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 突然書きたくなって勢いだけで書いています。誤字脱字などありましたらご指摘ください。

長くはなりません。R15と残酷な描写ありは保険です。






 (ちまた)では、ゲームの中に転生するのが流行っているそうですね。それも、前世の記憶付きで。


 転生先がゲームの主人公だったというのは良くある話。主人公に近い主要登場人物になるのもあるある。ぐっと遠くなって、単なるモブAがゲームをプレイした時の知識を元に、チート上等で無双していくのも下克上で面白いと思っていました。

───そう、前世では。



 お約束というか、何というか……はい、私も転生者です。前世の記憶があります。ゲームプレイした記憶もあるので、話の筋もわかっていたから、子供の頃から自分の立場を理解していました。前世の記憶があるのは産まれたときからで、勇者が魔王を倒すというよくある大作RPGの中にいるんだと分かったのは、五歳くらいなんですけどね。


 そんな私はモブZ。

 おつじゃないですゼットなのです。

 

 Zというのは要するに、勇者と接する順番です。

 最初の村の入り口で「ようこそ、ここは○○村だよ!」なんていう、一度話したらお役目御免、以後貴方は快く余生を過ごしてくださいなモブAとは違って、私は物語の佳境に登場して勇者一行を魔王の城へ案内する、モブの中では比較的重要な役どころだからです。


 一応、名前もゲーム中では明かされているんですけど、所詮はモブだからいいんです、モブZで。

 だって、主要登場人物だったら死なないでしょう?


 ええ、私、魔王の城に勇者一行を案内した後、いきなり現れた魔王の不意打ちから勇者をかばって死ぬんですよ。


 

 で、先ほども言いました通り、五歳の時にゲームの中にいると理解した私は、ものすごくショックを受けました。だって、余命宣告受けたのと同じなんですからね~。

 勇者が私の住む村にやって来るのは十五歳になった時。そこで私は死ぬと分かってからは、これを回避すべく行動を開始しました。まあ、テンプレといえばテンプレですね。






 そして月日が流れて。



 十五歳になった時、私の住む村に予測通りに勇者一行がやって来ました。


 魔王城があるレグエス大陸の、唯一人間が住む村オルド。これがこの村の名前です。


 勇者一行は当たり前ですけど人間なので、魔王を倒すまで休む所はここしかありません。魔王城攻略中は、この村と魔王城を往復することになるわけです。

 

 でも、こんな辺鄙なところにある村に旅人が来るのは滅多にないので、宿屋なんてものはありません。定期的にやって来るのは出入りの商人さんだけ。彼のためだけだったら商売にもなりませんものね。

 まあ、助け合いの精神もありますから、尋ねてきた者達が犯罪者でない限り歓待することにしています。村の家はどこもそんなに広くはないので、必然的に泊まるのは村長の家である我が家になります。勇者一行は、村の中の武器屋や薬屋などで買い物をした後に、泊まらせてくれとやって来ました。


 世界を救うために魔王を倒す。その旅の途中であるから、当然歓待されてしかるべきだというあからさまに居丈高な態度に、村長夫人である母は顔を一瞬しかめましたが、そんな表情を綺麗に消して勇者一行に笑みを浮かべました。うん、なかなか演技がうまいですよ、母。

 でも、どろどろの格好のまま家に入ろうとしたのは許せなかったみたいで、先に井戸で体を洗えと命令しています。泥だけじゃなくて、汗やら埃やらで凄いことになっていますね、全員。

 勇者の一行は、勇者、戦士、僧侶、魔法使いの四人。全員男です。実に暑苦しい。ついでに汗臭い。


 体を綺麗にすると、勇者一行は荷解きをした後、あいさつもそこそこに保護者である両親を飛び越して私に話し掛けてきました。

 勇者はイケメンオーラ剥き出しの二十歳くらいの若造です。

 私は前世をプラスしたらとっくに四十路越えなんで、若造と言ってみました。

 好みでない男は本当にどうでもいい性質(たち)なんで、キラキラの金髪に青い目のイケメンに真摯に話し掛けられたら、なんでもしますなんて言っちゃう娘、続出なんだろうなーなんて思いながら、一応話は聞きました。


「俺は、世界を滅ぼそうとしている魔王を倒すために旅をしている勇者だ。世界であちこち魔物の被害が続出している今の状況は、レグエス大陸の結界を守る神子として、十分に憂える状態だろうと思う。君の身は自分達が守るから、諸悪の根源である魔王の根城までの案内を頼めないだろうか?魔王城の周囲に張られた結界を破れるのは君だけだ」


 ここで私は頷かないといけないんですが、死にたくないのでゲームの知識をフルに使って回避活動を続けてきました。物語の根幹(フラグ)を折るのですもの。万全を期さないと、補正が入ってやっぱり死ぬかもしれないから、慎重に計画を練ったし、行動してきたんです。


 確かに私は大陸の結界を守る神子なので、本当に結界を越えて魔物があふれ出ているようだったら、否が応でもついて行ったでしょう。神子としての義務を蔑ろにすると力はなくなるから、代々神子を輩出してきた我が家では、個人の意見よりも役目を優先します。でもそれは既に想定済み。根回しも全て終わっているのですよ。


 私は勇者に向かってにっこりと笑うと、言いました。

「嫌です」

 と。




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