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午後。

昼飯後の午後ほど、憂鬱な時間は無いと俺は思う。

エアコンの無い教室で、纏わりつくような空気の中、睡魔と闘いながら学習に励む。

もちろんそんな戦いに敗れた者たちもちらほらと見かけるが、教壇の先生に目をつけられるぐらいなら闘い続けたほうが良い。


そんな中でも、工藤は当たり前のようにペンを走らせ続ける。


「眠いに決まってるじゃん」


以前眠くならないか聞いた時に出た答えが、これだ。

しかし奴を見ている限り、そんなそぶりは微塵も見せない。

教室を見まわし、まじめにノートを取ってる連中は決まって成績が良い。


かくいう自分は、ノートを取るふりはしているけど取っていない。

どうせ工藤のノートを見ながら復讐するから無駄。

ただし先生の話は聞いている。これを聞いておかないと、せっかくのノートも半分は無駄になる。


そんな変な几帳面さが俺にはある。自覚している。


それにしても、昼飯の時の大谷(弟)の言葉が引っ掛かる。

いつもの如く特に何もなく食べ終わり、席を離れようとした時。

彼が声をかけてきたのだ。


「姉貴、なんか変じゃなかった?」


まったく。と答えた俺に彼はふぅんとあいまいな返事をし、次の焼そばパンに取り掛かっていた。


そう、なんともない。

視界の片隅にいる大谷を見ながら思う。

朝もいつものように恥ずかしい挨拶をし、教室までたわいもない喋りをし、あとはいつものように接点もない、どうってことのない日常だった・・・


と、そこでふと気がついた。

今日は、大谷と工藤の話をしていない。


工藤に気がある大谷は、折に触れ工藤の話をしたがる。

昨日はどんな弁当のおかずだったとか、どんなテレビ番組を見ているのかとか、たまに女性の趣味や好みのタイプなど直球の質問もあるが、朝の俺との短い接点で必ず工藤の話をする。それが俺の日課でもある。


それが今日は無かった。


それが何を意味するのか、俺にはわからない。

でも視界にいる大谷はいつものようにノートを取り、授業を聞いているように見える。


正直、大谷は美人の部類に入ると思う。

誰にでもきさくに話しかけるし、多少感情の起伏は激しいけどわかりやすいので付き合いやすいし、彼女にしたいかと言われれば殆どのやつなら断らないと思う。

ただ、さっぱりしすぎていてそういう視点で見られないことが多いんじゃないかと思う。


工藤とくっつくなら、お似合いのカップルだろう。

比較的静かな工藤とやや賑やかな大谷。

俺が知る限りでは会話もかみ合いそうだし、この2人がくっつけば俺がラブレターを頼まれることもない。望むべき状況ともいえる。


だが、そんな状況が1年以上も続くと、何となくうまくいかないんじゃないかとも考えてしまう。


恋愛なんてしてみないとわからないものだ。

それをスタートで立ち止まってしまっていたら、その機会がどんどん失われてしまう。

そんな二人が果たしてくっつくんだろうか。


そんな事を考える理由の一人が、ふと後ろを振り返った。

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