1節 最後の会議−Re ①
「それが、この世界の末路だ」
エイジが話し終える。その場の空気は、通夜のように暗く澱んだものだった。
「厄災……」
「全滅って……そんな」
「ああ、オレの目の前で、君達は全員死んだ。その事実は、変わらない。今でも、目の前にいる皆が、現実逃避したオレが作り出した虚像にしか見えてならない」
あまりに残酷な結末に絶句する。だがそれ以上に、この部屋の空気を最も重苦しくしているのはエイジだった。
「オレは守れなかった……その事実から、オレは逃げたんだ。こんな卑怯な手を使って」
深い絶望と強い悔恨が滲み出る。その雰囲気に、親しき皆ですら、どう声をかけたもの分からない。
「けど、逃げたところで……このままじゃ何も変わらない。また全員死ぬ。あんなのに、どうやったって勝てるわけがないんだ」
「で、でも! 水神を倒さなければ出てこないかもしれないんでしょ⁉︎」
「どうやって? 倒さずに止めるっていうんだ」
返答に窮する。彼と同じ経験をしたわけではなく、これから先起こることは全て伝聞。彼ほどの特殊能力もなく、機転も利かない。そんな皆に、その状況を覆しうる力はなかった。
「手詰まりだ。しかも、こうして悩んでいるうちに、水神は今にも目覚め、迫ってくる。迎撃の準備をしないと……」
頭を抱え、机に突っ伏した。どのように思考を巡らせても、あの状況から脱却できるビジョンが浮かばない。
正気を取り戻させるだとか、再封印するだとか。手段は思い浮かんでも、過程が見えない。
「こんなのどうしろっていうんだ。そんなの、あの時いなかった、神やら外部の存在やらに頼るくらいしか__」
それを口にしたところで。突如として、異様な眠気に襲われる。
「悪いな。ちょっと行ってくる」
彼女が呼んでいる。気付いた彼は、それに身を委ね、倒れ伏した。