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第二話

お久しぶりです。

今回からちまちま更新していきます。

お待たせいたしました。

 千鶴君を撃退してから私はいそいそと身支度を整えた。日記は重要な彼女の情報を得られるために必要なものだから捨てることは出来ないが、その他のファンシーなグッズや匂いのキツイ香水、自分の好きな色ではない化粧品などの彼女の私物を処分した。今からの人生は私として生きるのだから、彼女はもう必要ない。したがって、彼女のものはもういらない。

「さようなら、真莉亜ちゃん」

 私を恨むのはお門違いよ。あなたは自分の意思で命を捨てたのだから。

「さぁて」

 寮の規則を読んだところ、授業がある間に掃除や洗濯をしてくれる業者が入ってくるらしく(自分でしないのがさすがお金持ちと言うところか。私はまったく賛同できない)、業者が集めてくれる袋にごみを入れて置いておけば回収してくれるらしい。しかも分別もしなくていい。最高だな。

「ご飯」

 寮には食堂。これは鉄則でしょう。財布には諭吉がぎっしり詰まっていて、落としたら困ると一枚だけ忍ばせておいた。この子ってどんな会社のお嬢様なんだろう。私が働きたい分野の会社とかだったら率先して家でお手伝い始めるよ。

「ここ、かな」

 ある程度パンフレットを読んだためか、元の体覚えているからか、はたまたこのすっからかんの脳みそがスポンジの如く道筋を記録してくれたのかはわからないが、なんとか食堂に到着できた。

「おい、見ろよ」

「うわ、金城真莉亜じゃん」

「やっぱ可愛いな~」

「やめとけよ。三宅の彼女なんだろ」

 三宅って誰だ。彼女の携帯には家族と執事と千鶴君しか入っていなかったぞ。日記には橘君と橘君の友達らしい今里君という人物くらいしか出てこなかった。あー、千鶴君の苗字かな?

「うわ、あの女来てるよ」

「橘様のストーカーでしょ?ありえなーい」

「男もアレのどこがいいんだか。馬鹿すぎて笑えない」

「馬鹿だからでしょ?すぐ股開くと思ってるんじゃないの」

 女子、それは私も賛同する。この女、マジで駄目だよね。だが、これから中身は私だ。仲良くしてくれ、努力するから。

「あ、空いてる」

 よし、ここに座ろう。席取り完了!…え、えと、どうやって料理を頼むのだろうか。見渡した感じ、食券機が見つからないんだけれども。つーか、そもそも料理の受け渡し口であるところからおばちゃんが顔を出している姿が見えない。え、どこ。なにこれ、どうすんの。

「金城さん」

「………」

「金城さん?」

「え、あ、はい!」

 やばい、早く慣れないと。自分が金城だってこと、忘れてたよ。私、和馬だったしね。

「ごきげんよう」


 絶句。


「…ご、ごきげんよう」

 うまく笑えているかしら。ごきげんようってなんだ、ごきげんようって。お昼の番組か。

「珍しいですわね、食堂にいらっしゃるなんて」

「え、あ、はぁ…気分です」

「へぇ?橘様を拝見するためにいつもテラスでしたのに?」

「はぁ…」

 テラスって何だ。どこだ、それは。食堂のテラスとはどう違う。なに、喫茶店的なところがあるのか、この寮には。その喫茶店のテラスに橘君はいつもいるのか。そして、私はいつもその橘君をストーカーしていたと。本当に真莉亜ちゃん気持ち悪いよね。

「利用方法お分かりでして?なんだったら、(わたくし)が教えてさしげましょうか?」

 神々しいオーラーが全身から表れているが、如何せん目が笑ってない。何この子、目ぇ怖い。なんか私にでも恨みあるの?…まぁ、真莉亜ちゃんのことだからありそうなんだけど。だがそんなこと私には関係ない。

「本当ですか?でしたらお願いします」

「……風邪でも引いてますの?」

 おっと。真莉亜ちゃんはこの場合、癇癪を起こすのが普通なのかもしれないな。ま、そこで起こしてあげる私じゃないんだな。これから真莉亜は私なんだから。

「教えていただけると幸いです」

「…いいですわよ」

 彼女は友達なのだろうか。いや、違うよなぁ。友達いないしこの子。んー、ライバルとか犬猿の仲とかそういう類のものかな。

「わぁ!西園寺春日様よっ」

「お綺麗ねぇ…」

「さすが、西園寺グループの社長令嬢よねぇ」

 お。西園寺春日さんというのか。インプットインプット。西園寺さんは女子にも人気が有るようだ。黒髪が似合うまさに美人!!素敵だわー。

「西園寺さん、金城真莉亜に話しかけてるぞ」

「やめておいたらいいものを」

「穢れる的な意味で?ははっ」

「金城真莉亜のことも気にかけてやってんだろ。優しくて美人でスタイル抜群とか最高だよな」

 本当に最高だよ、彼女。完全に私のことを見下して軽蔑しているのは、目が雄弁に語ってくれているが、それを隠してちゃんと接してくれるんだから。ああああああ、西園寺さん、友達にしたい。

「お分かりになりまして?」

「はい。西園寺さんの説明はわかりやすくて、馬鹿な私でも理解することが出来ました」

「………」

 絶句。それが今の彼女の顔を表現するのにぴったりの言葉だと思う。

「よろしければ、一緒に食事をとりませんか」

「…な、なにか企んでらっしゃるの?」

「いえ、そんな大層なことは考えていません。私もそろそろ、現実というものを見据えていかねばならないと思いまして」

「…そう」

 西園寺さん、私と一緒のクラスだといいなぁ。

「お誘いのところ悪いですが、(わたくし)は既に済ませてしまいましたの。また、誘ってくださってもよろしくて?」

「はい、また今度」

「…では、ごきげんよう」

「ごきげんよう」

 帰りの挨拶でもごきげんようって使えるのか。便利だな。

「さて、何を食べようかな」

 おばさん、携帯で料理注文するとか初めて知ったよ。

わ、真莉亜ちゃんスマートフォン!!あああ!!おばさん、スマートフォンの使い方わからないよ!

 そんなこんなで必死の努力のおかげで注文できたけど、このままだと先が思いやられる。

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