昼休み。
先生に呼び出されたという工藤と別れ、弁当を持って食堂に行く。
お喋りしながら飯を食う習慣がない俺は、会話が無くても辛くない工藤の都合が悪い時は大体一人で食う。食うのも遅いし、それに併せられるのもつらい。なのでこうやって食堂に来て飯を食う事になる。
「よう、一人?」
が、なぜかこうやって声がかかる。
声の主は大谷(弟)。クラスメイトの大谷の弟だ。姉は4月生まれ、弟は3月生まれ。双子ではないのに生まれ月の関係で同学年という珍しい兄弟だ。
「珍しいじゃんか。」
「工藤が先生に呼び出されてね」
と、俺は弁当を広げる。
大谷(弟)はその前に座り、焼きそばパンをかじり始める。
いわゆる番長肌な彼は、同じ高校2年の中では最も喧嘩が強い。どちらかというと喧嘩が苦手な俺には合わない相手だけど、何故かこうやって飯を食ったりするときがある。理由はもう言わない。
「お前、いつも同じおかずなのな」
「自分で作ってるからね」
そう、俺は自宅が遠いので下宿して自炊してる。
食費は貰ってるけど、何にどれだけ使ったか報告する必要があるのと、食材を定期的にもらうため結果的に自炊率が上がる。で、面倒だからほぼ同じメニューになってしまう。
「卵ばっかり食ってると身体が黄色くなるぞ」
「ひよこは卵は食わないよ。」
ゆで卵にオムレツ、海苔たまふりかけと卵率が多い弁当を見て繰り返される会話。あとはほうれん草のお浸しというのが俺の弁当だ。栄養メニューに問題は無いはず。
なんてことない会話をしつつ、ちらちらと視線を感じる。
番格な大谷(弟)とごく一般生徒な俺の組み合わせは、多分違和感のある組み合わせだ。特に最近ちょっかいを出してくる下級生のちょい悪グループの視線が痛い。知ってるやつもいるので、こちらとしては何の感情もないんだけど。
「めんどくせぇなぁ」
「そう?」
そんな視線に呟かれる言葉と、気づかないふりの俺。
普通に学校生活するだけでも、何の波風も立てないのはなかなか難しいらしい。