19 大成果の二次ダンジョン探索 尾行組の大誤解 イジメ三人組は大後悔(フォト絵)
巫っ子『今日も大成果だったね!』
剣奈は上機嫌で話しかけた。
オガミ所を出た剣奈たちは「小川谷林道」に入り階段や山道を進んでいた。狭い谷沿いの道でロープ伝いの場所もあった。滑りやすい箇所が何か所もあり、玉藻は剣奈を気遣って進んだ。
しかし。
巫っ子『これぞまさに冒険!ほんとに探検してる感じ』
白蛇『気を付けるのじゃぞ?谷に落ちたら大けがじゃぞ?』
巫っ子『大丈夫。その時は剣気を使ってぴょんぴょんって道に戻るから』
古刀『暢気なものよのう』
金狐『そうね。この場所は「大人同伴で」「無理なら途中まで」って千剣破さんが言ってたものね』
巫っ子『お母さん過保護すぎなんだよ。ケントジャンプ知ってるはずなのに……』
――監視オネエサン&番犬クン
「危ない!あの娘、こんな道なのにぼんやりしてるわ」中川が言った。
「隠密監視なんて言ってられないか?今すぐ保護すべきか?」風見が中川の指示を仰いだ。
「いいえ。いざとなったら「キン」が何とかするでしょ?ものすごい怪力なんでしょ?昨日のSNS炎上案件、「#吉祥寺奇跡の美女」、「#路地裏の女神」、彼女でしょ?」中川が呆然とつぶやいた。
「あんなたおやかな美女がなぁ」風見が呆然とつぶやいた。
――――
二十分ほど歩くと、谷や苔むした大岩、馬頭観音が並ぶ場所に到着した。遠くに「籠岩」が見えた。
巫っ子『あ、あれが籠岩……? なんだ神聖な雰囲気……』
古刀『籠岩は谷の入口を守る霊石じゃと藤倉殿が言っておったの。古より人々が安全を祈ってきた場所じゃと』
白蛇がリュックの秘密の出入り口から剣奈の肩に上った。
白蛇『おお寒っ。しかし神聖な雰囲気よのぉ。岩の「籠」に馬頭観音が並んでおる。静謐じゃ』
金狐『急な階段や谷あいで危ない場所があるから気を付けるのよ?でも……この神聖な気に包まれる時間。いいわね』
巫っ子『うん!来れてよかったよ。冷たい風が気持ちいい。なんかね、ボク、この風に守られてる気がするんだよ』
剣奈たちは籠岩を見上げながらしばらく風に包まれていた。剣奈は深く頭を垂れ、岩に敬意を捧げた。
――監視オネエサン&番犬クン
「あの娘、放心したような目でお祈りをしてずっと岩を見続けてるわ」中川が言った。
「痛ましい。イジメがなくなるようにって祈ってるんだろうか。精神の揺れが激しいな」風見が言った。
「定時連絡でしっかりとPTSD、フラッシュバック、そして精神崩壊の可能性について報告しましょ」中川が思い詰めたようにつぶやいた。
――――
時刻は午後二時を回っていた。バスまではまだ十分時間があった。剣奈はマップに手書きで「梵天岩、籠岩、ともに神聖。見守られている雰囲気を感じる」と一生懸命書きこんでいた。そして顔をあげた。
巫っ子『ではこれをもって、われら第二次ダンジョン探索隊!第二フェーズミッション・オールスリーステップクリアなり!おのおのがたの獅子奮迅の働き痛み入る!』
『『『おう!』』』
巫っ子『まだ時間に余裕がある。したがってこれより日原ダンジョンの再調査に向かう』
『『『おう!』』』
巫っ子『目的は「ガマ石」「獅子岩」「金剛杖」ほか、さらなる観察と発見を目指す!いざ!参るっ!』
『『『おう!』』』
そうして剣奈たちは「ガマ石」、「大宮殿」、「天井知らず」、「賽の河原」、「縁結び観音/十二薬師」、「世紀の大断層」、「獅子岩」、「金剛杖」、「白衣観音」などを再び見て回った。新洞への急な階段「精進坂」では剣奈がダンジョン探索気分に浸って大はしゃぎだった。
◆世紀の大断層 剣奈&白蛇
剣奈は一生懸命手書きのメモをマップに書き込んでいた。「ガマ石、賽の河原、縁結び観音様、獅子岩、金剛杖、白衣観音様、みんなの思念が集まっていそう。思念の繭が形成されやすいかも?」
こうして一行は第二次ダンジョン探索を終え、吉祥寺駅に帰着した。
巫っ子『今日も大成果だったね!』
剣奈は上機嫌でトリニティネットに話しかけた。右手を玉藻とつないで元気よくぶんぶん振り回していた。時刻は十八時過ぎである。
――――
人混みの中、遠くから二人を見つめる三人の少女たちがいた。高瀬彩花、森七海、椎名真由である。三人は昨日、名も知らぬ美女に助けられ、その美女を探し回っていた。そして……。
「あっ!いた!」彩花が叫んだ。
「ホントだ!早く行ってお礼を言わなきゃ!」真由が慌てて言った。
「えっ!まってまって!横にいるの、剣奈じゃない?」七海が青ざめながら言った。
「「うげっ」」
「「け、剣奈の身内ぃ?」」彩花と真由も青ざめた。
「ど、どうするのよ?」彩花がつぶやいた。
「昨日、うちら……死ぬかもしれなかったのに……あの人、迷わず助けてくれたよね……」七海が震え声で言った。
「それなのに…うちら剣奈にあんなヒドいことしてて……どんな顔してありがとうって言えばいいのよ」彩花が唇をかんだ。
「ずっと、あいつのこと見下して、遠ざけて、すごいこと言って、イジメてきて……なのに剣奈の身内に救われてるし……」真由が手を握りしめた。
「ちゃんと謝りたい。でもそんな資格……うちらにないよね……」七海が涙声になった。
「「ありがとう」も「ごめん」も、どっちも言う勇気ない、てか言えない。……あれだけのことしておいて。今更……」彩花が言った。
「情けない。うちら逃げてばっか……剣奈をイジメるのだって……剣奈、全然悪くないのに……ほんとうちら最低……」真由が呟いた。
「だよね……うちらがダメダメで……剣奈はあんな美人で……無邪気で……時々はっとするほど清らかで……」彩花が言った。
「だよね。なんか輝く剣奈が憎らしくて……。落さないとうちらが惨めで……」真由が唇をかんだ。
「結衣もそうだよね。あいつ女王様だから……自分よりも上の存在を認めたくなかっただけだよね」七海が言った。
「なんでうちら、あそこまで剣奈イジメてたんだろ……情けなさすぎ」彩花が悔しそうに言った。
「……だってさ、怖かったもん。結衣に逆らうの。おかしいなって思ってたけど……結局流された」七海がか細く言った。
「剣奈、あの状況でも涙ぐみながらも耐えてさ。こっち攻撃してこなかったよね。あんな運動神経いいんだよ?喧嘩したら、うちら負けてるよね。結衣とは違って、本当にすごい子だよね……」真由が涙ぐんだ。
「結衣の言うままに剣奈イジメて……強いほうの言うなりになって……」七海が言った。
「いじめなんて、したくない。ほんとは最初からしたくなかった……」彩花が小さく言った。
「……きっと、みんな、本当は同じこと思ってたんだよね」七海がぽつりつぶやいた。
三人は顔を見合わせてうつむいた。全員涙ぐんでいた。玉藻と剣奈はどんどん遠ざかっていた。
三人はその場を離れた……
感謝と後悔を胸にしまったまま……




