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とある日の神子と魔王の会話 ─紳士達の行く末─

11話を読んでいない方がいらっしゃいましたら、そちらからどうぞ。本編最終話です。

  !警告!

 1 ほぼ100%ネタです。

 2 会話のみです。

 3 「紳士」のため、男性用下着に言及するシーンがありますが、アッー!とか腐とかの意味ではありません。

 4 時間的には本編終了後になりますが、明確な時期を考慮してはいません。


 ご了承ください。



神子「村での行状が発覚する前に解放しちゃったでしょう?罰してもらうにしても、微罪処分なんてことになったら業腹なんで、過去に遡って調べてみたんだけど、勇者ってやっぱりあちこちでやらかしてたみたい」


魔王「やらかした……って、他人の家に勝手に上がりこんで、家捜しした挙句に金品を巻き上げって行った以外にかよ?」


神子「そう。それに下着も持って行ってるから変態的でもあるけど」


魔王「未遂じゃなかったのか」


神子「未遂じゃなかった。それも、盗まれたのは男用、女用、両方だもの。私、変態ではないので他人の使用済み下着(洗濯済み)を持っていく神経が全く分からない」


魔王「俺だってわかんねーよ!……それにしても、あいつ等、やってることまるっきり押し込み強盗と同じなの、分かってねえのか?」


神子「(変態の気持ちが分からないって、小児性愛者だと方向性が違うからかしらね)……分かってないんじゃない?最初が悪かったと言うか、変な刷り込みが入ったみたいなんだけど、勇者の剣……聖剣イグローズがあった聖王国って、国をあげて使い手を探していたから、王宮内もある程度開放していたらしくて」


魔王「ああ……大体想像できた。進入禁止のところに勝手に入って、金目の物を盗っていったんだろ」


神子「そうそう。それで一応、国宝の剣の主ってことで『魔物退治に精を出せ、持ってった宝は支度金として下賜する』……つまり大目に見てやるから国のために働けってことになったんだけど」


魔王「まだ続くのか」


神子「斜め上の解釈をして、世界を魔物の脅威から救ってくれって依頼されたと思い込んで旅に出た、と」


魔王「剣をやるから国に仕えろって話だったろうに、どんだけだよ?」


神子「宝を盗んだって聖王国が弾劾してくれれば良かったのに、結果的に許されたことで、目的のために多少無理するのは、仕方がないって悟ったみたいで」


魔王「多少?どこが!」


神子「あくまでも自分(・・)の感覚でなんでしょう」


魔王「うわー。ないわー」


神子「それから次の王国で、王宮に勝手に入ろうとして衛兵に咎められたり」


魔王「咎められた程度で済んで良かったな。いや、後々のことを考えたらその時牢にでも入れられてた方が良かったか。どこの国に、いつでも誰でも入れるように王宮の門を開放している所があるかよ」


神子「僧侶が謝罪馴れしているように感じたのは気のせいじゃなかったみたいで、聖職者(そうりょ)に平謝りさせたみたい」


魔王「比較的まともなヤツが損をするんだよなー。とっとと見捨てりゃ良かったのに」


神子「他の国でも、情報を得るためにやたら王に会いたがったり」


魔王「あー。ゲームでは、どの国でも大体ノーチェックで謁見の間にいつもいる王に話し掛けられたけど、現実で、一介の旅人に一国の王の謁見が適うと思う方がおかしいだろ」


神子「どんな扉でも開けられる魔法の鍵を持っていたから、夜忍び込んであちこちからごっそりお宝を持ち出して」


魔王「それ、普通に泥棒だよな……?」


神子「罠があっても無駄にレベルが高いんで、無効にされたり壊されて意味なし」


魔王「………勇者は転生者じゃないと思っていたが、本当はゲームを知らないだけかもしれねぇな。もしくは記憶が完全に戻っていなくて、感覚では覚えていたのか。どっちにしろ、まともなのは(ツラ)だけだな」


神子「まとも……っていうか、取調官とか接した人達が男だったら逆にやっかみの的になりそうな感じではあるね。とにかく、一番頭悪いのは魔法使いだと思ったけど、勇者も類友だね」


魔王「類友だな」


神子「村でのことがなければ、暗示も掛けたし放置でいいかと思っていたけど、失敗した。少なくとも魔法の鍵は取り上げるべきだった。ゲームでのルート上、手に入れているのは分かっていたのに」


魔王「まあ、仕方ねえ。「神の目」も、常に発動しておくと眩暈が止まらなくなるんだし、分からなかったっていうか、思いつかなかったのは俺も同じだ」


神子「その場で断罪できなかったのは悔しいけど、これだけ広い範囲でやらかしてたんだから、証拠も証言も取れるはずよね」


魔王「勇者自称してたんだったら、覚えているやつも多いだろ。下着泥やってる段階で、顔に騙される輩もいなくなるだろうし」


神子「イケメンだからって中も良いとは限らないのに、どうして騙されるのかしらねー。内面の悪さを顔でカバーしている可能性を考えないのかな」


魔王「(相変わらず、顔のいい男が嫌いだよな……)俺に出来ることがあったら言ってくれ。(いっその事、息の根を止めちまった方が世のため人のためのような気がするが)」


神子「ありがとう。なにかあった時はお願いするかも。でも、手を下す時は私がやるからね」


魔王「えっ??(心の中で思ったはず……だったけど、口に出してたか?)……ま、まあ、遠慮はしないでくれ」


神子「遠慮なんてしないよ~。転移魔法私は使えないし。どうせやるなら一瞬でぷちっていうよりもじわじわ真綿で首をしめる方が好みだしね」


魔王「………………」


神子「……どうしたの、なんか急に顔色悪くなったみたいだよ?」


魔王「いや、なんでもない(すっげえ怖かったなんて、とても言えない……)」


神子「さーて、それじゃあ計画を立てなくちゃ。追い詰める場所は一番被害が大きかった国が良いよね。それまでに窃盗の証拠と証人を集めて、取調官は顔で贔屓しないように男で固めて、ヨルグ国王に繋ぎを依頼しよう。あとは……そうねえ、突然勇者達の前に転移魔法で現れて、うっかり反撃してくるのを狙ってみるとか。故意を狙うと、後々イグローズ聖王国が聖剣の主を弱体化させたって煩く言って来るかもしれないから、根回しが必要かなぁ。レベル50あれば誰でも聖剣が装備可能だってわかったら、喜んで蹴り落とすと思うけど、どう思う?」


魔王「……暗示は『害意があったら』発動するんじゃなかったのか?」


神子「そんなもの、最初から限定するのが無理だもの。それに暗示じゃなくて『呪詛』だから」


魔王「…………………………」









 ───そして。


 その後、勇者一行を見たものは誰もいない。







 おしまい。



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