そういえば、今日の放課後も体育祭練習だった。
今日はさっさと帰って弁当を食べる予定だったのに、体育祭の合同練習があるのをすっかり忘れていた。というわけで伝言を頼み、一人教室で早めの晩御飯をいただくことにする。
今日の弁当はモヤシと挽肉の卵とじとゆで卵、それにほうれん草の胡麻和え。あまり遅れると応援団に文句を言われそうなので、急いでかきこんでいく。
そんな俺に近づく影があった。大谷だ。
「今ごろお昼ご飯?」
首をたてに振りながら、俺は箸を休めることなく食べ続ける。そんな俺を大谷はじっと見ている。なんだか居心地が悪い。暫く食べ続けていると、隣の席に座ってしまった。どうやら食べ終わるまで待つらしい。
もう少しで食べ終わるというタイミングで、再び大谷が口を開いた。
「工藤君に連絡取れた?」
昼休みにしたメールの返事はまだないし、電話ももちろんかかってきていない。俺は首を横に振った。
「みっきー、朝、みっきーに聞いてたよね」
ちなみに前者のみっきーは美生谷、後者は俺だ。
紛らわしいので、せめて同じ文章の中だけでも呼び方を変えてほしい。
俺はすべて飲み込むと、一息ついて水筒の茶を飲んだ。
「ああ、聞いてきた」
「気になるんだろうね」
「そうだね」
好きな男の事を気にならないわけがない。
それはこの大谷にだって言える。
わかっていても聞かずにいられない。
そんな面倒なものが恋というやつなんだと思う。
そして、その面倒なものに俺のような赤の他人も巻き込んでいくことも。
「今日、体育祭練習の後、時間ある?」
これはイヤと言いにくい聞き方だ。
それでも俺は一瞬躊躇って、そして答えた。
「いいよ。」
この時点で、今日も帰ったら特急モードになることが確定した。
昨日からなんだかずっと誰かに振り回されてる気がする。