真次伊谷 穂色
あるところに卵がありました。その卵があった場所は、赤泉という赤い色の泉の前だったのですが、台風が来て泉の中に入ってしまいます。それから200年以上が経ち、ある少年が発見しました。少年は、卵をとろうと泉の中に入って行く途中に何故か亡くなってしまいました。
その後も少年の死の原因は分かっていません。
「て言う話なんだけど…。」
テーブルにもたれ掛けてサラダを口の中に運ぶ友人の有沙が話し始めたのは私達とは無関係な都市伝説だった。
「どうしたんだよ。急にそんな話し始めて」
私(穂色)は半笑いしながら本を読んでいた。
目の前に座る有沙とは幼稚園からの仲で、互いのことを良く知っている。今も同じ高校に通っているため、一緒に出かけるのがほとんどだ。
「それ面白いの?」
いつの間にか有沙は前のめりになり私が読んでいる本を覗き込んできた。「面白いよ」と簡単に言葉を返し、
目線を本に戻した。
「ねぇーもっとかまってよー!悲しいんですけど!」
その言葉に思わず吹き出してしまった私は、口に手を当て何とか笑いを抑えられた。
「分かったよ。それで?その都市伝説みたいな話急にしてどうしたの?」
私の問いに対して有沙は好奇心半分と信じているという気持ちの半分の笑顔で話してきた。
「実はね、その赤泉がこの近くなんだって」
「パリーン」と皿が割れた音がした。どうやら店員が皿を割ってしまったらしい。「すいません。」と謝りながら皿のカケラを拾っていた。その光景をじっと見ているとどこからか視線を感じて首を180度回転させたのだが、誰も私を見ている人はいなかった。さっきまで怖かったのが嘘の様に自分が恥ずかしくなった。
「お待たせしました。ホットココアとチョコチップクッキーです。」
さっき皿を割った女性店員が注文したものを持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
と言って店員を見ると偶然目が合ってしまった。
「どうぞ召し上がってください。」
にこやかにそう言って店員はコツコツ足音を立てて歩いて行った。
「なんかカッコいい人だったね。」
「そう?ちょっと怖くなかった?」
【女性店員が穂色達から離れた後】
ドンッと女性店員はトイレのゴミ箱を蹴り飛ばしていた。
「くっそあのオンナ〜」
トイレの中では怒りの声が上がっていた。
「あのクソオンナ!人間離れしてやがる(怒り)」
【穂色達から女性店員が離れた後】
「あー私もカッコよくなりたいなー」
「あの店員みたいに?」
有沙は「まぁねー」と大きな目を向けて言った。
「ふーん」
あの店員は何かおかしい。変な感じがする。
だが、その感じたものもココアのいい匂いでかき消された。
「またココアとクッキー?」
「だって美味しいんだよ。」