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えーっと、アクセス数が凄い勢いで伸びているのは、何ででしょうか……?
お気に入り登録も沢山していただいています。何かの間違い?評価していただいた方達も、ありがとうございます。
今のところ恋愛の「れ」の字も出てきませんが、後少しですので、お付き合いいただけるとうれしいです。
「まあそれはいいでしょう。ヨルグからの渡航者が一番多いだけであって、その他の経路でも来れない訳ではありませんから」
魔法使いがこっそり安堵の溜息をついていますけど、これで安心してもらっては困るのですよ。私がそこを追求しないのは、こんなところで観念してもらってはつまらな……いえ、懲りない輩のようなので、とことん落すことに決めたからです。
だから違うところでは突っ込みますよ。
「ですが、結界を守る神子として、結界が揺らいでいるようにも取れる言い方をされるのは許せません。そんな事実、一切ありませんから」
「だが、実際魔物は何体も現れているじゃないか」
言ったのは、戦士です。漸くフリーズから復活しましたか。
「そうですね。ですが、根本的な勘違いをされていますよ。貴方達に限らず、この世界では常識のように言われていますが、魔王が魔物を生み出しているわけではないし、魔王は世界を滅ぼそうとしているわけでもありません。それに、私が守っている結界は、魔物の流出を防いでいるわけではないんですよ」
「はぁ?なに言っているんだ。実際、この大陸にいる魔物が一番強いじゃないか」
「そこが勘違いの元です。確かにこの大陸に住む魔物は強い。強いものしかいません。逆に貴方達が育った地方は魔物が弱い。……そうですね?」
頷く、勇者。
「結界が揺らいで魔物が逃げたのならば、そちらに生息する魔物が弱いのはおかしいでしょう?強い魔物が逃げ出したんですよ?強いまま、遠くまで行くはずでしょう、強いんだから」
「……………」
「地方ごとの魔物の強さは平均的で、突出して強いのはいなかった。この大陸に近くなるほど、魔物は強くなった。違いますか?」
ゲームでは「そういうもの」で済まされますが、現実になると色々と説明が付かなくなるんですよ。
言葉の意味が十分浸透するまで待って、続けます。
「───私が守っている結界は、魔力の流出を抑える働きがあります。魔王城の周りの結界も、効果は同じ。城から流出する魔力の恩恵を、ありとあらゆるものが受けていますから、完全に断ち切るわけにも行かないんです」
「ありとあらゆるもの?」
「植物、動物、魔物。───確かに魔物は脅威ですが、世界を構成する余剰魔力が凝って生まれたものですから、必要悪と納得してもらったほうがいいでしょう」
「魔力が魔物を生み出してるってことは、魔王が魔物を生み出しているのと同義だろ」
「違います」
「だって、魔力を生み出しているのは、魔王じゃありませんから」
ここから先は、ゲームの二週目にも関わる話でもあります。
私は「神子」です。スキルも「神の目」
では、ここでいう「神」とは、誰を指すのか?
それが、通称魔王の城と呼ばれているあの場所の最深部に眠っているもの。眠りながら、膨大な魔力を垂れ流しているもの。
時の神。
それが彼の神の名前です。
魔王は、眠る時の神の封印。魔王が殺されると、時の神が目覚める。
その衝撃で、世界は消滅する。そんな筋書き。
それが一週目の、救い様もないBAD END。
私が自分の持つ能力と魔王を殺すと起きることを端的に説明すると、僧侶が引きつった笑みを浮かべて吐き捨てました。
「は?なに言っているんだ、そんなこと……あるわけ無いだろ」
信じられないのは分かりますけど、声が震えていますよ。
「貴方たちは魔物を倒すことでレベルを上げてきた。魔物は倒すと体は光を放って消え、そこに残るのは様々な素材や道具ですね?つまり、魔物は魔力の塊であるといえます。その気を浴びて力を付けてきた貴方達も、魔物と大して変わらない。魔力を受けて成長する生き物なんですから」
真っ青になった勇者一行。一人、例外がいますけど。
「嘆くことはありません。人間も、魔物も。動物や植物だって、みんなその神の恩恵を受けて生きています。ただ、触れてはいけないものに触れようとしているのを、私は神に仕える神子として止めなければなりません。ましてや一個人の身勝手な思惑で、世界が滅ぶのは何としてでも阻止しなければなりません」
ゲームの中の神子が、何故勇者を連れて魔王城の結界を破ろうとしたのか、正確にはわかりませんけど。ストーリー上、神子は魔王と個人的な接触を持つ機会がありました。
魔王とは知らず、魔王の役目も分からずに。
魔王もまた。
あくまでも「時の神」とは違う存在であるが故に、「魔王」という役割を自覚すると急速に力を蓄えることになりますが、急速に精神が不安定になるらしいです。
神の放つ圧力を常に受けつづけ、眠りを守る封印の担い手。精神崩壊するその前に魔王は暦を譲り、次の魔王が選ばれるのです。
名前は常に同じ「イスラフェル」
開発者に狙って名づけられたのでしょう。「最後の審判」の開始を現すラッパを吹く天使の名です。
選ばれたばかりの当代魔王は、自覚の無いままに神子と接触。一度は親密になるのですが、魔王が自覚するとともに、増大した魔力によって神子を傷つけてしまい、それが切っ掛けで正体が暴露。袂を分かつことになります。
神子は「魔王」の意味も知らず、自分が何を守っているのかを知らずに、魔王をただ倒して欲しかったのか。
魔王も、神子を殺せばどちらにしろ結界が壊れること分かっていて、不意打ちを狙ったのか。
ゲームの中では明かされることはありませんでした。
「誰が信じるか、そんなこと。証拠を見せてみろよ!」
叫んだのは魔法使い。転生者ですね。
こういう輩が実は一番性質が悪いです。
ゲームの感覚が抜けなくて、上から目線で何をやってもいいと思っているんでしょう?所詮ゲームだから、自分は特別だからって。
「証拠、ですか?そうですね」
私はどうしようか一瞬考えた後、足元に魔法陣を描きました。召喚の魔法陣です。
魔法陣は淡い緑の光を放ち、すぐさま望む人を呼び出しました。
魔王、イスラフェル。その人を。