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第十九話

 琲禰がこの件を調べることとなり、宗佑君と過去の真莉亜についての情報を得て、別れることにした。

「今日はありがとう」

「いいや、こちらこそ。真莉亜のこと、よろしく頼むよ」

「もちろん、任せて」

 私にはその義務があるのだから。

彼女の自殺の理由が失恋じゃなかったとしても、そうだったとしても、今後彼女を人生を歩む私はそれを伝えるべきだ。

「マスター、車乗って」

「マスターって呼ぶなって言ってるだろ」

 琲禰が乗ってきたであろう車に共に乗車する。

「マスターのほうが、しっくり、くるから…」

 大きな体を縮こまらせて、琲禰はボソボソと呟くように話す。

「どもるな、どもるな。えぇい、わかった。二人の時だけは許す。それ以外でマスターと言ったら承知しないぞ」

「はい!マスター!」

 キラッキラの笑顔を見せ、琲禰はわたしの足にすり寄ってくる。跪き、スリスリと頬を寄せてくる。恍惚な表情を浮かべ、口をだらしなく開けているその姿に、足先から順々に鳥肌が立った。

「…お前それは素でやってるのか?」

「??」

 元々M気質なのか、新納の血がそうさせるのか。

「まぁ、いい」

 私が慣れるしかなさそうだ。

「ところで琲禰」

「…はい」

 スリスリと頬擦りしながら、トロンとした瞳で時折足を舐めてくる。段々気色悪くなってきたが、それ以上のことはしようとしてこないため無視を決め込み話しかける。

「今回の件、どれくらいかかりそうだ?」

「一週間以上の前の私を調べろとのことでしたが、マスターは、マスターではないのですか?」

 舐めていた足から口を話し、琲禰は緑色の瞳をこちらに向けてきた。

「質問に答えろ」

「すいません。どれほど前まで遡ればよいですか?」

「うぅん…そうだな…」

 それほど前は必要ないはずだ。原因を探るとなると…

「橘秀隆と出会った以降から現在までを調べてくれ…たぶん2年ほどだろうか」

「わかりました。2週間ほどお時間いただけますか」

「あぁ」

 琲禰は背を起こし、いつもとは違う声色で、一言も言葉を発していない運転手へ声をかけた。運転席とは窓で隔てられていて、運転手の様子はわからない。

「灰塚、話は聞いていたか」

「はい」

「調べてくれるか」

「かしこまりました」

 琲禰の痴態を見ても態度一つ変わらない優秀な部下だこと。

「琲禰、彼は血のことは知っているのか?」

「はい。彼は、新納の血筋のものです」

「そうか。あー、灰塚殿?運転中にすまない。私は金城真莉亜だ。新納琲禰の主となった。今後ともよろしく頼むよ」

「畏れ多いお言葉でございます。こちらこそこのような場から挨拶いたしますことをお許しくださいませ。私は琲禰様の使用人の、灰塚敦彦と申します。お見知りおきくださいませ」

 彼に挨拶したところで、ハタと思った。

 私は新納の当主に挨拶せねばならないのでは?

「琲禰、今度美禰さんと百合禰さんと…父上殿にご挨拶伺いたいのだが」

「はい、マスター。その場は夏休みに入ってから設けることになっています。日程が決まり次第お知らせいたします」

「わかった」

 琲禰は変わらず足に擦りついている。よく飽きないものだ。

「琲禰、明日は11時にあのショッピングモールに集合だ」

「はい、わかりました」

 琲禰によく似合うものを見つけたんだ。

 その言葉は明日まで黙っておくことにした。

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