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桃太郎 3  作者: 芳田文之介
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其の一


 むか~し、むかしのことです。

 ある山里の村に、おじいさんとおばあさんが住んで――いえ、実はおばあさんは住んでいません。

 なぜかというと、おばあさんはつい先日、いとまごいをして里に帰ってしまったからです。

 けれど、それにしたって、なぜ、そのようなのっぴきならないことが起こったのでしょう。

 もちろん、理由があります。事の発端は、なんといっても、おじいさんの浮気癖、もとい、酒癖の悪さにあります。

 ふだん、酒を飲んでいないときのおじいさんは、仏頂面ではありますが、けれども、笑うと人懐っこい愛嬌が現れる、芒洋としたやさしい爺様でした。

 そこで、村人からも「ありゃ、なかなかどうしてけなげな爺様じゃ」ともっぱらの評判。

 ところが、ちょっとでも酒を口にすると、もう大変。

 すると、逆に、今度は村人こぞって「とてもじゃないが、いつもの爺様とは到底思えんのう」と、ことのあまりの豹変ぶりにあっけに取られるほど、その人格は一変するのでした。

 


 さて、それでは、どのように一変するのでしょう。

 それはたとえば、ちゃぶ台をひっくり返したかと思うと、それで床にとっ散らかった徳利とかお猪口とか茶碗とか、とにかく、そういったものをかたっぱしから庭に放り投げるなどの、それこそてんやわんやの大騒ぎ。

 これが、おじいさんの評判が毀誉褒貶相半ばだった、その所以です。

 もっとも、間尺に合わないのはおばあさんです。

 ほら、だって、後片づけは、どうしたって、おばあさんの役目。

 だからおばあさんは、おじいさんが酒を飲んで暴れ出すたびにあたふたするやら、その上、やっと、落ち着いたかと思うと、今度は後片づけにてんてこ舞いの忙しさ。

 これでは、てんで心痛がたえません。

 それでも、おばあさんは嫁いでこの方、愚痴ひとつこぼさず、おじさんにかいがいしく尽くしてきたのです。いえ、それどころか、いつも笑みを絶やさず、おじいさんの世話にこころ砕いてきたものでした。

 けれどそれも、どうやら、我慢の限界のようです――。



つづく



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