第7話:推しとお風呂?
その日、悠斗は聖奈ちゃんの部屋でいつもの掃除を終え、胃をキリキリさせた料理のお礼(?)を乗り越えた達成感に浸っていた。聖奈ちゃんの「悠斗君、いつもありがとね!」の一言で、全てが報われる瞬間だ。
「やばい、聖奈ちゃんの笑顔、マジで癒し…俺、このために生きてる…」
ニヤニヤしながらゴミ袋を片付けていると、聖奈ちゃんが突然とんでもない提案をしてきた。
「ねえ、悠斗君。掃除して汗かいたでしょ? 一緒にお風呂入ろうよ!」
「え?」
悠斗の脳がフリーズ。
「一緒!? お風呂!? 聖奈ちゃんと!?」
「うん! だって、私も汗かいたし、せっかく隣人同士だしさ。楽しいじゃん!」
聖奈ちゃんがニコッと笑う。その笑顔があまりにも無邪気すぎて、悠斗の頭がカオスになる。
「うそおおおおおおおおおおおおお!? 聖奈ちゃんと一緒にお風呂!? 何!? 何!? 夢!? いや、夢を超えた何かじゃん!」
悠斗の想像が一気に膨らむ。聖奈ちゃんのエプロン姿を超える究極のシチュエーション。湯気の中でキラキラ輝く聖奈ちゃんの姿、シャンプーの泡が天使の羽根みたいに舞って、二人で笑いながらお湯をかけるシーン…。
「やばい、やばい、やばい! 俺の脳内シミュレーション、フル回転だ!」
そして、当然のように「あそこ」も膨らむ。
「うわっ、落ち着け俺! これは聖奈ちゃんへの冒涜だ! でも、仕方ないじゃん! 男だもん!」
悠斗は必死に理性と本能の間で戦う。
「ほら、悠斗君。タオル持ってきて!」
聖奈ちゃんがキッチンからタオルを手に持って戻ってくる。悠斗は慌ててゴミ袋で股間を隠す。
「う、うん! タオルね! 了解!」
「じゃあ、私先に入るね。悠斗君もすぐ来てよ!」
聖奈ちゃんがバスルームに消える。ドアが閉まる音と同時に、悠斗のテンションが爆発。
「うわああああああ! 聖奈ちゃんと一緒にお風呂! 俺の人生、ここでピーク迎えた! もう死んでもいい!」
想像が止まらない。聖奈ちゃんが湯船に浸かって「悠斗君、気持ちいいよ~」って言うシーン、二人で背中を流し合うシーン、湯気の中で聖奈ちゃんがウインクするシーン…。
「やばい、鼻血出そう…いや、出てる!?」
悠斗は慌てて鼻を押さえつつ、タオルを手にバスルームへ向かう。
ドアを開けると、そこには――。
「え?」
聖奈ちゃんが湯船に浸かってる…わけじゃなかった。
聖奈ちゃんは全裸ではなく、なぜかTシャツと短パン姿で、足だけバケツのお湯につけてる。しかも、手にはスマホがあって、ゲームしてる。
「うそ…聖奈ちゃん、これがお風呂!?」
「うん! 一緒にお風呂って言っても、湯船入るの面倒だからさ。足湯でいいよね?」
聖奈ちゃんがニコッと笑う。
「足湯!? 一緒にお風呂って足湯!? 俺の想像、何!?」
悠斗の頭の中で繰り広げられていた夢のシナリオが一瞬で崩壊。湯気もシャンプーの泡も、背中を流し合うシーンも全部消え去り、目の前にはTシャツ姿でゲームに夢中の聖奈ちゃんだけが残った。
「ねえ、悠斗君。足湯気持ちいいよ。一緒にやろ!」
「う、うん…気持ちいいね…(俺の膨らんだ想像、どうしてくれるんだよ!)」
悠斗はバケツにお湯を入れて、聖奈ちゃんの隣に座る。足を浸けながら、聖奈ちゃんが「うわっ、負けた!」とゲームで悔しがる姿を見る。
「やばすぎじゃん…でも、聖奈ちゃんのこういう適当なとこ、嫌いじゃないんだよな…」
結局、夢のお風呂は足湯で終わったけど、悠斗のニヤニヤは止まらなかった。