに僕らの愛の力が圧されていた。


 そんな?!まさか!?世界中の人々の愛が集まったはずなのに?!


 徐々に圧される愛の力の様子に驚愕していると、カオリがブレスを吐きながらニタリと笑った。


『馬鹿が!!世界中から愛を集約したからなんだ?!私も同じく世界中から嫉妬の念を集めているのだ!!そして、貴様の愛が圧されているということは、それはつまるところ世界は嫉妬と妬みにまみれているということだ!その証拠にこれを見ろ!』


 そう言った瞬間、カオリの胸や腹……更には肩などの様々なところから、もこもこと何かが浮かび上がった。


 何かと思って目を凝らし……驚愕した!


「なっ?!」


 それは顔だった。醜悪にして邪悪な笑顔を浮かべた複数の人間の顔であった。


 それらの顔は僕達をギロリと睨むと、口々に叫びだした。


『頑張れカオリ!負けるなカオリ!ファイトだカオリ!』


『頑張れカオリ!リア充に負けるな!ジェラシィィィ!』


『カオリがやり過ぎかと思ったけど、愛だのなんだのと聞いてると俺の中で黒い感情がガガガ……ジェラシィィィ!!』


 カオリへ応援の声を上げる人の顔。それらの声援を受ける度にカオリのブレスの勢いが上がっていく。


『これが答えさ!人々は愛など求めていない!誰かを妬み、陥れることが人の性であり原動力!やはり愛など幻想!愛など糞喰らえだ!』


『『『そのとーり!そのとーり!そのとーり!』』』


 カオリの言葉に身体中の顔が賛同の声を上げた。


「そんな……馬鹿な……。いや……人々に必要なのは愛のはず……」


『まだ寝言をほざくか!!ならば皆で現実を見せてやろう!』


 困惑する僕達に対し、カオリが荒ぶった声を上げながら両腕を左右へと開く。すると、身体中の顔が僕達へ向けて口を大きく開けた。


 そして、次の瞬間……身体中の顔の口内の奥から凄まじい負の破壊エネルギーが放出された。


『『『『ジェラシィィィィィィィ!!!』』』』


 奇声を上げながら放たれたエネルギーはカオリのブレスと重なり、尋常ならざる圧倒的力を持って、僕達の愛の力を押し込んできた。


「そ、そんな……こんな……」


『ヒャヒャヒャヒャ!見たか!これぞ究極嫉妬砲アルティメットジェラシックバースト!!生きとし生けるもの達の妬み恨みつらみを集約した究極の破壊エネルギー!貴様らの掲げるちんけ愛などでは止められんよ!皆の者よ、共にリア充を滅ぼそう!!さあ……諦めて塵となれぇぇぇぇい!!』


『『『消えてなくなれリア充共ォォォ!!』』』


 僕達の放つ愛羅武勇アイラブユーがどんどん圧される!必死に出力を上げるも、焼石に水程度でどうにもならない!!


 このままでは…………死ぬ!?


 どうにかならないかと必死に頭を回転させるも、何も思い浮かばない。


 更には……。


『そんな……世界中の愛を集めても足らない?世界から愛が失われている?いや……このカオリという者の嫉妬心が異常なのか?分からない……。しかし、どちらにしろこのままでは……』


 焦りと困惑が入り雑じったアフロディア様の声が響いた。


 なんてことだ……。カオリの……いや、世界が抱える嫉妬は神の予想を越えていたというのか?!

 アフロディア様ですら困惑する状況……最早どうしようもないのか?!


「ハン……ス……」


 隣でローズが苦しげに呟く。


 くっ……このままではローズが!!僕はどうなってもいい!でもローズだけは…………。


 しかし、神にすらどうすることもできないことを僕如きが何かできるわけもない……。


 このままローズと一緒に消えるしかないのか……。


 そうこう考えている間に、カオリのブレスは目前までせまっていた。あと少しで、ブレスは容赦なく僕達を飲み込むであろう……。


 ああ…………これで終わりなんて。

 これからもっとローズと色んな思い出をつくりたかったのに……。














『まだ、あきらめてはなりません』


 諦めかけたその時、声が聞こえた。

 アフロディア様のものではない。渋みのある男性のものらしき声であった。


 この声は……?


『あなたは……甘味の神?!』


 アフロディア様の驚くような事が聞こえた。どうやら別の神様の声のようだ。


 しかし、甘味の神様?つまりお菓子などの神様ってことだろうか……?


『この声は聞こえているな。ローズにハンスよ。私は甘味の神ニョウトウ。全ての甘いものを司る神である。私がここに来たのは他でもなく、君らに力を貸すためだ』


「私達に……?」


「力を……?」


 甘味の神様が力を貸してくれる。それは本当にありがたい。しかし、甘味の神か……。神様に対して失礼であるが、正直あまり強そうには感じないのだが……?


 内心そんなことを考えていると、アフロディア様の慌てたような声が響く。


『ニョウトウよ。その申し出は有難いのですが、それは無理でしょう。神々の協定により、一人の人間に複数の神の力を与えるのは特例を除いて禁止されています。あなたがハンス達に力を与えようとしても、協定の力によって弾かれてしまうだけ。残念ですが……』


 つまり一人の人間に与えられるのは、一人の神様の力だけということらしい。確かに複数の神様の力を一人の人間が持つなんて色々と不味いだろう。愛の神様の加護を得ただけで僕がこれだけ戦えたのだ。複数の神様の加護なんて得たら、それこそ人間界のバランスを崩してしまうだろう。


 しかし、甘味とは言え、正直他の神様の加護を得られないのは残念である。もしかしたら、この状況を打破できるかと思ったのだが……。


 再び絶望に落とされた気持ちになっていると、甘味の神様の穏やかな声が再び響いた。


『その特例が通るとしたら?』


『特例が……?それはどういうことですか?』


 アフロディア様の質問に、ニョウトウ様が呆れたような声で答えた。


『愛の神よ。君は愛を司りながら、今日という日がなんの日が忘れているのですか?』


『今日がなんの…………まさか!?』


『そう……今日は一年で一度だけ。愛と甘味が混じり会うことを許された日。乙女達の愛を甘味に込め、想い人へと渡す甘い甘い特例日イベントデー……。その名も……』


『『バレンタインデー!!』』


 アフロディア様とニョウトウ様の声が揃った瞬間、僕達が手にする慈愛剣が唐突に輝きだした。


「こ、これは……?!」


「な、何?この温かな光は?!それに何か甘い匂いが……」


 驚く僕達を他所に、やがて徐々に光が収まっていく。

 完全に光が収まると、僕達の手にした慈愛剣が姿を変えていた。茶色の刀身に、ハートとリボンを模したカラフルな鍔。全体からは甘く、それでいて香り高い匂いを発していた。


「この剣は……?」


『その剣は愛と甘味の神の力が合わさった伝説の剣』


『その名は血夜胡麗刀チョコレートウ!バレンタインデーという今日1日限定で使える期間限定の剣です!』


血夜胡チョコ……」


麗刀レートウ……」


 手にした剣をローズと二人で唖然と見る。


 先程の慈愛剣と比べ、やや地味な見た目だが手から伝わる剣の比べものにならないくらいに強い!!内包する力が圧倒的だ!!


 バレンタインデーが何なのかは知らないが、これは有難い!これなら!


『さあ、ハンス!それにローズ!その剣をもって戦いに終止符を打つのです!』


血夜胡麗刀チョコレートウの力は愛のみではなく、バレンタインデーにおけるロッ○、明○、森○、ブル○ンなど、様々な各製菓会社のチョコの売上量が力として加わります!その力は推定数億……数十億にも昇ります!』


『『さあ!今こそ愛と甘味の力を知らしめるのです!』』


「「「ハイッ!!」」」


 神様達の声に応え、再び二人で剣を握る手に力を込めた。それに応えるように血夜胡麗刀チョコレートウが光輝いた。


「「喰らえ!愛と甘味の必殺奥義!覇津日異婆蓮咤院ハッピーバレンタイン!!」」


 剣から甘くビターな香りと共に、極大のハート型の光が迸る!それはカオリのブレスを易々と押し返し、逆にカオリを追い詰めていった。


  カオリは迫る覇津日異婆蓮咤院ハッピーバレンタインを驚愕の眼差しで見ていた。


『ば、馬鹿なぁぁ!?私の力が……人々の嫉妬の念が圧されるだと?!バレンタインデーだと?!ふざけるなよ!?そんなふざけた理由で私が?!糞が糞が糞がぁぁぁぁぁぁぁ?!バレンタインデーなんて糞喰らえだぁぁぁぁ?!』


『こんな……こんな?!こんなぁぁ!?』


『嫌だ……リア充なんかに負けたくない!?』


『まだだ……まだ終わらんぞ!!まだやれるはず!』


 カオリと、カオリの身体中に生える顔のうち特に多きな3つの顔が驚愕の叫びをあげる。そんか彼らに追い討ちをかけるように更に剣へと力を込めた。


「「秘技!血夜胡乱舞チョコらんぶ※各製菓メーカー協力版!!」」


 すると、剣から幾本もの光が照射された。その光はやがて形を成し、ハート型やブロック型、粒状、細長い形や筍、茸、枝、果ては帆船が描かれた板状のチョコ等、光が様々な形のチョコとなってカオリへと襲いかかった。


『な、なんだこれは?!チョ、チョコだと?!ぐわぁぁぁ!』


 飛び交うチョコはカオリへとぶつかると、ドカンドカンと盛大に爆発していく。チョコ型の爆弾のようだ。


 容赦なくカオリへと降りかかるチョコ。そんなチョコのうちのいくつかが、カオリの身体にある一際大きな3つの顔の口内へと入っていった。


  その瞬間……。


『ん……あんまぁぁぁぁい!!』


『ああ……忘れていた……これが愛ある甘さ……』


『ほどよい甘さで心が浄化される……』


 そう言って満足そうな表情をすると、3つの顔は同時に爆散し、吹き飛んでいった。


『○?!ドラン?!柿ピィィィィィィィィぃ?!リア充じゃなく、お前達が爆発してどうするぅぅぅぅ?!』


 己の身体の吹き飛んた顔の部位を見ながらカオリが悲痛な叫びをあげる。その間にも身体中の顔は次々と爆散し、遂には全ての顔が消え去った。


 同時に、カオリの力は見るからに衰えていた。

 顔達の支援がなくなったことで、一気に力がなくなったようだ。


 いまこそ終わりのとき!!


 僕達は更に追撃をかけようと覇津日婆蓮咤院ハッピーバレンタインへと力を込めた。出力を上げた覇津日婆蓮咤院ハッピーバレンタインはカオリのブレスを押し退け、カオリへと着弾した…………かに見えたが、なんとカオリは着弾する寸前にブレスを止めて身を翻し、ギリギリで覇津日婆蓮咤院ハッピーバレンタインを回避した。


 そうして回避してから着地すると、荒い息を吐きながら鋭い目で僕達を睨んできた。


『グッ……おのれリア充共がぁぁ……!絶対に許さん……。しかし、今の消耗した身で貴様らに勝てないのは明白。ここは悔しいが、引かせてもらおう!!再び会った時、必ず貴様らリア充共を撲滅してやる!必ずだ!!』


 そう言うと、カオリは背中の蝙蝠の羽を羽ばたかせて飛び上がった。


「「逃がすか!」」


 僕とローズは血夜胡麗刀チョコレートウを素早く地面へと刺した。


「いまこそ二人ではじめての……」


「共同作業のとき!!」


「「華江気入刀ケーキにゅうとう!!」」


 僕達の声に呼応し、刺した剣を中心に地面に巨大な魔法陣が展開される。そして地響きと共に、巨大なものがゆっくりと出現した。


 それは、天まで届くほどの巨人だった。

 全身は茶色で、ふくよかな肉付きをした身体。どこか憎めない顔つきをしていて、全身からは甘くビターな香りを発していた。


 そう……これこそがバレンタインデーとやらの日にしか召喚できない期間限定の召喚獣……その名を【糖質限界巨人バレンタイタン】!!チョコでできた推定300メートルはある巨人である。


 そんなバレンタイタンの頭の上に僕達は立っていた。


 見下ろせば、カオリがこちらに背を向けて飛んでいた。だが、不意に影が差したことを不思議に思ったのか振り返り……その顔が驚愕に染まった。


『な……な……な……』


 あまりにも大きすぎる巨人の出現に、言葉も出ないカオリ。そんな彼女を見下ろしながら、僕達は戦いに終止符を打つべくバレンタイタンに命令を下した。


「カオリ……この戦いを終わらせよう」


「そして、愛の強さを示すわ」


「「叩き潰せ!バレンタイタン!!」」


 バレンタイタンは僕達の叫びに応え、両手を左右に開く。


 そして、ちょうどバレンタイタンの胸辺りを飛ぶカオリに狙いを定めると、まるで蝿でも潰すかのような動作でカオリを叩き潰しにかかった。


 カオリはその間、ただただ唖然とバレンタイタンを見上げていた。が、バレンタイタンの顔を見た瞬間、その顔が一瞬にして憤怒の表情となった。


 そうして、バレンタイタンの手が左右から迫ってくる潰される寸前。カオリは僕達……いや、バレンタイタンに向けて憎しみを込めた声で吠えた。


『その顔……貴様は……貴様はぁぁ!!またそうやってバレンタインデーに私の邪魔をするか!!石塚ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──────』


 パチン。


 しかし、無情にも閉じられた手によってその叫びは遮られた。変わりに響いたのは、手を叩き合わせる乾いた音だけだった。







 こうして長く、作者もどう収拾を着けようかと悩んだ、少年と少女の愛を守る戦いに決着がついたのだった……。

 

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[一言] バレンタインなんてくそくらえ!! 俺は今年も義理すらもらえなかったわ!!(血涙)
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