表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~  作者: あずももも
5章 全世界にバレた僕の顔

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/110

57話 「エスコート作戦」3

「あ゛――――……」


僕は、ただただ泣いていた。


体の周りにはティッシュの山。

途中までは涙と鼻水でずびずびになってた服が、今さらに気になったから。


そういえばさっき、ラックを倒したときにびっくりして漏らしちゃって、おまた周りが気持ち悪い。


うずくまって泣いてる途中で吐いちゃって、シーツもその下も汚れちゃって、臭くて気持ち悪い。


でも、もうダメだ。


僕はもう、取り返しの付かないことを――――


――――ばんっ。


「!?」


びくっ。


「ひぅっ……?」


突然の音に、体が跳ねる。


理解できない事象に、一瞬だけ体が動きを停止する。

動物的な本能として、何があったのかを五感で嗅ぎ取るための本能。


【草】

【草】

【かわいい】

【かわいい】

【急にかわいくなった】


【一瞬で泣きやんだ】

【きょとんとしてる】

【かわいい】

【泣きやんだ!!!】

【感動した】


【もしかして:猫だまし】


【あー】

【あー】

【ギャン泣きしてる子供でも、完全に不意打ちな音とかで一瞬でも泣きやむからな】

【一瞬だけだけど、その一瞬で気を引けるんだ】

【なるほど】

【かしこい】


【あ、でもやっば、ドアの足元に誰かの足が……スカート……?】

【靴を履いたまま……脱ぐ手間も投げ捨てて駆けつけてくれた?】


「はぁっ、はぁっ……」


僕は何が何だか分からないままに、開けられたドアの先の姿を――見上げる。


「……ゆぅ、かぁ……?」


「――こはね、さん」


【お姉ちゃん!?】

【妹ちゃんでは?】


【※身長差】


【※声の年齢差】


【※清楚さ】


【※かわいさ……は身長のせいで見えないけど、絶世の美人さんだってこはねちゃんが言ってました】


【※こはねちゃんのお姉ちゃんなら……遺伝子的にやべえぞ】


【※声がハスキーっぽい?くてかわいい】

【↑分かる】

【↑ささやかれたいよね】

【↑分かる】


【草】

【草】


【これはまさか……】

【あのお人では……!?】

【先ほど早退されたのは、まさか……】


【くわしく】

【ステイ】

【リアル知人はお口チャックだぞ】

【そうだぞ、妹ちゃん?お姉ちゃん?のことを思うならな】

【情報って知り合いから漏れるものだからな……書き込むんじゃないぞ】


どさっ。


鞄を――ああそうだった、高校に入ったとき、新しい鞄も見せてもらったっけ――床に落とした優花かもしれない人が、部屋の入り口まできて――足を止める。


「うぇ……」


なんで?


「えぇぇぇ……」


なんで入ってきてくれないの?


「あ……」


――違う。


優花は――僕を見ながら、目を見開きながら、泣いている。


僕を見て、手を伸ばしかけて――でも。


つま先が、ドアのフチから踏み出そうとして、止まっている。


入れない。


――そうだ。


僕が、僕が入るなって言ってきたから。


でも、こわい。


こわいんだ。


だから――――――――僕は、脚に残った力を、全部こめて立ち上がって、


【!!!!!】

【こはねちゃんが……!】

【立った!】

【こはねちゃんが立ったぞ!】

【感動した】


「んしょ……んしょ……っ」


転ばないようにベッドから降りて、


【あとちょっとだ】

【がんばれ】


【あの、なんで下はいてない……】


【!?】

【ぎ、ぎり見えなかったからセーフ……?】

【暗いからセーフ! どっちでもセーフ!!】

【BANされるようなこと言わないで!!】

【草】

【もしや、パーカーしか着てない……?】


【おい、そんなことよりこはねちゃんが――】


ぽて、ぽて。


足元に散乱したいろんなもの――中には割れて飛び散ってるビンもあるから、足の指先を、小さな指先を見ながら、転ばないように手を広げて歩いて――


「――ゆうかぁぁぁぁー……」


――――――――ぽふっ。


僕は――――――――安心できるようになった。


「……帰ってきましたよ、こはねさん」


ああ、そうだ。


これは、優花だ。


人の、柔らかさと温かさだ。


「あ゛ぁぁぁぁん……ゆ゛う゛がぁ゛ー……」


「よしよし……良い子、良い子でしたね……」


――なんで僕のことを「こはねさん」って呼ぶのかはわからない。


けど、もうそんなのはどうでも良い。


優花だ。


妹の、変わらない匂いだ。


毎朝ふわりと漂ってきた、あの匂いが――こんなに、濃いんだ。


汗。


小さいころからずっと嗅いできた、彼女の匂い。


小学校高学年から臭くなくなった――制汗剤を使うから最近は嗅がなくなっていた、「妹」の匂い。


安心する匂い。


「ぁ゛――――――――……」


「はいはい、好きなだけ泣いて良いですからね」


上着は着ていないのか、セーターで柔らかい優花。


飛びついちゃった場所が場所らしく、顔の両方から包んでくる、あったかくて柔らかい塊。


本当はこんなところに抱きついたりなんかしたらダメだったはずなのに、今の僕はそれがなんでか分からなくって、どうしてもこの柔らかい場所にうずもれたくって。


「ぁ゛ー……」


その柔らかくって優花の匂いのする生地の中で息をしながら声を上げる。

それが、とても心地よくって。


「くすっ……赤ちゃんみたい」


【ぶわっ】

【ないた】

【感動した】


【1時間を超えるガチ泣きと自傷で心が潰れてたのが回復していく】


【魂が回復していく……】

【不整脈が止まった……ふぅ……】

【↑待て、心臓を止めるな、死ぬぞ】

【大丈夫、より強靱な心臓を得たから】

【草】


【冗談が出るほど視聴者たちも回復してきた】


【ああ……】

【良かった……良かった……】

【もうボロ泣きすぎて】

【今日はもう外出られないわ、これ】

【わかる】


【妹ちゃん(仮)が偶然?にドアのとこで止まってくれたおかげで、こはねちゃんが抱きついてても顔が映ってなくてギリセーフ】


【感動した】

【偶然……いや、それとも……】

【どっちでもいい、こはねちゃんがようやくに……】


【なかないで……いや、いっぱいないて】

【そうだ、もう泣いても誰も心配しなくなったんだよ】

【ぶわっ】

【お姉ちゃんが来てくれたから、もう大丈夫だよこはねちゃん】


【介護班、ミッションコンプリート】


【「エスコート作戦」、終了です】

【ひより「みなさん、お疲れ様でした」】


【これより次のフェーズに移行します】

【了解】


【介護班……!】

【え? 介護班って】

【マジでなんか動いてた!?】

【なんかそれっぽいことつぶやき合ってるおかしなやつらじゃなかったのか……】

【その発想はえぐい】

【人の心、産まれたときに落っことしてきたって良く言われない??】

【草】


【ああ、介護班たちが妹ちゃん……お姉ちゃん?に連絡取ってくれたのね】


【感動した】

【これは役に立つ介護班】

【介護班……これ以上なくぴったりなネーミングだな】


【画面で心を痛めるしかなかった俺たちとは比べものにならないくらいに有能な介護班……それに比べて俺はただただ真っ青になって会議も放り出してその会議がされるはずだった会議室に鍵閉めて閉じこもってた、とんだゴミ虫だ……】


【草】

【草】


【あなたは……まさか、今、役員たちが総出で説得を試みている、会議室に閉じこもって出てこなくなった上司の方では……?】


【とりあえず今すぐ顔を出してください! それかせめてチャットに反応して! タイミングが悪すぎて、まるで命をもって償おうとしているかのような捕らえられ方してて……あっ、警察……】


【あっ】

【草】

【草】

【かわいそう】

【タイミングって大切よね】

【でもお仕事しようね】


【今からでも外に出て謝ろうね】

【か、家族の誰かが大変なことになってたって言えば良いから……】

【そ、そういう日もあるよ……うん……】





「ぐす……」


「……皆様、こはねさんの姉……いえ」


「うぇ……?」


妹の胸元で盛大に泣きじゃくり、気がついたら彼女のセーターは僕の液体でぐしょぐしょになっていて。


でも、今の僕は疲れ切ってて、謝ることもできなくて。


そんな僕は……彼女にうながされたらしく、気がついたらパソコンの前まで来ていて。


ちらりと後ろを振り返る。


散乱していた室内に、道ができている。


……なんで優花は、服をつまませてくれてるのに、顔、背けてるんだろう。


もしかして僕のことが嫌いに……


「ふぇ……!」


「だ、大丈夫ですから――――――――あっ」


「ふぇ……?」


優花の変な声に顔を上げる。


……優花が、「僕の先」を見て冷や汗をかいている?


【あっ】

【あっ】

【草】

【やべぇ、超美人】

【JK!!!】


【あとおっぱい……】

【※こはねちゃんの涙とか鼻水とかまみれです】

【むしろ興奮する】


【ふぅ……】

【投げ銭貯金しました】

【とりあえず今日だけで33万貯まったぞ!】

【えぇ……】


【あーあ、こはねちゃんがぐずるから妹ちゃん?の顔が】

【今思えば絶妙に画角に入らないようにしてたのに】

【なだめるために屈んじゃったから……】


【部屋の入り口でこはねちゃんお迎えして、なでなでなだめて10分くらい……そこからこはねちゃんをそっと誘導しながら、ぎりっぎりこはねちゃんがしがみついて話さないおっぱ胸元でセーフだったのに……】


【もうだめだ……】

【草】

【あーあ】

【欲望がにじみ出て居るぞ草】

【こはねちゃんのお耳まで隠れるましゅまろ……ふぅ……】


【泣いてたのに笑っちゃうわこんなもん】

【分かる】

【こ、こはねちゃんのガチ泣きの代償だから……】


【悲報・こはねちゃん、顔バレとガチ泣きの次は妹ちゃんの顔バレまでやらかす】


【草】

【草】

【こはねちゃん……どうして……】

【泣きやんでくれた代償は妹ちゃんまで顔バレか……】


【で、でも、顔だけなら……ほら、部屋も暗いし……】

【昼間なのにカーテン閉めてた引きこもり特有の行動が役に立ったな!】

【草】

【け、結果的には本当に、暗くて画質も落ちてるから……】


【あっ……部屋の先の鞄……校章?が……ほら、廊下は明るくて……】


【あっ】

【草】

【悲報しかない配信】

【妹ちゃんかわいそう】

【妹ちゃんっていうかお姉ちゃんっていうか】


【てかこの身長差……どう見てもやっぱこはねちゃん小学生だって】


【※部屋中に酒瓶が散乱してます  こはねちゃんが暴れたから】


【※とくとくこぼれてるのもあるので、たぶんガチで飲酒してます】


【※この酒瓶を全部、中身がジュースって言い張るのはさすがに無理です】


【※飲酒幼女です】


【※未成年の飲酒は法律で禁止されています  本人はお巡りさんに叱られ、保護者は最悪の場合逮捕です、保護者の義務がなんちゃらで】


【※この配信、普通に通報とかされてます】


【あっ】

【草】

【草】

【もうだめだ……】


【こはねちゃんはおしまい!】

【ついでに妹ちゃんもおしまい!】

【こはねちゃんのご両親もおしまい!】

【全部おしまいで草】


【同接が過去最高なのに、どうしようねぇこれ……】

【しかもほとんど全てが祝福ムードだった中でこれとか】

【あーあ】

【こはねちゃん……どうして……】


【一難去ってまた一難とはこのことか】


【※こはねちゃんは大丈夫になったけどお姉ちゃんが修羅場です】


【※これからお姉ちゃんとかご両親に全部乗っかってきます】


【草】

【かわいそう】

【ここからはお姉ちゃんさんを慰める会か……】


【泣き叫ぶこはねちゃんを耐えるのに比べたら何ともないな!】


【それはそう】

【確かに】

【なんか安心してきた】

【分かる  さぁ、ぺろぺろしようか……】

【草】


「新規こわい……けど、できたら最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】とか応援コメント、まだの人はブックマーク登録してぇ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最後の最後で妹ちゃんも顔バレで騒動に新たな燃料投下で続きが楽しみです! 上司の人何やってるのwwwwww こはねちゃんの諸々の言動かぁいい!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ