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第2話:アイドルの現実?

悠斗は聖奈ちゃんとの奇跡的な出会いに心臓がバクバクしすぎて、もはや生きてるのか死んでるのか分からない状態だった。

「やばい、マジでやばい。推しが隣に住んでて、俺の名前知ってて、ブログ読んでて…俺、このまま昇天しても悔いないわ」

頭の中で「聖奈ちゃんとの結婚式シミュレーション第58弾」が再生され始めたその時、聖奈ちゃんがさらっと爆弾を投下してきた。

「ねえ、悠斗君。せっかくだから上がってく?」

「え?」

悠斗の脳が再びフリーズ。

「上がるって…聖奈ちゃんの部屋に!? 俺が!? 今!?」

「うん、ほら、隣人同士だしさ。ちょっとお茶でもどう?」

聖奈ちゃんがニコッと笑ってドアを全開にする。悠斗の視界に、聖奈ちゃんの部屋の玄関がチラリと映る。そこにはピンクのスリッパが並んでいて、壁には小さな星の飾りが貼ってあって、聖奈ちゃんの「キラキラ☆スターライト」の世界観がそのまま現実になったような雰囲気が漂っていた。

「いやいやいや、何!? 何!? 何かの罠でしょ!?」

悠斗の頭の中で警報が鳴り響く。

「これは夢だ。いや、夢でもおかしくない。だって推しの部屋に上がるって、俺の人生の最終目標じゃん! でも待てよ、こんなうまい話あるわけない。隠しカメラとか仕掛けられてて、俺のキモいリアクションが全国放送されるんじゃないか!?」

「どうしたの? 入らないの?」

聖奈ちゃんが首をかしげる。

「う、ううう…入ります! 入らせてください!」

悠斗はおそるおそる靴を脱ぎ、聖奈ちゃんの部屋に一歩踏み入れた。

「うわああああ! 聖奈ちゃんの部屋の空気吸ってる! 俺、聖奈ちゃんと同じ酸素吸ってる!」

「いや、普通に呼吸してるだけだから落ち着いて?」

聖奈ちゃんがクスクス笑いながら奥に進む。悠斗はドキドキしながら後をついていく。

「さあ、ここが俺の夢の国! 聖奈ちゃんのプライベート空間! どんなキラキラした世界が広がってるんだ!?」

期待に胸を膨らませてリビングに足を踏み入れた瞬間――。

夢の様な世界がそこには広がって…いなかった。

「え?」

悠斗の目の前に広がっていたのは、想像とは程遠い現実だった。

ソファの上には洗濯物が山積み。テーブルにはコンビニ弁当の空容器が3つ転がってる。床にはなぜか使い古したティッシュが散乱してるし、テレビの前にはゲーム機のコントローラーがコード絡まったまま放置。壁には確かに聖奈ちゃんのポスターが貼ってあるけど、端っこが剥がれててセロテープで雑に補修されてる。

「え? え? えええええ!?」

悠斗の脳内聖奈ちゃん像がガラガラと崩れ落ちる音が聞こえた。

「聖奈ちゃんって、キラキラのアイドルで、部屋もピカピカで、花の香りが漂ってて、小鳥がさえずってるような…そんなイメージだったのに!?」

「ごめんね、ちょっと散らかってて」

聖奈ちゃんが申し訳なさそうに笑う。

「ちょっと!? ちょっとじゃないよ! 俺の部屋よりカオスじゃん!」

「いや、だって忙しいんだもん。ライブ終わって帰ってきたら疲れててさ、片付ける気力ないんだよね」

聖奈ちゃんがソファの洗濯物を適当にどかして、「座って座って」と悠斗を促す。

「う、うん…」

悠斗は恐る恐る座る。座った瞬間、クッションの下から何か硬いものがゴリッと当たった。

「うわっ、何!?」

引っ張り出してみると、聖奈ちゃんのライブで配られたサイリウムだった。しかも電池切れで光らないやつ。

「うそ、聖奈ちゃん、これ捨てないの!?」

「だって、思い出の品だもん!」

「いや、思い出ならなおさら大事にしまっとけよ!」

悠斗のツッコミが止まらない。

「はい、お茶」

聖奈ちゃんがコンビニの袋からペットボトルのお茶を出して渡してきた。

「え、これ冷たいじゃん。温かいお茶出すって言ってなかった?」

「うそ、ごめん。沸かすの面倒くさくなっちゃって」

「聖奈ちゃん…俺の推し、こんな適当人間だったの…?」

悠斗はペットボトルを握り潰しそうになりながらも、なんとか笑顔を保つ。

「でもさ、悠斗君が隣に引っ越してきたなんてびっくりだよ。ブログ読んでたから、なんか親近感あったんだよね」

「う、うん…ありがとう…」

聖奈ちゃんの笑顔に一瞬癒されるも、目の前の現実があまりにも衝撃的すぎて、悠斗の心はジェットコースター状態。

「ねえ、せっかくだからさ、これからも仲良くしようね。隣人だし」

「うん、うん…ゴミ出しとか手伝うよ…」

「やった! じゃあ、明日のゴミ当番よろしくね!」

「え、もう仕事振られた!?」

こうして、悠斗の「推しの隣に住む夢の生活」は、キラキラした幻想ではなく、超現実的な隣人関係としてスタートしたのだった。

「やばすぎじゃん…でも、なんか憎めないんだよなあ…」

部屋に戻った悠斗は、聖奈ちゃんの散らかった部屋を思い出しながら、なぜかニヤニヤが止まらなかった。


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