放課後。体育祭練習。
そんな面倒な予感の中、俺は校庭に体育座りをしている。
いわゆる決起集会というものを、応援団を中心として行っているからだ。
その応援団の面子には、大谷(弟)もいる。面倒見がよく腕っぷしも強いやつにはぴったりのポジションで、2年生ながらも団長のすぐ横で補佐的な立場をしているらしい。流石というよりほかにない。
「じょしー、気分悪くなったらすぐ言えよ!」
今年の団長は男子にはとにかくきついがこんな感じで気も効くし人望もある。学年関係なく大谷(弟)も起用するあたり柔軟性もあるし、こういう人が社会に出てから偉くなるんだろうなぁとぼんやりと思った。
「熱血だな」
そんな光景に言葉を漏らす工藤。
此奴も行動そのものは熱血なことが多いのに、他人の事になるとちゃんと冷めた評価ができるらしい。不思議なもんだ。
「応援団がそうじゃないと盛り上がらないだろ?」
おれは小声で答えつつ、視界の中にいる美生谷と大谷が気になっていた。
何故か知らないが、珍しく隣あっている。
というか、美生谷がいつもの三人組の輪から外れて大谷の隣に座ってる、と言ったほうが正しい。
話しかけている美生谷と、それに答える大谷。
何となくその光景に違和感を感じながら、応援団の熱い言葉を聞く。
「おまえら、今年は絶対勝つからな!返事!!!」
「はい!」
時代錯誤な呼びかけも、体育祭という特殊なイベントだとそれなりに聞けてしまうから不思議だ。
そんな決起集会も1時間程度で終わり、いつものように帰宅することになる。
はずだった。