マックにて。
学校から少し離れたマック。
たまに工藤と遊びに来る店で、大谷の話を聞くことにした。
ここなら通学路から離れているし、土地勘のあるやつじゃないと学校帰りに立ち寄ろうなんて思いつかないだろう。
遠くから通う生徒が殆どの私立高校だからこそ成立する、地元住民生徒の隠れ家だ。
「何にする?」
「私はシェイク」
大谷は慣れた感じでバニラシェイクを注文する。
俺はポテトのSサイズとコーラを注文して、店の奥のソファのあたりに腰かけた。
「みっきーはここよく来るの?」
「ああ、たまに。」
敢えて工藤の名前は口にせず、俺はポテトを口に入れて大谷のほうに差し出した。
それを一本加えてから、大谷が話を切りだした。
「あのね。」
「うん。」
「えっと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「うん。」
次の言葉が出てこないので、相槌を打つ。
こういう時は、聞いているというメッセージを発しながら相手の言葉を待つ。急かしても言葉は出てこないし、言葉にならないという事は何かが言葉を紡ぐのに邪魔をしているからだ。
そんなときは、聞いているというアピールをして待つ。
「・・・・・・なんか聞いてる?」
漠然とした言葉に、考えを巡らせる。
こういう質問で人も内容も漠然として言葉で隠しているときは、その選択を間違えると酷いことになる。かといって答えないとそれも問題を引き起こす。
「何を?」
これもあまりうまい言葉ではないが、相手がその隠していることを言う気があるかどうかを計ることができる。視線をコーラに移して、大谷の次の言葉を待つ。
「今日さ、みっきーに声をかけられたのね。みっきーじゃなくて、美生谷ちゃんのほう。」
「うん。」
「で、それ、何か聞いてないかと思って。」
つまり、美生谷に聞いた話をどこまで知っているかを探っているのだろう。
美生谷もみっきーと呼んでるのは初めて知ったけど。
「ちょっとね、話しにくいことだからみっきーがどこまで知ってるのかと思って。あ、みっきーってみっきーね。」
何が何だか怪しくなってくるが、言いたいことは分かる。
俺はみっきーでみっきー。美生谷は美生谷でみっきー。
まぁ、そんな感じなんだろうけど。
「聞いてないけど、多分わかる。」
俺は少し考えてから、そう言った。
「そう。」
大谷はそういうと、だいぶ溶けてしまったシェイクを口にした。
「流石みっきーだね。」
「・・・わかんないけど」
嬉しくない、という言葉を飲み込み、俺は曖昧な言葉を口にする。
「で、大谷はどうしたいのさ。」
「それが問題なのよね。私、別に工藤君と親しくないし。」
もう伝わった前提で話が進む。
おれは冷めかけたポテトを口に突っ込み、入らなかった分を大谷のほうに無言で差し出した。
冷めかけたポテトが、俺の答えであることが伝わるといいなと思いつつ。