今日も普通に、一日が始まる。
この世に生まれ、後悔しなかったことなんて一度もない。
他人を見て、羨ましいと思わなかったことが無い。
それでも人に、こう言われる。
「お前が羨ましい」
と。
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長く長く、学校まで続く坂をのんびりと歩く。
下宿からの30分のこの時間は、唯一誰にも邪魔されない自分だけの時間だ。
途中で自転車通学の連中が追い抜いて行くけど、坂道の途中でわざわざ止まる奇特な奴なんていない。皆、ただ、目の前の「坂」という試練に黙々と立ち向かっている。
・・・歩けば楽なのになぁ。
ぼんやりとそんなことを思いながら、朝ご飯のサンドイッチをかじる。
冷蔵庫に常備している安物のハムとレタスを挟み、それにたっぷりのマヨネーズをトッピングしただけのシンプルな朝ご飯。カバンに入れた野菜ジュースと組み合わせれば、栄養バランスは悪くないはずだ。マヨネーズのカロリーは気になるけど。
毎日、これをかじりながら登校するのが自分の日課になっている。
脚を動かし、口を動かし、ぼんやりと朝の風景を眺めているうちに頭が目覚めてくる。目覚めは悪くないほうだと思うが、一限目から続く退屈な授業を、眠気に邪魔されないためには欠かせない儀式だ。
そんな貴重な時間は、サンドイッチを食べ終えて校門が見えてくるころに終わりを迎える。
じー・・・・・・・・・・・
はっ!
ブンブン。
こちらを注視している人間が俺に気が付くと、元気よく手を振ってくる。
同級生の大谷だ。
俺の朝飯タイムと同様、彼女の挨拶もおそらく日課なんだろう、と思う。
日々繰り返されるこの光景。
もっと早く登校すれば、授業前にバタバタしないで済むのに。
そんな遅い時間に投稿してくる自分のことを棚に上げて、そんなことを思ってしまう。
そんなことは、顔にも態度にもそんなことは一切出さない。
常に平常運転の男。
それが、俺に対して周りが背負わせた看板だからだ。
「おはよ、みっきー。」
いつもの軽いあいさつ。
「おはよう、大谷。」
俺もいつもと同じように挨拶を返す。
さぁ、今日も退屈な授業の始まりだ。
2015/4/8
全体的に小規模修正を実施。
2016/1/27
全体的に修正を実施。