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 システムの縛りが少ないかも?というのは別の形で認識を強くしました。

 


 絶対死んではいけないモブである村人達が、怪我も病気も普通にすることがあったからです。



 私も、風邪も普通に引きましたし、レベル上げの途中で死にそうになったこともありました。死にそうになった時、誰かが突然乱入してきて助けてくれたりとかは別に無かったですよ。

 私が助かったのは「神の目」の能力のおかげです。

 まあ、これもある意味システムですけどね。



 確信に近いものを感じたのは、村人も老衰には勝てなかったこと。


 お隣の家に住む、小さな頃から私をかわいがってくれたおばあさんが亡くなった時、本当に不謹慎ですけど、そう思いました。




 もしかして、イベントそのものはシステム上設定されているけど、その後の行動そのものは本人の意思に任されているの?と思うような出来事があり、さらに色々あって現在に至るんですが……勇者一行の方がよりシステムに縛られているように見えるのは何ですかね?





 さて、とにかく決着を付けてしまわなければと気持ちを新たにして、私は勇者一向に向き直りました。

 険しい三割、(おごそ)か二割、見下し五割な感じで表情を作ります。イメージは、天使とかが罪深き者達を断罪する時に浮かべる、美しくも恐ろしい非人間的な顔です。

 残念なことに現在の私の容姿は、転生前に似ているのです。そこは転生者特典を付けてほしかったと心の底から思いますが、仕方ありません。気分は、私は女優!です。




「勝手に筋書きを変えるなんて、とおっしゃいましたが、どういう意味なんでしょう?さも、私が貴方達についていくのが当然とでも思っていたのですか」

 返事はありません。まあ、出来ないでしょうね。

「その剣の存在を拠り所に勇者などと名乗っていたようですが、そちらの戦士の方や私にも剣抜けたことで、前提は崩れています。貴方達はただの旅人です。……いいえ、それよりも、もっと悪いかもしれませんね」


「どういう意味だ」

 今浮かべている表情にわずかに侮蔑を混ぜると、勇者が結構いい反応をしてくれました。


「私はレグエス大陸の結界を守る神子ではありますが、存在を秘しています。なぜ貴方達が私のことを知っているんですか?」

「え……?」

 訳がわからないというような勇者達だったが、答えたのは魔法使いの男。

「俺達が来たアンラード大陸、最北端の王国、ヨルグの国王が教えてくれた」

「嘘ですね」

 私はきっぱり言います。

 ゲームでは確かにヨルグの国に巣食った魔物を退治して、そのお礼にお宝と最後の村への道しるべとなる情報を貰って、この大陸にやってくることになります。


 ですが、今回はイベントそのものが起きなかったはず。……なぜなら。


 ヨルグは、ここからだと海を挟んだ一番近い大国です。逆に言うと、勇者の村から一番遠い王国です。どんなに勇者が早く出発したとしても、この王国だけはたどり着くのは私の方が早い。

 うちの村に来る出入りの商人さんにお願いして連絡をとり、レグエス大陸の結界を守る神子としていち早く警告をしたんですよ。

 とある大臣が、魔物を呼び出して王を暗殺しようとしている、と。今はまだ計画段階ですが、いずれ実行に移すから気をつけるように、出来れば呼び出す直前に阻止した方が言い逃れが出来なくて良いですよと、伝えました。


 ゲームの中では、勇者が来た時に国王は既に暗殺されていて、魔物を呼び出した大臣が王位を簒奪し、暗黒政治を行っていました。野に下った王子を助けて再び玉座に据えるまでがイベントだったんですけどね。


 暗殺なんて、防げたらその方がいいじゃないですか。殺されるのは国王だけじゃなくて、国王派の家臣たちの他、大臣に無理やり結婚させられそうになったのを(いと)うた王女は自害。兵士や騎士も沢山殺されちゃいます。いくら最終的に王子が跡を継ぐからって、亡くなった方が戻るわけじゃありません。



 それにフラグが折れるのかどうか、いい前例になるし、なにより勇者が来る前にイベントの内容を変えてしまえば、私のところまでたどり着かないかもしれない。そんな打算もありました。

 本当は前世のゲームの知識ですが、「神の目」のおかげですと言って見事に災厄を回避、フラグの一つを折ったのです。



「数年前よりヨルグの国王とは故あって(えにし)を結び、定期的に交流を重ねております。その際交わした約定により、私の存在を口外しないと誓ってくださいました」

 今ではすっかりお友達というか、相談役のような地位にあったりします。


 実は、ヨルグ国王は三日ほど前にも連絡を下さいました。

「不甲斐ない事に、盗人に潜入されたのだ。だが、盗まれたものは今のところ見つかっていない。文官の部屋が特に酷く荒らされていたようだが、あそこにあるのは民からの申請書類の山だ。その一枚や二枚が盗まれていたのだとしたら、流石に分からんな」

「申請書類とは……もしや、渡航許可証ではありませんか?」

 私がそう言うと、国王は苦笑を浮かべました。

「許可印そのものはその場にあった。でも、使用した形跡があるのですね?」

「うむ。貿易振興策が功を奏して、申請が相次いでな。処理に少々時間がかかるが、別に禁止するわけでもなし。なにか偽装しておれば話が別だが」

 


 うちの村というか、レグエス大陸に渡るのは、基本的にヨルグ国が窓口です。

 これは国王と面識が出来るずっと以前からのことで、単純にそこの国からの渡航者が一番多い事が理由です。魔物が強いから危険というのと、あまり沢山の方に来られてしまうと食料が足りなくなってしまうので、商人さん以外の渡航希望は基本的にお断りしているのですよ。観光名所になるようなところはありませんしね。魔王の城は、外見は美しいですけど。



「それに、この大陸には、『旅』という名目での渡航許可は出ないはずなのですが?」



 私がそう首を傾げると、魔法使いが目に見えて顔色を悪くしました。


 



一話分が凄く長くなってしまったので、中途半端なところで切っています。

すみません。

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