マックにて。続き。
「人って困ってる時、人の話を聞かないんだよ」
唐突に俺は言った。
「なにそれ。」
大谷がくりくりした目を細めて怪訝な声を出す。
「相談は良くされるけど、大抵その人の答えは決まってる。だから俺は話をしない。」
「話をしないの?」
「しない。相手の話には合わせるけど。」
大谷がポテトに手を付けようとしないので、俺は残りの冷めたポテトを全部口にする。
「自分はこうしたい。でも、自信が無い。だから話を聞いてほしい。相談って、そんなもんなんだ。」
「ふーん。」
結構きつい言葉を言ってるつもりだけど、大谷は軽く流す。
「だから話を聞いて、無理そうならお茶を濁して終わり。出来そうなら少し励まして終わり。だから、俺は話をしていない。」
「簡単だね。」
「簡単だよ。」
俺は薄くなったコーラを飲み干す。
じゅるじゅると音を立て、氷を残してコーラが消えた。
「さっき大谷は、答えを言っていた。俺もそれでいいと思う」
「答え?いつ?」
眉間にしわを寄せて大谷が考え込む。
「私、何も言ってないよ?」
「言った。『私、別に工藤君と親しくないし。』って。」
さっきの姿勢のまま、大谷が固まった。
俺はコーラの水滴を手のひらで拭い、テーブルに置いた。
「俺が大谷なら、美生谷にそう言う。」
ダメ押しの言葉を付け加え、俺は大谷の表情を伺った。
しばらくの沈黙ののち、溶けきったであろうシェイクを音をたてて飲み干し、さっきの俺のように紙コップの水滴を手のひらで拭い、そして同じようにテーブルに置て、こう言った。
「ありがと。」