表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/22

2

アンチ勇者のタグを追加しました。





「──は?」

 断られるとは思ってもみなかったらしい勇者一行に、私は鼻で笑ってみせました。挑発的?喧嘩上等?望むところです。

「嫌だと言いました。なぜ貴方達のような得体の知れない人達を、私が魔王の城に案内をしなければいけないんですか?」





 私がいちゃもんつけているのは勿論死亡フラグを折る為ですが、現実問題として、自称「旅の勇者」が突然自分の前に現れて「協力して欲しい」なんて言ったら、どうします?信じますか?

 こちらの大陸まで名前が鳴り響くような功績を上げているならまだしも、ある日突然やって来たただの兄ちゃんですよ、この人達って。

 ゲームやってる時はそういう話だから不思議に思わなかったけど、実際に言われると、実に薄気味悪いと思いませんか?

 この人達、当然の様に私を連れて行こうとしてますけど、今日始めて会った他人の、男四人のパーティの中に、女一人の自分が入るって想像してみてくださいよ。





 ありえない、色んな意味で危ないって思いません?



「得体の知れないって、俺は勇者で……」

「まずそこです。勇者という称号は周りがそう呼ぶから称されるのであって、自ら名乗るものではありません。……そもそも、貴方は誰に許しを得て勇者と名乗っているんですか」

「許しというか、俺が勇者と名乗っているのは、勇者しか使えない伝説の剣を使えるからだ」

 剣帯からきらびやかな装飾が施された幅広の両手剣を外して、私の方に見せる勇者。

「この剣は、聖剣イグローズ。イグローズ聖王国が代々伝えてきた、神から賜ったとされる勇者の剣」



 私は神子なので、「心眼」「看破」「鑑定」「千里眼」「先見の明」「未来見」などを複合した「神の目」という上位の独自スキルを持っています。未鑑定品の鑑定は勿論の事、相手のレベルやスキルが見えたり、嘘をついているのが分かったりするんですよ。


 勇者一行は全員がこの時点でのカンスト、レベル50で、それぞれがその職業の最終奥義も習得済み、後は魔王を倒すだけになっています。

 隠しイベントをこなさないと最終奥義は習得できないのに、きっちり網羅しているあたり、勇者一行(パーティ)の中に私と同じ転生者がいるような気がしますね。


 パーティのリーダーは勇者ですか。今までの方針は彼が決めてきたんでしょうから、かなり怪しいんですけどね~。

 実は称号も見えていて、勇者はちゃんと「称号:勇者」になっているのは分かるんですが、残念ながら転生者かどうかは分かりませんでした。






 ……でも勇者の剣については色々と見えたんですよね。

 


 さらに、私はプレイヤーだったから、貴方達が知らないことも知っているんですよ。まあ、転生者でプレイヤーが勇者一行の中に居るとしたら、私がやろうとしていることに気付いて邪魔してくる可能性があるんですが。


 



「じゃあ、私がその剣を抜いたらどうしますか?」

「そんなことある訳ない。俺は聖王国の騎士団長だったが、入団する時に必ずそれを全員に抜けるか試させるんだ。俺は抜けなかった。俺と同期のヤツも全員、抜けなかったんだ」

 戦士が噛み付いてきました。ふんふん、昔やろうと思っても出来なかったんですか。それはそれは……ちょうどいいですね。




「その剣、貸してください。……まさか、拒否したりしませんよね?」

 静かな自信に溢れた私に、勇者は一瞬怖気づいたような顔をしましたが、畳み掛けるように言えば、拒否できるはずもありません。止めないのかと問うような視線が両親へも向けられましたが、私がこの日の為に根回し説得工作を済ませているので、見ているだけです。


 で、私は賭けに出ました。勇者から渡された剣を、そのまま戦士へ渡したんです。

「抜いてみてください。言っておきますが、抜けない演技なんてしないで下さいね」

 ついでににっこりと笑ってあげました。ええ、挑発です。


「愚弄するのか!抜けないと言っているだろ───えっ?」


 怒りのままに力を入れた戦士の手の中で、『勇者』の剣は鞘走って美しい刀身を垣間見せました。

 戦士は自分がやったことが信じられないのか、完全に固まっていますが、それは勇者一行全員が同様です。口を開けて、とても間抜けな顔をしています。


 私は固まったままの戦士から剣を取り上げました。刀身が中途半端に抜けたままの剣を。


 持ち主以外抜けない剣が、こんな風にちょっと刀身が見えるような状態で他人の手に渡ったらどうなるのか?

 答えは「人の力ではとても持てないような重さになる」のですが……ゲームの中で剣の能力を試すイベントがあるんですよ。

 剣はやすやすと私の手の上にあります。そのまま柄に手をかけて抜き放つと、波紋が美しい剣の全体像が(あらわ)になりました。


「逸品であることは間違いがないですが、これのどこが勇者だけに扱える剣なんですか?」

 難なく鞘から抜き放った私の手にある剣を、悲鳴のようなものを上げて見つめる勇者一行。

 私は一度、剣を鞘に戻すと父に向かって差し出しました。

「折角なので、父もやってみますか?」


 父は興味を持ったのか近寄ってきて剣を受け取ると、やはり簡単に抜いて見せます。

「母もどうせなら」

 ちょっと笑って促すと、母も渡された剣を抜いて見せました。






 勇者一同、地蔵になったまま動かなくなってしまいました。








スキル説明


心眼:物事の真実の姿や、嘘いつわりを見抜く力。姿を偽る魔法や幻術は1/2で回避。戦闘時には敵の物理攻撃を1/2で回避。ただし、自分のレベルより高いものに対しては効果がない。


看破:相手のレベルやスキル、称号などが見える。ただし、自分のレベルより高いものに対しては効果がない。


鑑定:未鑑定品の真贋・良否などを判定する。また、その品の持つスキルを見通す能力。ただし、自分のレベルより高いものに対しては効果がない。


千里眼:遠方の出来事、また、隠れているものなどを見通す能力。見えるのは今現在のできごとのみ。一日一回限定、精度25%。


先見の明:事が起こる前にそれを見抜く。戦闘において、不意打ちおよびバックアタック完全回避。ただし、自分のレベルより高いものに対しては効果がない。罠も1/2の確率で見つけるが、解除は出来ない。また、宝箱に掛かっている罠は判別が出来ない。


未来見:これから来る物事が漠然と分かる能力。虫の知らせ。使用することで敵エンカウント率を1/2まで下げることが出来る。戦闘においては敵が仕掛けてくる攻撃が分かる。


神の目:上記6個のスキルを複合し、さらに能力を向上させたもの。相手のレベルが自分より高くても能力を発揮する。

戦闘時 物理攻撃2/3で回避。魔法攻撃1/2で回避。さらに敵の攻撃を1/3でキャンセル、1/5で反撃、1/10で反射する。姿を偽る魔法や幻術、不意打ちおよびバックアタック完全回避。使用することでエンカウント率0まで下げることが出来る。


非戦闘時 看破と鑑定の精度がより向上し、千里眼は過去のことも見えるようになる。(要、媒介)精度75%。

罠の完全回避、解除は出来ない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ