俺がストライキをする!
今回は異世界ものです。よろしくお願いします!
俺はこの国の皇太子だ。うん。長子だ。もう19才かなぁ?
しかし、陛下は俺の母親が亡くなると後妻を娶った。政治的に皇后がいた方がいいんだろうが。
陛下はその皇后に首っ丈(俺は密かに皇后は禁忌魔法である、魅了魔法をもちいているのでは?と思っている。)。政務が疎かになる事もしばしば。
俺は邪魔ものとして、王城の敷地内の塔にほぼ幽閉されている。10年以上。
3食はきちんと送られるので(生だが)、食に不自由しない。
おかげで、スキルとして家事全般をマスターした。生の野菜は食べられるが、肉は・・・。
ドレッシングが欲しかったりするので、その際には塔を守る護衛騎士のロールに都合してもらう。心苦しい。
皇后が身籠ったようで、余計に俺は邪魔なのだろう。国のトップには我が子を!と躍起になっている。と聞いた。(ロール談)
政治が疎かになっている分は臣下が頑張っているようで、このままではクーデターが起こってしまう。
俺は一念発起して塔から脱出を試みる。
外部の情報は全てロールからだ。
脱出した後は高位貴族の屋敷にかくまわれる予定。
高位貴族とはどこだろう?ロールのサプライズ好きも困る。
この間はケチャップの容器に豆板醤を入れるという非常に手間のかかるサプライズをされた…。
不敬だが、まぁそのくらいの遊び心がないと塔に幽閉されている身としてはね。
辛かった…。こっちはケチャップのつもりだからなぁ。唇が腫れたことだろう。あぁ、必ずや。
俺とロールのエピソードはともかく、俺は塔を脱出した。
ロールはクーデターを起こしそうな貴族をなんとかなだめている、グリフィン公爵家に俺を連れて行った。
グリフィン公爵家でお世話になる。家事全般スキル全開で奉公しよう。礼はつくさねば!
俺は知らなかったのだが、グリフィン家の令嬢と俺は婚約関係にあるらしい。本当に知らなかった。すまない。
エマという名前らしい。母上が亡くなる前に会ったか?覚えていないのは許して欲しい。塔で生きていくのが精いっぱいだったのだ。
エマは非常に賢く美しい女性だった。17才といったか?俺より年下だがしっかりしている。
金髪碧眼、出るとこ出ていて、社交界の華ではないだろうか?
公爵曰く、「殿下が幽閉されて、婚約相手が現皇后の子に変わったのです」
横暴だなぁ。いつ身籠るかもわからない子に婚約者を変えるとはな。はぁ。父上、本当にポンコツになりましたね。
「それはなかったことにしましょう。そもそも俺の考えですが、皇后が禁忌の魅了魔法を使っているのでは?と。証拠はありませんが、それ以外考えられないのです。父上がポンコツになり、エマの婚約者が皇后の都合の良いように変わる…。変ですよね?この後にあるのはおそらく父上の急死、もしくは衰弱。そして政治の実権を皇后が握るのでは?」
「ほう、塔に幽閉されながらそこまでお考えとは、恐れ入りました」
「情報はすべて塔を護衛しているロールからですが、この10年近くで彼をかなり信頼しています。ここに連れて来てくれたのもロールです」
「少ない情報でそこまでお考えとは…」
「あ、夜食に何か作りましょうか?」
「そんなことを殿下にさせるわけには・・・」
公爵があわてて俺を止めた。なぜ?せっかく俺のスキルを披露できるのに。
「料理なら使用人が作りますので、お待ちを」
俺、自分で作るのに…。使用人さんだって夜は眠いよな?あ、高位貴族の使用人は夜勤とかあるんだろうか?
翌日俺は10年ぶり(それ以上か?)に登城した。
公爵の侍従役で、実際に城の中を見ることにした。
何という事だ?あそこにも、あそこにも…なんだかきらびやかなイケメンが!むしろ、侍女がいない!
父上が病弱で実権は義母上が握っていると聞いていたが…これは、皇后のための城か?
これでは政務は臣下に丸投げだろう。
「公爵、これはどういうことだろう?」
「フィリムス殿下が見ているままです。政務は全部我々臣下が行っています。どう(・・)しても(・・・)必要な書類にのみ皇后様に印璽を押していただきます」
なんてことだろう?城が腐ってるというか?別物にされている。権力の乱用…。参ったなぁ。ここまで酷いと思わなかった。最低限侍女はいるのが普通だと思うんだが?
こうなると、義兄弟とはいえ、皇后の子も父上の子かどうか考えものだなぁ。
うーん、国を乗っ取ろうとしてるのか…魅了魔法で。どこで手に入れたのか最低だな。
「皇后さまは以前城で働く侍女だったと思いますが?」
「おっしゃる通りです」
うむ、その時に城の図書室にある禁忌図書を読んだかと。邪な心を持っているものが禁忌魔法が載っている本に呼ばれるというし。
禁忌図書は厳重に保管されていると思うが…?
まずは父上を懐柔だな。そして、さりげなく禁忌図書に近づき、その後はまんまと手に入れ、魅了魔法でガンガン魅了していったんだろうな。コワイ女だよ。
「公爵!魅了魔法を解く術はあるのか?」
解かれた後、城で働くキラキラしい若人は落ち込むだろうな…。
「禁忌図書に記載されているかと…」
うむ、皇后の元にあるんだな?多分。魅了魔法をマスターしたからって捨てたりしてないといいんだけど。
「殿下!皇后さまのゴミ箱にこのような図書が!!」
ロール―――――――!!まさに話題にしてたやつだよ!皇后禁忌図書を捨ててるし。ダメじゃん。
えっと、俺が見ても大丈夫だよな?王族だし?
こうして俺は魅了魔法を解く魔法をマスターした。対魅了魔法とでもいうべきか?
まず、父上の魅了魔法を解こう。
公爵の侍従として父上には会えるだろうか?もう10年近く会っていないが?
「皇后さまにおかれましては、ますますご健勝。それに美貌。喜ばしく思います」
公爵すごいな。確か、禁忌図書に美貌をアップする魔法もあった。
「陛下の容体が芳しくないと聞きました。畏れ多くもこのグリフィン、陛下を見舞いたく存じます」
ん?皇后が俺に気づいた?
「ならん!陛下は絶対安静じゃ!」
ちっ、ガードが堅いな。公爵にここは引き下がると合図をしてその場を後にした。悔しいから美貌でも元に戻してやろうか?と思ったが公爵に止められた。
公爵家に戻って俺はこっち(対皇后派)にどのくらい人がいるのか、公爵に聞いた。
「主だった高位貴族はこちらです。あのような城になり、政務は臣下にほぼ丸投げでは誰もついて行きません」
そうだろうな。俺だって、あんなの嫌だ。あの皇后の息子は、あ、義理の弟か?はあの状況どうなんだ?禁忌魔法でどうかしてるんだろうか?
「俺は思うんだが、皇后が産んだ王子は父上の子だろうか?城をあのようにする女の子供が父上の子供とは100%言いきれないと考えるんだ」
「殿下のおっしゃる通りで、臣下の中にもそのように陛下に進言した者もいますが、その者は辺境の地へ左遷されました」
何という事を!まぁ、左遷した段階では現在のハーレム城は見ていないだろうから、そのような処置をしたんだろうけど。
うーん、武力では面倒だな。血が流れるのは本意ではない。
皇后に関わること(皇后に関わる予算とか衣食住)のみストライキをこっちの貴族が起こすのはどうだろうか?全員辺境に飛ばすとなると、場所もお金もかかるし、行動自体不審。むしろ何故ストライキを起こされたのか?と考えるのが自然だ。
領地に被害を出したくないので、そちらに関わることはきちんと仕事をしよう。
どう出るだろう?
このストライキに参加する貴族には予め魅了魔法が効かない魔法をかけておいた。
どういうこと?私はキレイな洋服に豪華な食事、美麗な男に囲まれて生活するはず!
なのにどうして?はあ?皇后様関連の予算などはストライキに入りました。と、通達があった。
はあ?どこの貴族?そいつも魅了魔法でちょちょっと細工をして予算も多くしてもらおうかしら?
「ストライキ中なので、出来かねます」と断られた。
この私が?なぜ?魅了魔法使ったのよ?どんなにカタブツなの?私の魅了が効かないって男としておかしいんじゃないの?
他の事案も私に関わる事のみストライキをしているみたいだけど、誰も魅了魔法にかからないっておかしいじゃない?どうして?
『ストライキの要求は玉座。玉座を殿下へ。正統なる我が国の後継者たるフィリムス王子へ』というのが今回の要求みたいだけど、冗談じゃないわよ?
ずっと塔に幽閉されている王子に玉座を?バカじゃないの?
玉座はこの私のもの。そう、もうすぐ王が亡くなれば王妃たる私が玉座につくの。
そして、後継は私の子アリムスよ。決まってるのよ!
しかしながら、予算は通らない。故に食事のレベルも下がる一方。皇后のイライラはつのれども、現状はどうにもならない。
このストライキをしている貴族を辺境に左遷する財力もない。
仮にあったとしても、今度は中央の政治力が弱ってしまう。そうすれば周りの諸国が攻めてくる、しかしながら参謀になりそうな貴族は辺境なので、なす術がない。
「そろそろ限界でしょう?今までかなり浪費をしてきた皇后ですから。国庫もカツカツでは?」
「フィリムス殿下はお見通しですな(笑)。全くです。予算を組んでもそれ以上に浪費をするので、我々貴族は頭を抱えていました」
国の税金は別に湧いて出ているわけでなく、領民あってのものなのだが。そのことがあの皇后の頭には欠落しているようだ。
「ストライキの要求を飲むわ」―――どうせ塔に幽閉されてい続けた王子だもの。そいつに魅了魔法かけてなんとでも生きていくわ!
「では、この書類に署名を!」
書類には
・皇后の地位を捨てる事
・王子共々王都から出ていく事
・出ていった先は辺境の地である事
・魅了魔法を使った罪として、今後は魔法を使えないタトゥーを手首に入れる事
など、皇后の思惑とは違う今後の予定が書いてあった。
「こんな書類にサインできないわよ!」
「ほぉ、ではストライキは続けると?」
「…」――――なんとかならないかしら?あら、あの護衛騎士使えそうね。
皇后が不敵に笑った。
しまった。と思ったけど、手遅れだった。ロールが魅了魔法にかかった。
「皇后さまのような方にストライキとはおかしな話ですね?」
――――絶対こいつが今回のストライキの穴を私に知らせる。いえ、聞きだす。
「今回のストライキ、領民には被害が出ないようにしているんですよね?流石にお優しいフィリムス殿下ですね」
「そう、領民は普通の生活してるのね?そんな余裕があるなら私の生活の質を上げるよう予算を変えなさい!」
「仰せのままに」
ロール…ショックだろうなぁ。仕方ない!対魅了魔法使ってすぐに元に戻そう。
「嗚呼、フィリムス殿下!申し訳なく!騎士として恥ずかしい!東の方の騎士の礼に則り、ハラヲキッテ…」
「いや、そこまで…」
俺もオロオロしてしまう。皇后は目の前で魅了魔法が解かれて茫然としている。
「あなたがフィリムス殿下なの?」
「そうですよ?義母上。見苦しい様をよく見ました。それから陛下の見舞いさせていただきます。いいですね?」
こうして俺は父上に10年近くぶりに会った。俺のこと、あんまりわかっていなかったが、俺は亡き母上に似ているようで、その面影でわかったようだ。そして魅了魔法を解いた。
父上は城の惨状に絶句した。まぁ、ハーレム城だからなぁ。俺が一人づつ魅了を解いていったが、その度に凹んでいる人間を見た。いったい皇后はキラキラしい男に何を要求していたんだろう?
父上は侍医に診せ、着実に健康を取り戻していった。その間は俺が玉座を守った。父上が完全回復したら玉座は父上に渡そうと思う。
城の中もきちんと侍女が働くようになった。良かった。平常運転。
俺は正式に皇太子になった。幽閉されていた期間が長く大変だが、今は帝王学など勉学の毎日。それとたまにエマとお茶会もしている。皇太子になったついでというかしきたりだろうか?エマとも正式に婚約した。
俺が20才になったら、というのはあとちょっとしたら結婚式という話だ。その準備でも忙しい。
俺は史上初☆家事全般ができる王になるのだ!
イマドキ家事は女の仕事なんて古い!育児は男が出来ないことが多いが家事は違う。
そのようにエマにも話している。
よって、俺が王になったあかつきには多くの城で働く者が職を失うかもしれない。
しかしだ。彼ら彼女らは元王宮勤めという肩書を使って市井で成功を収めてほしい。
あの女が使った禁忌図書は危険なので、焼却処分とした。さらに禁忌図書の閲覧は王族2人の同行を必要とするように改めた。
これで、同じようなことはおこるまい。
時は流れ、俺は23才エマは21才。
子供ができました。父上も大喜びです。
読了ありがとうございます‼
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皇太子のスキルをもっと書きたかったなぁ。