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第十九章 神殿

 翌朝早く、再びエメロードはパールを連れ出した。

 今度はエメロードの私室ではなく、皇宮の外である。

 エメロードにはぜひともパールを連れて行きたいところがあったのだ。

 それは皇宮からさほど遠くない所にある神殿であった。

 その名をピピアナリウムと言う。ポセイドニアを見守る神々の中でも、圧倒的な人気を誇るピピア女神を祀ったものである。何故圧倒的に人気があるかと言うと、ピピアは女神であり、愛と性を象徴する神だ。この神は女性のみを守ると信じられていて、その神殿に男性は足を踏み入れることを許されないほどなのだ。ピピア女神にお仕えする神官も女性に限られている。世の中の半数は女性であるのでこの人気も当然と言えよう。


 参詣者は主に子宝に恵まれることや家内安全や恋愛成就を祈願するために訪れる。

 神官に願い事を聞いてもらい、神官を通してピピア女神に奏上するのである。

 が、男性は付き添いを許されない。夫であっても介護する者が必要であっても、神殿の門の外で待たなければならない。そのためにも、待合所的な意味合いで門の外は心地好く過ごせるような広場になっている。付き添いや守りが必要な者は、神官の見習いが同行の男性の代わりを務めてくれる。


 エメロードは誕生祝いに招待したパールが懐妊したことを知った時から、絶対ここにパールを連れてこようと考えていたのである。もちろんお腹の子が健やかに生まれてくることを願ってのことだ。

 今回は一平もお邪魔虫ながら同行した。言ってみれば、皇宮外へ観光に出るわけだ。テトラーダの方で皇女に護衛を付けるのなら、自分が護衛に付いた方が安心だ。幸いなことに、エメロードもそこまで一平を蔑ろにはしなかった。参詣の後は一緒に会食しましょうと誘ってもくれた。


 ただ、ピピアナリアムの中は同行することができない。

 男子禁制なのだ。聖域なので、女子寮への面会などとは訳が違うのである。残念だが、おとなしく外で待つことにして二人を見送った。

 神殿の中は入場が厳しく制限されている。間違いはあるまいと信用してのことだ。

 果たして、ピピアナリウムの参道を行く二人はおしゃべりに花を咲かせていた。

 といっても、初めのうちだけだ。ピピアリウムの中は静謐で澄み切った水が満ちていて、自然と厳かな気持ちになってくる。



「とても静かなところね。守人の試儀を思い出すわ」

 男子禁制の場所だけあって、殺伐としたところは微塵も感じられない。調度も楚々として品がよく、余計な飾りを廃した造りはトリトニアの王宮の聖廟を思い起こさせた。パールにとっては幼い頃から馴染んだ雰囲気で気持ちが爽やかに鎮まっていくのを如実に感じることができた。

「トリトニアにもこんなところがあるの?守人の試儀ってとても難しいものだと聞いているわ。一体どんなことをトリトン神はお試しになるのかしら」


 尋ねてからはっとし、エメロードは口を噤んだ。

 それは愚問だ。トリトニアの中心となる人々だけが心得ておくべきものだからだ。

 普通に返答しそうになったパールを自ら押し止め、エメロードは再び口を開いた。

「ああ、ごめんなさい。うっかりしていたわ。こんなことを聞いてはいけなかったわね。…いいのよ。あなたをここに連れてきたのはそんなことのためじゃないのだもの。ご覧の通り、ここはピピア女神を崇め奉る所よ。愛と性を司る女神のね。安産や子宝祈願に多くの人が訪れるのよ」      


 それにしては人気が少なかった。

「今日は特別。ピピアナリウムへの一般の参詣者は、もう少し後の時間でないと参詣することができないの。パールは他でもない、テトラーダの大切なお客様ですもの。一般の人たちに紛れてのご案内なんてできないわ」

「そんな…。パールは全然構わないのに…」

 自分一人のために、朝早くからピピアナリウムの神官たちを煩わせることになるのは申し訳なかった。トリトニアは、そういう点では王族も一般人も分け隔てしない習慣である。


「あなたが気にすることはないわ。父上を始めとして、皇女の私が足を運ぶ時にはいつもこうなのですもの。さあ、早く行きましょう。外に一平さまをお待たせしていることだし。私からもピピア女神さまによく頼んでおかなくては。お二人に元気で可愛い赤ちゃんを授けてくださいますようにって」

「ええ」

 それを聞いて、パールは満面に笑みを浮かべた。それこそが今現在のパールが一番望んでいることだ。エメロードに言われるまでもなく、毎朝毎晩パールはトリトン神とピピア女神に祈りを捧げていた。王宮にあるピピア女神の聖廟で。

 それでもたくさん祈っておくに越した事はない。パールは喜んでエメロードの案内を受け、ピピアナリウムの参詣を済ませた。

 参詣自体はそれほど時間のかかるものではない。だからこそ、一平はパールから目を離すことをよしとしたのだ。男子禁制の場所でもあることと聖域であることが第一の理由であったが。



(遅いな…)

 ピピアナリウムの門の外で二人の帰りを待っていた一平がそう思い始めた矢先であった。

「…一平…さ…ま…」

 微かな呼び声に顔を上げると、門の中からエメロードがまろび出てくるのが目に入った。

「エメロード姫⁉︎」

 顔は蒼白、足取りはよろよろと覚束ない。声を出すのがやっとといった息遣いが尋常ではない。戦士の常で異常事態には機敏な行動を迫られる一平は一瞬で何かがあったと判断し、エメロードを支えに駆け寄った。

「どうなされた?おひとりか?パールは一緒では?」

 エメロードの様子も気になったが、それよりもパールの安否が気掛かりだった。もしや中で何かの発作を起こして具合が悪くなったのではと嫌な予感が胸を騒がせた。


「ごめん…なさい…。私が…私がついていながら…こんなことに…」

「エメロード?」

「ああ、一平さま。どうしましょう。追ってください。パールを助けて…」

 不吉な言葉に一平の表情が険しくなる。

(追って?助けろ、とは?まさか…)

「落ち着いて。わかるように話してください。パールはどこなのです?」

 激しく動揺しているエメロードをまず鎮めなければならない。彼女の言から察すると、パールはピピアナリウムの中にいない可能性が高い。

「ああ。本当にごめんなさい。私にはどうすることもできなかった。いきなり男たちが現れて…。どうして?男の人は入って来れないはずなのに…」


「エメロード‼︎」 

 話が肝心なところへ辿り着かない。焦燥に駆られ、一平は声を荒らげた。エメロードは顔をくしゃくしゃにして涙を流し、嗚咽している。

「お願いだ。きちんと話してください。いや、いい。オレの言うことに頷くか否かだけでいい。できますか?」

 泣きながらもエメロードは頷いた。

「パールはピピアナリウムの中にはいないのですね?」

 エメロードは首を縦に振った。

「誰かがあなたの前からパールを攫って行ったと?」

「ええ…」

「中に入れないはずの男性がそれを行った?」

 頷いた。

「そいつらに心当たりはありますか?」 

 エメロードは首を横に振る。

「見たことがある奴らでしたか?」

「いいえ。いいえ…。初めて見る顔だったわ…」

「そいつらは何か言っていましたか?行き先とか、目的とか、それに準ずること」

 エメロードはいいえと首を振る。


「わからないわ。わからないんです。本当に急に現れて、私とパールを羽交い締めにして…」

 その様子が目に浮かび、一平は歯噛みした。抵抗する術を持たぬか弱い女性に対してしていいことではない。しかもパールは妊婦。手荒な真似は断じて避けなければならない。

「その男たちは一言も口を利かなかったのですか?」

 ほんの少しでもいい。何が手掛かりがなければ…。

「ああっ…」

 よほど恐ろしかったのだろう、その時のことを思い出したのか、エメロードは身を震わせて身悶えた。

 今はこれ以上は無理だろう。一平はそう判断した。

 パールが攫われたのなら一刻も早く後を追いたいが、手立ても手掛かりもない。唯一の頼みは目の前の皇女だが、この状態をなんとかしなければ如何ともし難い。



「姫。ごめん」

 断りを入れ、一平はエメロードを抱き寄せた。泣きじゃくるパールを、彼はいつもこうして宥めてきた。その経験からだ。

 邪な気持ちはない。ただ純粋に異常な興奮を収めてやりたかったのだ。

 初めエメロードは何をされているのかわからないようで、相変わらず泣きじゃくり、それでも本能が自分を抑えようと必死になっているのが感じられた。一平の身体は大きく、パールに比べれば上背もあって女性らしいボリュームのあるエメロードでさえもすっぽりと腕の中に収まってしまう。その厚い胸板と逞しい腕に包まれ、人の温もりと生きている鼓動、そして優しく静かに名を呼ぶ声とに励まされ、エメロードはいつしか落ち着きを取り戻していった。


 不意に我に帰り、自分が男性―しかも、心の友と大事に思うパールの夫である一平―に抱き締められているのだと知ると、エメロードは慌てて身を捩った。

 一平もエメロードの変化に気づき、身を離した。

 真っ赤になりながらエメロードは呟く。

「ごっ…ごめんなさい。私…。取り乱して…。それどころではないのに…」

 攫われた妻の身がどんなにか心配であろう一平に余計な心配と手間をかけさせたことを瞬時に判断し、詫びることのできる娘であった。


「オレの方こそご無礼を。…少しは落ち着かれたようだな」

 取り敢えずは一安心だ、という表情で穏やかに一平は言う。無礼を働いたと口では言いながら全く悪びれてなどいず、女性を抱き締めた照れなどその面にはまるで浮かんでいなかった。

 ただ、笑みはない。依然として最大の難関を目前に構えている男の顔だった。

「ゆっくりでいい。話してもらえるか?状況を」

 立ち話ではなんだと思ったのだろう。一平は腰を折り海藻の根方に胡座を掻いた。エメロードにも座るよう勧め、厳しいが落ち着いた声で尋ね始めた。

 エメロードの話はこうだ。



 ピピア女神に参詣を終えたエメロードとパールが神官に暇を告げ、長い参道を三分の一ほど辿った辺りで物音がした。エメロードが振り返ると、海藻の林の陰から三人ほどの男が現れた。一人がエメロードに飛びかかって口を塞ぎ、もうひとりが背後からパールの肩と腰を抑え込んで動きを封じたのだ。

 お互いの身に起こったことを目にしながら、二人の娘は互いの身を案じた。気の強いエメロードは口を抑えられながらも必死に逃げ出そうとし、ついには噛み付いて一瞬手を緩めさせた。


「パール‼︎ 」

 叫んだが、それまでだった。三人目の男が剣を突きつけたからだ。

 思わずごくりと唾を飲み込むと、男はレイピアの剣先をパールの喉元に向け直した。

「‼︎‼︎」

(やめて‼︎)

 叫びたいが声が出なかった。何やら珍しい匂いがした。

 男は言った。

「しばらくおとなしくしていろ。じっと黙っていれば危害は加えない。この姫を傷つけられたくなかったら言う通りにするがいい」

 エメロードは言うなりになるしかなかった。大事な友に何かあってはならず、また、その胎内には、新しい生命が息づいているのだ。


 パールの方はエメロードほどの抵抗力はない。力も非力だし、何より意識が保たなかった。

 突然の侵入者に身の自由を奪われ、目を瞠いて驚くパールの耳にその身を拘束した男は囁いた。

「お静かに。パールティア姫。我らに同行していただければテトラーダの姫に手は出しません。我が主どのが首を長くしてお待ち申し上げておりますれば」

(同行?我が主どの?どこへ?パールに何の用があると言うの?)

 男の言を耳にした途端、第三の男の剣がエメロードに向き、パールは声にならない悲鳴をあげた。


(逃げて!エメロードさま!)

 が、次いでその剣が自分に向かってきて、パールはもろに剣先を見てしまった。

 身体がすーっと冷たくなり、血が全てどこかへ抜け去っていってしまったような感覚に陥り、パールは何も考えることができなくなった。

(一…平…ちゃん…)

 ―また、離れ離れになる―

(い…。い…や…)

 パールの思いはどこへも届かなかった。

 急にぐったりしてしまったパールに男たちは少々慌てた。

 何をしたんだ?いや、何も。急にぐったりして…。この姫は病弱なんだ、急げ。などと押し問答をした末に、エメロードを軽く縛り、パールを抱えた一人を残りの二人が囲み込んで呪文を唱えると、煙幕と共にその場から掻き消えた。

 エメロードは驚愕に目を瞠いたが、いくら目を凝らしても三人の男とパールの姿を見い出すことはできなかった。



「その場から掻き消えたのか…」

「はい…」

「そんなことができるものなのか?」

 エメロードの言うことを疑うつもりはないが、信じ難い。

 だが、一平は知っている。海を出て以来、様々な不思議な現象に出会ってきた。だが、それらは皆本当にあったことなのだ。

「点繋道を使ったのではないのか?」

 瞬時に他の場所へ移動する方法として一平が知っているのはそれぐらいだ。

「いいえ。ピピアナリウム近辺に点繋道は存在しません」

 それも国の極秘事項のはずだが、今は斟酌している時ではないとみえた。

「新たにできたのだとすればあるかもしれませんが、可能性は薄いですし、呪文のようなものを唱えていました。それにあの匂い…」


 あまり嗅ぎ慣れないものだったが、知っているような気もする。思い出そうとすると黒ずくめの男の姿が思い浮かぶ。

 そう遠い前の話ではない。割と最近の、滅多にお目にかかれない人の…。

 それが大使で訪れていたガラリアの魔術省長官の姿だと思い至るのに長い時間はかからなかった。

「ガラリア…」

 エメロードの口から出た言葉に一平の表情が険しくなる。

 やはり…と言う思いが湧き上がる。


 証拠がない、不穏な動きがない、とは言うものの、どこかで何か画策している気配はあった。

 かつて国境付近でパールに不埒なことをしたガラリアの王ガラティス。ペニーノと共謀してパールに薬を盛り、無実の罪を捏造した。その上身体を調べるなど破廉恥な行為に及んだ男。

(くそっ‼︎)

 胸の底からドロドロと湧き上がる暗い思念に一平が纒わりつかれつつあるのに気がつきもせず、エメロードは言った。

「きっとガラリアですわ。あの国は魔術の国。昨日訪れていた魔術省長官から似たような香りがしましたもの。輪になって呪文を唱えていたというのも魔術でよく使われる方法ですし。私は詳しくは存じませんけど、それこそ魔術で病気を治したり人を呪ったり、自然現象を引き起こしたりもできるらしいですわ。何でもガラ神とか言う神と契約を交わして行うとか…」


「ガラ神…契約… 」

「それに私たちがトリトニアとテトラーダの姫だということも承知でした。その上で敢えてパールひとりを拉致したのです。私の方は元々お呼びではなかったらしいことからして、初めから計画的にパールティア姫を狙っていたということになりますわね…。一平さま?…」

 半ば呆然としたようにも見える一平の変化に、エメロードは不審な目を向ける。

「何か…お心当たりでも⁉︎」

 さすがオーラが見える巫女姫(候補)であり、勘が鋭い。

「ガラリアは…一度パールに手を出したことがある…」

 それだけ言うのも穢らわしい、と一平は思いつつ言った。

「まあ…それじゃあ…」

 犯人は決定したようなものだった。

「魔術でとんずらしたと言うなら、今後を追っても無駄だろう。それよりも…オレは直接ガラリアに出向く」



 トリトニアからテトラーダまでは普通に旅して約一週間の距離。さらにトリトニアからガラリアまでは三日はかかる。十日の距離をいかにして縮めるか。

「エメロード姫。これからすぐにラムス陛下にお目にかかれないだろうか。お願いしたいことがある」

「父上に?」

「点繋道を使わせてもらいたい。利用できるものは全て。もちろん国家機密なのは承知している。だが、事は一刻を争うのだ。それと足の速い騎イルカを何頭か」

「一平さま…」

「かつてガラティスはパールに対し無法な行いをした。目的が判然とせず、こちらも対処に苦しんだが、パールにしたことを鑑みるに、あいつがガラリアで無事でいられるとは思えない。一分一秒を争うと言って、決して過言ではないのだ」


 切羽詰まった感覚がビンビンと伝わってくる。

 エメロードには見えたような気がした。ガラティスがパールに何をしたか。そしてそのことでどれだけ一平を悩ませたかが。

 そしてさらにエメロードは見てしまった。

 それよりもさらに悲惨な場面を。

 油ぎった赤ら顔の男に衣服を剥がれ、悲鳴を上げるパールの姿を。

 そして、怒りの形相でその男に剣を突きつける一平の姿を。

 心の救いは、その後の出来事と思われる一平の胸の中で涙するパールの美しさだった。

 だが、そんな光景が見えたことを口にするわけにはいかない。

 エメロードにはわかっていた。

 これは単なる妄想でも白昼夢でもなく、これから現実に起こることになる未来図なのだと。ついに自分は夢見の能力に目覚めてしまったのだと。

 こんな悲しい未来を見るのなら、やはり巫女にはなりたくないと、エメロードは強く強くそう思った。



 エメロードの後押しも相まって一平は驚異的な速さでラムス四世を説き伏せ、最速のイルカと点繋道を得た。但し利用するのは今回限り。たとえ主君のオスカー三世にも他言無用。そしてエメロードが巫女修行に入ること、と言う条件づきだ。

 ヘキサリアに花婿探しを依頼しようというのに、結婚の禁じられている巫女になれと言うのだから、よほど皇族の姫の力は重要視されているらしい。

 このことはラムス四世が言い出したのではなく、エメロード自ら自分にオーラが見えることを明かした結果だった。彼女にしてみれば、パールが拉致されたのは自分の責任であり、救いにも行けない何の力もない己としては、一平の力に頼る他なく、口添えをすることで力になればとの思いだったのである。


 それほどにもエメロードはパールを大切な友と考えていたのであった。

 恐縮したのは一平であったが、エメロードにオーラを見る力があるということは知らなかったので、彼女が巫女になりたくないと思っていたことも当然知らない。

 巫女になることが不本意であるとは夢知らず、ありがたくテトラーダの言う条件を呑んだのである。


 テトラーダを出発する間際エメロードは言った。

「お急ぎになって、一平さま。パールはあなたが来てくれるのを一日千秋の思いで待っているわ。…大丈夫。何があってもパールはきっとあなたの元に戻ってくるから。私はそう確信しているわ」

「いろいろありがとう、姫。巫女姫にそう言われると大変心強い。これからもパールの心に支えになってやってほしい。何があっても」

 固い握手を交わし、エメロードは思った。

(この人は全てを覚悟している。自分がどうなろうとも、決死の気持ちでパールを取り戻すことだけを考えている)

 それなら大丈夫だ。

 何があっても。

 例えパールがどんなにひどい目に遭おうとも。

 この人ならば救ってくれる。

 身体だけではなく、その心も。

 エメロードは心の底から祈った。

 パールとお腹の子が無事トリトニアに戻ることを。


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