恋の始まりと初恋
あの日、あの場所で俺/私の恋が始まった。
新学期、桜がたくさん咲きクラス替えで初の顔合わせで緊張する中私は教室に入った。
新しいクラスメイトが何人か騒ぎながら楽しく遊んでいる
私はすぐには馴染めず静かに席に着く
小学校5年の春のことだった。
それから一週間が過ぎようやくクラスにも馴染めた私だったけどいまだに人の顔と名前が一致しない
仲良くなった女の子たちの名前は覚えられるのに男子の顔と名前はまったくもって覚えられない
ましてはクラスにいるのにうまく人と会話できないせいか顔も見ていない人までいる。
そんなときクラスの担任は早くも席替えの話をしてきた
担任は紙を見ながらこの席は○○さん、あの席は○△さんと淡々と席を決めていく
私はついていないのかなんと教卓の前・・・
こんなにもついていないとは・・・
がっかりしながら席を変える私、こんなにも嫌なことはない
新しい席に座って周りを見渡すとなぜか左隣には問題児、右隣りには
(初めて見る顔・・・)
そこにはおとなしく座っている男子がいた
(誰だろう?)
前ばかり見ているのかきちんと顔が見えない
私はあきらめて授業に集中することにした。
授業は退屈で眠かった
うとうとしながら鉛筆をにぎって頑張って黒板を見つめているけど睡魔には勝てなく案の定コクリと眠ろうとした
そんなとき頬杖をついていたらバランスを崩してあえなく睡魔は消えていったがそれと同時になんと消しゴムがころりと机から落ちて行った
(消しゴムぅぅぅぅぅ)
私は声を出したかったが授業中・・・
こそこそと拾おうとしたら右側からサッと手が伸びてきた
「はい、落としたでしょ」
なんと右隣の男子が消しゴムを拾い上げてくれた
生まれてこの方あまり男子に接したことがないので私は消しゴム一つもらうのに緊張して下を向きながら手を伸ばして受け取ろうとした
「あ、ありがとうございます!」
私はそういいながらお礼を言って顔を上げた
顔を上げるとそこには優しそうな男子がいた
「落とさないようにね」
そういってその男子は黒板とにらめっこを始めた
(・・・素敵)
私は消しゴムを握りしめて隣を見続けていた
そう、これが私の恋の始まり
消しゴム一つで始まった恋
(かっこいい・・・)
俗にいう一目ぼれという恋で始まったわけです
それからずっと私は見続けていると隣の男子が声をかけてきてくれた
「ねえ、めんどくさいね授業」
「はっ、はいっ!」
通路を挟んで隣という距離でもすごく近く感じた
「俺、酒田悟っていうんだよろしく」
「わっ私はわっわく・・・涌沢ひかりです!」
なぜか無駄にでかい声で話してしまった
「涌沢さんかよろしく」
「よろしくお願いします」
二人とも盛り上がって無駄にでかい声で話す
授業中でもなんでも楽しかった
初めてこんなに話せる男子がいることに私は幸せを感じる
だがそんな幸せもつかのま
「酒田!涌沢!二人ともうるさい!」
担任のこえで一気に現実に戻る
その声で悟君は嫌な顔をしながら私に笑いかけて前を向いた
(私、本気で好きになりました)
涌沢ひかり11歳 酒田悟11歳春の出来事だった。
それからというもの毎日緊張が止まらなかった
悟君を見ると不思議と緊張して心臓が止まりそうになる
好きで好きで今にも心臓が止まりそう
(今度は悟君と通路はさんでじゃなくて席をくっつけて隣になりたいな・・)
ひそかに思った思いは一か月後に実現した
夏が近づく中神は私を見放さなかったのだ
なんと念願の悟君と本当に隣になってしまった!
今度は左側に悟君が来た
窓側の一番後ろの席
ひそかな恋心はさらに増していった
「さっ、悟君よろしくね」
「涌沢さんもよろしくね」
何気に話した言葉でも私にとってはとっても大切で特別
そして二人の本当の恋はここから始まりを告げた