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その2


「おい、本当に行く気か?」

「……ああ、もう決めたんだ」


 半分欠けた月の下、赤い髪の少年が金の髪の少年に険しい顔で睨んだ。低く唸るような声は苦渋と、それに隠れるように心配の色が滲む複雑な物だった。答える声は、そんな彼に申し訳なく思う気持ちと、それ以上の覚悟に満ちている。


「……っ、…そうか」


 それがよく分かった赤髪の少年は、ぐっと唇を噛み締め地面を睨んだ。金髪の少年は、そんな友の姿に目を逸らそうとするが、すぐに戒め真っ直ぐ射抜く。――彼にあんな顔をさせているのは、己だと心に深く刻んで。


「……つも、」

「え?」


 俯いたままの少年が発した声は、風に浚われ上手く聞こえない。金髪の少年が聞き返すと、赤髪の少年はばっと顔を上げ睨んだ。強面ながらどこか甘い顔を歪めて。


「ッ、いつも! お前はいつもそうだよな!」

「――、」

「いつも一人で勝手に決める! 俺には何一つ話さずに……ッ」

「お前……」

「俺はッ……、俺は、そんなに頼りねえか…? 俺は、お前の背負ってるモンを知る事すら、出来ねえのかよ?」

「……っ!」


 悲痛な叫びは、少年の心に深く突き刺さった。ただ心配させまいと、良かれと何も言わずにいたのが、裏目に出た。ただ彼には、何の憂いもなく笑顔で隣にいて欲しいだけなのに。

 涙は出ない。乾いた瞳は怒りと悲痛と、ほんの少しばかりの哀愁が浮かび、自分を睨むいつになく弱々しい彼には……笑顔が、ない。


「少しでいい、ほんの少しでいいんだ。……頼むから、俺を信用してくれ」

「……」

「俺にお前の背負ってるモンを、一緒に背負わせてくれ」

「……何で」


 訴える彼に、無意識に言葉が出た。

 何故彼は、そこまで? 自分の背負ってる物を、どうして一緒に等と言うのだろう。


 だが、その問いに答えは求めていなかった。何故、と頭では思うのに、心ではすでに感じていたから。


「―――ありがとう」


 どうしようもなく、嬉しくて。自然と泣きそうな笑みを浮かべながら、本人の暖かな心を表しているかのような髪を振り乱す最愛の友を抱き締めた。


「――…なっ…!」

「ありがとうな。…俺はいつも、お前に助けられてばかりだ」

「…っそれは俺の方だ!」

「いや、俺だよ。……悪いな、俺はお前を一番信頼してるし、信用してる。…だから、言いたくなかったんだ」


 静かな声は、苦しそうで。赤髪の少年は、いつも自分を明るく照らしてくれる少年の金の髪を見つめながら、抱き締め返した。

 少しの沈黙後、赤髪の少年は言葉を紡いだ。


「……何があったかは、知らねえ」


 そこに乗るのは、強い意思。


「だが、俺はお前が困ってんなら、何だってしてやりたい。――俺に、お前の背中を護らせてくれ」

「……っ! ……だが、分かっているのか? 俺の敵は……」


 隠し切れない喜びを、厳しい声で繕うが、それに赤髪の少年はただただ笑った。力強い、惚れ惚れするような男の笑みだった。


「ああ、知ってる。あの武縷怒愚ぶるどっぐだろう? ―――アレとは、俺も少しばかり因縁がある」


 男前な笑みに見惚れていた金髪の少年は、その言葉にハッとした。まじまじと赤髪の少年を見れば、どこか苦い笑みを一瞬浮かべ、次にはすぐに彼特有の太陽のような笑顔を浮かべた。


「さあ、行こうぜ。俺がお前の背中を護ってやる」

「――! ふっ……ああ、俺の背中は、お前にしか預けないさ」


 シニカルに笑った二人は、肩を叩き合いそして、並んで歩き出した。



 ―――はーい、友情(恋愛微混)フラグ・(恐らく)喧嘩フラグが回収、新たに数本フラグが立ちましたー。



 本日の私こと藤峰ふじみねさくらは、母にパシられコンビニに肉まんとおでんを買いにママチャリをブイブイ言わせていた。

 分かる、分かるよ。何で初夏に肉まんとおでんなのかとか、そもそも売ってんのかとか、か弱いピチピチの女子高生を夜に出歩かせていいのかとか、あると思う。特に最後ね!

 近くのコンビニは、真っ盛りになるまでは肉まんもおでんも置いてある変なコンビニだから、どちらも買えた。母の感性は一般人わたしには理解出来ないから謎。最後のは、変態に襲われたらどうしてくれると言ったら、変態だって相手を選ぶと鼻で嗤われた。ひでえ。(父は防犯ブザーを渡してくれたが、ちゃっかりチョコレートを頼んできた)


 その帰り道。公園で何やら声がするから覗いたら、いつぞやの不良二人(校舎裏で青春の殴り愛してた彼等だ)がいたから、ついつい好奇心で……後悔した。

 いやあ、ナレーション(私の妄想と願望混じり)まで付けて何が後悔だと思うけどさ。でもね、シリアスっぽいびーえるちっくなシーンは結構クるよ? 主に胃に。

 つーかさ、ブルドッグって何だろ? 犬? と言うか、友情フラグに入ったあまあまピンクのラインが太くなってて、今ではもうストライプだよ、割合的には友情7:恋愛3くらいだよ。


 うわあ〜……胃にもたれた。くそう、私にゃ未だに春が来ないのに、何で不良くん達は順調に友じょ…う? を育んでるのさ。いや、私にはりっちょんがいるけど。こう、フラグのない人生が欲しい。

 うう、私も恋愛がしたいなあ……平凡な人と。(派手な人はフラグも派手で、ギャップに笑いそうになるから無理)

 って、またフラグ立っちゃったよ。ぬう、帰ってから折ろう。


 だが、家に帰ってアイスあんまん(中にアイスが入った冷たいあんまん。イマイチ不味い)に打ちひしがれた私は、すっかり忘れてしまっていた。まあ、こんなもんだ。



 ***


 完璧超人外、神永かみなが蕾和らいかと接触してから、何故かよく目が合うようになった。

 いやね、前から結構バチバチ合ってたんですよ。多分頻繁にじろじろと顔(の上)を見ていたからうざかったんだろう。視線を感じ取るとかよく出来るな。私に出来るのはフラグを見るだけだ。(どやっ)


「おーい、桜ー」

「ぬい?」


 ……ごほん。

 ぼんやりしていたら名前を呼ばれた。見ると、教室の入り口に立った男が手招きしていた。あの平凡男子は、従兄弟の佐藤さとう勇治ゆうじだ。同い年で学校も一緒なので、偶に話す。

 近付くと、数学の教科書を貸してくれとの事だったので、快諾。歴史だったら貸さないが。勇治は偉人の写真に悪戯書きをするのだ。私もやるけどな。


「はい。もう数学は終わったから、放課後までに返してね」

「さんきゅ。あ、今日お前ん家行っていい?」


 隣のクラスに戻ろうとした勇治が一旦止め、そう言った。我が家には偶に来る。主に兄のゲーム目当てで。ふむ……。

 ちらりと勇治の頭の上に目を向け………二度見した。


「あ? 桜? どしたあ?」


 目を向き顔を引き攣らせた私に怪訝そうに眉根を寄せた勇治は、振り向き廊下の天井を見て首を傾げる。そこには何もない。

 私は、勇治の頭上に聳え立つそれに、戦慄した。


 フラグが……死亡フラグが立ってる───ッ!!


「おい? ホントにどうしたよ?」


 だらだらと冷や汗を流し青ざめる私に、勇治は本格的に心配し始め、顔を覗き込み額に手を当て熱を測り出した。いや、熱はないです。うっ、今寒気が! 背筋がぞくってした!!


 え、てかコイツマジでどこでこれ立ててきたの!? 最大級の死亡フラグがっ………、ん?

 私はそこで、ふと首を傾げた。 黒、と思ったが、これはダークグレー……かな? ピンクがかった黒に限りなく近い灰色に、漆黒の斑が混じったフラグ。えっと、確かこの色は……あ、そうだ!


「嫉妬だ!」

「はあ?」


 つい声に出してしまい勇治に怪しまれたが、何とか誤魔化した。

 そうだ、これ嫉妬フラグだよ! ピンクがかってるって事は、恋愛関係だよな? で、死亡の黒が少しあるのは……あれ。


 これ、かなりヤバいんじゃね?


 ネトラレとか三角関係の末……いや、勇治にそんな度胸も甲斐性もないか(酷)。優しいし良い奴だけどね、良い人止まりなタイプなんだよねえ。不憫な…。

 んーと、それにしてもこれ回収されたらどうなるんだ? 嫉妬をぶつけられて、…命の危機?

 ……よし折ろう。自分の以外のフラグを強制的にどうこうするのは嫌だとか、言ってられん。勇治が死んだら叔母さん達が泣いちゃうもん。勿論私もね。

 確か朝教室の前で別れた時にはなかったが……むむむ、珍しく…と言うか初めて一緒に登校したが、それらしい影は……あ、それが原因か?

 私を好きな……いや、ないか。恥ずかしい勘違いだな。えっと、勇治を好きなヤンデレちゃんが別のわたしと登校してるのを見て、私ではなく勇治に矛先を向けたとか? ……ないか、神永蕾和でもあるまいし。


 つらつらと考えていてぼーっとしてしまったのだろう。勇治がぐにぐにと私の頬を捏ね出した。やめいっ。


「うーっ、やえおっ! むにゅう…っ」

「お前マジでどうした? 顔色悪いしぼーっとしてるし、変な顔だし」


 最後のはおみゃーのせいだろうがッ! 殴るぞ!?

 べしっと手を叩き落とし、ヒリヒリする頬に両手を当てた。周りからの野次が煩い。別に付き合ってないから。


(それにしても…)


 フラグを折るにしても、あれだけ大きいと大変だな。物理的に折るから、フラグが見えない人の前では出来ないのだ。おかしな行動にしか見えないからね。


「えーっと、大丈夫。今日うちにだっけ? いいよ」

「おっ、そうか。んじゃ一緒に帰ろうぜ。じゃな」

「ういうい」


 授業が始まる前に戻っていった勇治。私は、女子に付き合ってるのかと聞かれたから、否定して従兄弟だと答えておいた。大体、勇治は義理のお姉さんに恋してるしな。ないない。


 あんな恐ろしいフラグを見たからか、その後の授業も休み時間も四六時中、背筋がぞくぞくしていた。うほう、こんなん初めてだ……。


 で、放課後なんだが。勇治曰くちなっちゃん(勇治の義姉で片想い相手)が私に会いたいとかで、勇治ん家に変更になった。勇治は私の家にゲーム借りにひとっ走りするとかで、私は勇治ん家に一足先に行く事になった。…おかしくね?


「じゃーねーりっちょん。デートいてらー」

「むふっ、じゃあね〜また明日ぁ〜♪」


 浮かれまくりのりっちょんに手を振り、私はのんびり行く事にした。と言うか、数学の先生にパシられた。何てこったい。

 最近先生に頼み事されるの多いなあ。私、そんなに頼みやすい顔してるかなあ?


 思いの外時間が立ち、小走りで勇治宅までの道のりを進んでいた。

 曲がり角に差し掛かった時、どんっと誰かにぶつかり尻餅を着いた。


「ぬわっ!」


 色気もへったくれもない声が出た。くっ、女子高生が「ぬわっ」はないわ「ぬわっ」は!

 自分に突っ込むも、お尻と腰へのダメージが意外と大きく羞恥より痛みが上回っていた。引っくり返るとか、気付かない内に急いでいたのだろうか。


「いっ、てて……」

「っごめん、大じょ――…ッ!」


 あれこのえろえろな美声はまさか、と思いぶつかった相手を見ると、案の定神永蕾和だった。え、何でこんなとこにいんの?

 何故か片手で口許を覆いこちらを凝視する神永蕾和に首を傾げ―――…スカートがぺろんと捲れ上がってるのに気付いた。


「っひゃああぁっ!?」


 ぱんつも太ももも丸出しで、慌ててスカートを直し押さえた。露出しないから白い太ももは大根みたいだし、今日のぱんつはちょっぴり大人な黒レースリボンの白。さ、最悪だ……!

 そこで、私にフラグが立った。だが今確認する暇はない!


 膝立ちで依然私を凝視する神永蕾和を睨んだ。顔真っ赤で涙目だろうから迫力はないだろうが、神永蕾和の目を逸らさせるには十分だったらしい。

 ……見たよな、あれ。むう……いやでも、神永蕾和なら美少女のぱんつも生足もおっぱいだって見飽きるほど見てそうだし、気にしな……え、あれちょっ、耳真っ赤だよ。え、うそ、まさかのジュンジョーくんですか。


「……あの、」

「っごめ、すまない! これはわざとじゃ…っ! 想定が……ぁ、っ兎に角ごめん」


 慌てて謝ってくる神永蕾和に、羞恥から派生した怒りがしゅるしゅると萎むのを感じた。

 まあぶっちゃけ、急いでて前方不注意で走ってた私が悪いしな。うむ、これは水に流そう。流して記憶から抹消しようそうしよう。おまいもだかんなっ!

 まだ謝る赤い顔の神永に、苦笑を向けた。わざとじゃないのは分かって……、ん? そういや「これは(・・・)」って言ってなかったか? それに早口で聞き取りにくかったが、想定がどうとか……気にしない方が、身のためだな。ウン。


 いつの間にか私の片手を両手で握り弁解と謝罪を繰り返す神永蕾和。何だか痴漢に間違われた人みたいだ、と場違いな事を思い、握られてない手を神永蕾和の手に重ねた。握る必要ないし、信者に見られたら死亡フラグのパレードなので外そう。


「あの、わざとじゃないのは分かってるからもういいよ」

「っぇ……藤峰…」

「私の方こそ、ちゃんと前見てなかったし走ってたの。ごめんね」

「…っ! そんなっ……さく、…藤峰は何も悪くない。俺が悪いんだ、ごめんな」

「いやいいって。あの、さっきの事忘れてくれれば…」

「うっ……わ、忘れるのはちょっと無理そうだ…。その、本当にごめん。なんなら殴ってくれ」


 真摯にそう言う神永蕾和。うーん、素直で普通に良い奴だなあ。ちょっとずれてるが。何て言うか、見た目と違って中身は結構普通。良い意味で印象が変わったかも。

 無表情がデフォルトで、だからかその美貌もあいまり人間味がなかった。でも、こうして話してみると、表情も結構変わるしそこら辺にいる男子高生とあまり変わらない気がする。ふぬ……そういや私、いつもは神永蕾和のフラグしか見てない(別に美形の無表情怖いとか思ってないぞ。ほんとだぞ!)から本当にいつも無表情か知らないや。噂が一人歩きしたんだろうなあ。不憫な。


 近寄り難いと思っていたが、そのイメージが払拭され私は自然と笑みを浮かべた。神永蕾和は、目を瞠り何故か固まった。


「ううん、私こそごめん。殴らないよ、神永くんが悪い訳じゃないし、人殴るのは抵抗あるし。そこまで言ってくれるだけで十分だよ。…ふふっ、何だか神永くんって意外と話しやすいね」

「っ! そ、そうか?」

「うん。噂で聞いた聖人みたいな神永くんより、今みたいな普通の男の子みたいな神永くんの方が、身近に感じる」


 噂の詳細は省くが、神永蕾和はもう聖人みたいな言われ方をしていた。私、度を越したお人好しは嫌いだから、絶対に関わるまいと思ってたんだよね。観察してて何だと言われるかもしれないけど。

 そう言うと、神永蕾和は苦み走った表情を浮かべぎょっとした。


「あれはっ……まあ、違うな。俺は誰にも彼にも優しい訳じゃないし」

「でも、よく女の子は助けてるよね? 男もだけど」

「……あれは。…あれは、約束だから」


 一瞬苦しそうな表情をした神永蕾和は、ふと遠くを見るような目で表情を和らげた。


「……昔、まだ小さい時に言われたんだ。『女の子には優しくしないとダメだよ』って。だから、『女の子に優しくしていたら、お嫁さんになってね』って…――初恋の、女の子と」

「ほえ…っ」


 初恋! 小さい頃の約束を律儀に守って、あんなハーレムを! うわわ、ハーレムは兎も角、ずっと想い続けてるって凄い一途で、ロマンチックだなあ。

 初恋の女の子を思い出したのか、甘く熱っぽい蕩けるような笑みと眼差しで私を見下ろす神永蕾和。ほわ、なんかドキドキするじぇ…。


「素敵なお話だねえ。え、小さい時なら、相手は幼馴染みの?」

「…いや……彼女とは、最近漸く再会したんだ」

「じゃあお嬢様? 確か小さい時に知り合ったって聞いたけど」

「違うよ」


 複雑な表情で否定された。およ、じゃあ誰だろ?

 それが顔に出てたんだろう、神永蕾和が少し悲しげに私を見た。何故悲しげなのかは分からないが、何だろう……胸がつきつきする。


「……本当に、分からない?」

「うっ……うん」

「…そっか。ああ、ごめん。座ったままだったな。怪我はないか?」

「え? あ、うん大丈夫…」


 優しく手を引かれ、私は立ち上がった。割りとあからさまに話を強制終了されたな。あまり詮索しない方が良かったか?

 お尻を払って、バッグも拾う。じゃあ、と別れようとしたが、未だ神永蕾和は私の腕を掴んでおり話して貰おうと見上げると、ふと神永蕾和の顔が降りてきた。


「―――藤峰の事、これからは名前で呼ぶから」


 ぎゃあああ───ッ! えろえろボイスで耳元で囁かれました! 猥褻物陳列罪で逮捕するぞこんにゃろう!(混乱中)

 びっく───、となった私は、返事はせず耳を押さえ脱兎の如く逃げ出した。腰抜けそうだったからよたよたカクカクしてたけどな!


 囁かれると同時にぽんと建設されたフラグは、これからの私の未来を表すような、メタリックな輝きのカオスな色(あまあまピンクにえろえろピンク、狂愛溺愛ヤンデレその他不明な色がたくさん)だった。最大級で、隣にはエロゲヒロインフラグ(明るい赤ピンクでえろえろピンクのチェック柄)が立っていて、いくら折ってもすぐまた立つ。

 神永蕾和から逃げた後、フラグ確認用に持ち歩いている鏡でそれを確認した私は、深い深い、それはもう深〜い溜め息を吐いた。

 しかもこのカオス色の旗の形は、思われによる強制タイプだ。簡単に言えば、先にフラグが建設され、それに追随する事象(感情)が後から出てきて、フラグに伴うと回収される。恋愛フラグで例えるなら、片想いされている人に見込みがある場合のみ建設される。逆に言えば、両想いになる可能性が高くないと建設されないフラグだ。


「……マジすか」


 藤峰桜もうすぐ17歳。この年にして人生二回目の、恋愛フラグ(強制)が立ちました―――。

 え、見込みあるの? 折れちまえこんにゃろうッ!!(ここでメタリックが撤去不可だと漸く知った)






「くくっ……もう、遠慮はしないよ? 俺の愛しい桜…―――」


 そう言って、妖しく凄艶な甘い甘い笑みを浮かべた男がいるのを、私は寒気と言う形で本能的に察知していた……―。




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