第九話
翌日、昨日とは打って変わって地を這うようなテンションと共にテストを受けた。テンションとは関係なく勉強とやらは出来るので、終わったと同時に盛大な溜め息が出た。
どうしてかなぁ、私……コネクションのとり方間違えたよぅ……主従関係で会社なんかに勤められないよう…ぐすん。
のろのろと荷物をかばんに仕舞い、俯いたまま入り口に向かうと、教室が一気にざわついた。ていうか、悲鳴が上がった。
吃驚して教室のほうを見たら、みんなが私のほうを見ていた。なになになになに。
「マスター…」
急に足元に感触。うひぃい!
「なにすんだ!」
ゴッ!
鈍い音と息を呑む声。私は知らない男の顎に蹴りを入れていた。
「なっ、なにすんのよ!」
びびったのは間違いないが、口は出るのが私。
「マスターは…蹴るの、好き、なの…?」
「はぁ?!」
こちらに顔を向けた男は橘君たちのようにキラキラした超絶美形。誰、お前。なに、怖い。
「は?あんた、誰」
口調がガッツリ戻っていることには、このときの私は気付いていなかった。
「新納………琲禰」
「新納…」
は?え?ちょ、なに、ネタ?ドッキリなの?
今目の前にいるのは、昨日の油でテカった髪をした如何にもなキモメンではなく、綺麗に切りそろえられた今風の髪型をした、見たこともないような美形で、彫が深く瞳はグリーン、そして180cmを超えるモデルのようなしなやかな体格を持った男である。信じられるわけがない。あり得ない。
「は?!嘘つくな!」
「嘘じゃない…マスター……」
そう言って、私の爪先を持ち上げ、もう一度口付けした。再び巻き起こる悲鳴。
今気付いたけどギャラリー集まりすぎ。どっから湧いてきやがった。
「マスターが……汚い…髪の毛、切れって……コンタクトにしろって…」
マスターマスター言うような変態は昨日の奴しかいねぇよ!!テメェか!!こんな美形になったのは大誤算だ!!こんなもの掘り当てたくねぇ!!!
「だからなんだよ!!それとお前がこうやって跪いているのと何の関係がある!!」
掴まれている足を振り払い、きっと鬼のような形相をした私は教室から出る。なんだかわからないが騙されたような気がして、私はひどく立腹していた。そんな私の顔を見てみんなが私の前の道を開ける。
「待って…!マスター…!」
だがしかし追いつかれ、肩を力任せに掴まれる。
「いっ!!」
ってぇわ。こいつ、力加減とやらを知らんな?あ?
ゴス!!!
怒りのあまり私の回し蹴りが、新納の脇の下に決まる。
「うっ…」
息が詰まったらしく新納は小さく呻いた。切れた私にビビる周りのギャラリー。そして私のパンツが見えているであろう目の前の男は顔が赤い。
「力加減を覚えろ、糞犬」
パッと手を離した新納は泣きそうな顔をして、私を持ち上げた。
「は?!」
なに?!怒ったのか?!いいぞ、戦うぞ!!!!だがおろせ!!!!!
「マスター、死んじゃやだ…!」
「はぁ?!」
しなねぇよ!!!手をはなしゃ、済む話なんだよ、カス!!!
「俺が、看病、するからっ…!」
「死ね!!」
私のグーパンチが顔面に決まったが、苛められていたため慣れているのか、首をゴキゴキ鳴らすと、私を肩に担いで廊下を全力疾走し始めた。
小さくなっていくギャラリーの驚いた顔……私の人生…が…。なんでこうなる!!!




