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この大陸にある戦闘職業は大きく分けて三つある。
一つは、民間の警備を担当する警備隊。
二つ目に国単位の警備と戦争を担当する騎士団。
最後に大陸単位で外部の敵、すなわち魔型獣と呼ばれる敵から人を守るギルド。
そして、中でも特殊なのはギルドである。
様々なギルドがあり、それぞれ名称は拠点は違えどもつながりはあるのだ。
「それでは本日のギルド会議は終了します」
その司会の声とともに各ギルドの代表であるマスター、副マスターたちは立ち上がる。
「今回の会議長かったですね......ちゃんと最後まで聞きはしましたが」
「早く帰って書類を処理しなければ.....」
「マスター? せっかくですし休憩しましょうよ〜」
マスターたちの中でも一目置かれるのは彼――ラウ・ペデレンスだ。
序列第一位のギルドであり、総印師がいるギルドとしても知られている”睡蓮”のマスターだからである。
更に歳も若く、以前にラウ自身がかつてギルドで活躍していたということもあるかもしれない。
「帰るぞ」
「ええ〜折角の休みが~」
副マスターの断末魔を最後に二人は姿を魔法によりギルドへと空間転移した。
―――――――――――――
森の深くを魔型獣を追い込むようにして走る。
総印師である彼女の今の仕事はこの魔型獣を討伐することだった。
総印師の長いローブをものともせずフードの隙間から見える金色の瞳は20体余りの魔型獣をすべて捉える。
クラス5”雪華”
名前に雪が着いていながら光属性であるこの魔法は軽々と魔型獣を音もなく仕留めた。
炎型の魔型獣。
魔型獣にはそれぞれ持つ属性があり、それは厄介なことになることもあればこちらにとって有利な状況になることもあるのだ。
『総印師様、依頼は終わりましたか?』
伝言魔法が蝶の形となって彼女に舞い降りる。
その蝶から彼女にとって聞き慣れた声が発声された。
『マスターがお戻りになりました。依頼を達成次第ギルドにお戻りください』
会議のことを受けた様々な報告がラウから彼女にされるのだろう。
「お疲れ様です!」
依頼から空間転移し、一瞬にして第一序列ギルド”睡蓮”本部に戻ってきた彼女を一番最初に出迎えたのは副マスターであるセザルだった。
会議後の書類仕事から抜け出してきた状態にも見える。
「よく......わかりましたね」
転移先のスポットはギルド内部の地下であり、人通りも少ない場所だ。
偶然、スポットに副マスターがいたとも言えるがセザルの性格からして総印師を待ち構えていたのだろう。
遊び心があるのだ。
「勘です、勘。流石に転移先を完全に把握することはできませんからね」
「......」