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「......」
部屋に戻ったイプシアはローブを壁に掛けソファに倒れ込む。
大陸において、印師という立場は大きい。
魔術、武術、体術。
そういった様々な点を考慮され、上位8名が印師となることができるのだ。
何千万人といる中で印師になれるものは相当な実力者となるのだ。
そして、印師の頂点に立つのが――総印師である。
イプシアの出自は誰もわかっていない。
ただそこにいるのが当然かのように自然に受け入れられていた。
ギルドのシステムにランクというものが存在する。
それはFランクから始まり一般の人であればB、相当な努力をしてAという感じである。
しかしランクはAで終わりではない。
Aまでは独学でいけてもそれ以上のSはそうもうまくいかない。
教えるものが必要となり、AとSではかけ離れた存在なのだ。
S、S1、S2とランクは上がりそして印師というランクが始まる。
イプシアは現状その頂点に立っているのだ。
イプシアの年齢はまだ若い。
15歳という成人さえしてない歳だ。
社会経験がない分余計に責任が重くのしかかるように感じるのだ。
「いぷしあ? どうしたの? つかれた?」
ひょっこりとソファの端から小型の鳥が現れる。
家の守りをする守護鳥であり、メイドのように家の主のお世話をすることもできる鳥だ。
イプシアの場合は、部屋であるが。
「シフォン、確かに疲れたけど、まだ大丈夫......」
とはいえ今のところイプシアは一昨日から一睡もしていない。
一昨日に依頼された遭難者の捜索に時間がかかったからだ。
警備隊にもともとあった仕事らしいが難易度も高く、特徴となる魔力でさえ残っていなかったためギルドに回ってきたという。
そして一般のギルド所属者でも手に負えないと判断した依頼を処理する8課はマスターにその依頼の詳細を回し、総印師であるイプシアに巡ってきたのだ。
「シフォン、マスターから明日からの...いえ夜からの依頼を持ってきて......用意しているはずだから。30分後がちょうどいいはず......」
「わかった」
ソファでそのまま仮眠を取る。
また夜から依頼が続くのだから今の時間を大切にしなくてはいけない。
イプシアの目が覚めると外はとっくに日が暮れていた。
しかし窓から見える月の位置からしてまだ夜は始まったばかりである。
「おきた?」
「ええ.....」
ソファの手前にあるテーブルにはいつもなら依頼の書類の束があることだろう。
しかし今回はたった一枚の紙しか置いていなかった。
イプシアはその紙を覗き見た。