朝礼と1限目の間。
1限から移動教室の日は、やる気がなかなか出てこない。
それが月曜だったらなおさらだろう。
工藤が声をかけてくる。
「まだいかねーの?」
「もう行く。」
俺は教科書と、薄いノートを持って立ち上がる。
こいつとは、今の学校で最も古い付き合いの一人かもしれない。
よく考えれば中学からずっと同じクラスで、部活も中学は途中から同じだった。
通学路も昔は一緒だったし、これこそ悪友というやつかもしれない。
親友、と言うのがなんとなく恥ずかしいだけだけど。
「それにしても暑いな。」
俺たちは下敷きを団扇代わりに扇ぎながら長い廊下を歩く。
エアコンの無い校舎内は、ちょっと歩くだけで汗がにじんでくる。
俺が学校にギリギリに来る理由の一つだ。
「工藤は朝っぱらからフットサルで遊んでるからだろ?」
「だって誘われたんだもん。しょうがねーじゃんか。」
それにしても、こいつの交友関係はかなり広い。
もともとの部活仲間といわゆる友達の友達、それに先輩後輩まで含めると学校で会話をしない人間はいないんじゃないかと思う。膝を壊してから部活を辞めたけど、元々サッカー部でFWをやってただけあってとにかく上手い。俺も同じサッカー部に所属してたけど、こいつはマジで別格だった。
「お前も来ればいいのに。」
「やだよ。朝っぱらから腹減るじゃん。」
「まぁな。」
そんなたわいもない会話をしながら、俺たちは廊下を歩いていく。
2016/2/1 全体的に手直し。