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第6話:料理??

その日、悠斗はいつものように聖奈ちゃんの部屋で掃除に励んでいた。ソファの下から出てきた謎の靴下(多分一週間は洗ってない)をゴミ袋に突っ込み、テーブルのコンビニ弁当の空容器を片付け、床に散らばるティッシュを拾い上げながら、聖奈ちゃんの「ありがとね~」の一言で全てが報われていた。

「やばい、聖奈ちゃんの笑顔のために俺、毎日掃除できるわ…」

ニヤニヤしながら掃除機をかけていると、聖奈ちゃんが突然立ち上がった。

「ねえ、悠斗君。いつも掃除してくれてるからさ、今日はお礼に私、料理作ってあげるよ!」

「え?」

悠斗の脳が一瞬停止。

「料理!? 聖奈ちゃんが!? 俺のために!?」

「うん! せっかくだし、隣人同士仲良くね。ちょっと待ってて!」

聖奈ちゃんがキッチンに向かう。悠斗のテンションは天井知らずだ。

「うそおおおおおおおお! 聖奈ちゃんの手料理!? 俺、推しの手料理食べられるの!? やばい、マジでやばい! 俺、このために生きてきた!」

頭の中で「聖奈ちゃんとの晩餐シミュレーション第72弾」が爆速で再生される。聖奈ちゃんがエプロン姿でキラキラ笑顔を浮かべながら、「悠斗君、できたよ!」って料理を運んでくるシーン。もう、想像するだけで昇天しそう。

しばらくして、キッチンから聖奈ちゃんが戻ってきた。

「できたよ~! 見て見て!」

悠斗の目の前に現れたのは、エプロン姿の聖奈ちゃん。ピンクのフリル付きエプロンを着て、髪をポニーテールにまとめたその姿は、まさに天使。いや、天使を超えた何かだ。

「うわああああああ! 聖奈ちゃん、エプロン姿可愛すぎる! 天使すぎる! 俺、死ぬ! 今死ぬ!」

「死なないでよ、料理食べられなくなっちゃうじゃん!」

聖奈ちゃんがクスクス笑いながら、テーブルに皿を置く。悠斗は目を輝かせて料理に注目する。

「やばい、聖奈ちゃんの手料理だ…どんな美味しいものが…って、ん?」

皿の上に置かれた「料理」を見て、悠斗のテンションが一瞬止まる。

そこには、黒焦げの何か(多分オムレツのつもり?)と、ドロドロに溶けた何か(スープ?)、そして謎の緑色の塊(野菜炒め?)が並んでいた。そして、鼻を突く異様な匂い。

「うそ…この食べ物とは思えない匂いは何!?」

悠斗の鼻腔に広がるのは、焦げ臭さと酸っぱさと、なぜか魚臭い何かが混ざったカオスな香り。

「聖奈ちゃん、これ…何?」

「えっとね、オムレツとスープと野菜炒めだよ! 初めて作ったからちょっと失敗しちゃったかもだけど、気持ち込めたから!」

聖奈ちゃんがニコッと笑う。その笑顔が可愛すぎて、悠斗の心は揺れる。

「う、うん…気持ちね…ありがとう…」

「ほら、食べてみてよ!」

聖奈ちゃんがスプーンを渡してくる。悠斗はおそるおそる黒焦げのオムレツを口に運ぶ。

ガリッ。

「うわっ、何!? 歯が折れるかと思った!」

口の中で広がるのは、焦げた苦味と謎の塩辛さ。次にスープを飲んでみる。

ゴホッ!

「うそ、酸っぱい!? これ、酢入れすぎじゃない!?」

最後に緑の塊を一口。

「うええええ! 生臭い! これ、野菜じゃなくて魚の餌!?」

悠斗の顔がみるみる青ざめる。

「どう? 美味しい?」

聖奈ちゃんが目をキラキラさせて聞いてくる。

「う、うん…美味しいよ…(嘘だろ、これ食べても大丈夫なのか!?)」

悠斗は必死に笑顔を作りながら、心の中で叫ぶ。

「聖奈ちゃん、料理下手すぎる! インタビューで『キラキラした部屋』って言ってたみたいに、『私、料理上手だよ!』とか言わないでくれ! 俺の胃が死ぬ!」

でも、聖奈ちゃんの天使のようなエプロン姿と「頑張ったんだから!」の笑顔を見ると、断るなんて選択肢はゼロだ。

「やばい…聖奈ちゃんのために、俺、この毒…いや、料理食べ切るしかない…」

「やった! じゃあ、全部食べてね!」

「うそ、マジで!?」

こうして、悠斗は聖奈ちゃんの愛情たっぷり(味は地獄)の手料理を、涙目で完食する羽目になった。

「やばすぎじゃん…でも、聖奈ちゃんのエプロン姿見れたから、まぁいいか…」

胃がキリキリしながらも、悠斗のニヤニヤは止まらなかった。

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