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6 繰り返される不運

 アンドレアと出来る限り一緒に行動、といっても限度がある。

 貴族学院は基本的に一部の必修扱いになっている授業以外は、生徒が自分で受講する授業を選ぶ形式となっている。そして普段から、アンジェリアとアンドレアが貴族学院で顔を合わせる事はほとんどない。選択している授業が違いすぎるのだ。

 アンドレアもそれを理解しており、自分以外の人間とすごせと言ったのだった。


 そんなわけで結局アンジェリアとアンドレアが一緒に動いているのは通学時と食事時ぐらいであったが、頬を打たれた話を聞いた友人たち――特に、同じ授業を取っている事が多いバリーとキャリーという双子の兄妹(きょうだい)たちが気を遣ってくれていたので、たいして恐ろしくはなかった。

 二人は貴族学院の同級生で、貴族ではなく平民である。貴族学院が作られた当初は貴族の子弟のみが通う事が出来たが、現在では身分の保証や学費の支払いが出来れば平民でも通う事が出来るようになっている。二人は祖父が貴族であり、祖父から身分の保証を受けて学院に通っているのだった。


「それにしても良かった。頬の腫れは思ったよりも早く引いたね、アン」

「ええ。本当に良かったわ」


 キャリーの言葉に、アンジェリアも頷いた。やはり、あからさまに頬が腫れ続けているのは少し恥ずかしい。


「あれ以降は来てないんだよな? 一体どこの馬鹿が人違いで頬を打ったんだか……」


 バリーはそうため息をついた。

 キャリーもバリーもアンドレアも犯人を見つけたいと動いているようだが、今のところ特定には至っていない。貴族学院は生徒の数がとても多いので、薄い緑ぐらいの情報だけでは特定に至らないのだろう。

 むしろ、アンジェリアはあの女生徒に再び会いたいとも思っていないので、このまま会わないで日常をすごせる方が良いのだが……。


 ――なんて思っていたのが良くなかったのか。


「貴女ッ、まだハワード様から離れていないそうね!?」


 例の、アンジェリアの頬を打った女生徒がまたアンジェリアの前に現れていた。どうやらアンジェリアが一人になるタイミングを窺っていたらしい。今はキャリーもバリーもいなくて、勿論アンドレアも近くにはいない。幸いにも廊下で、周囲には人がいる。次頬を打たれそうになったなら、すぐに逃げよう。そう決意をしながら目の前の女性にアンジェリアは向き直った。


「この前は突然私の頬を打って逃げていかれましたが、その謝罪をしてくださるのでしょうか」

「謝罪ィ?! ふざけてるの、貴女っ!」


 目を吊り上げた女性の気迫に押し負けしそうになりつつも、アンジェリアは自分を必死に鼓舞して立ち続けた。


「ふざけてなどおりませんわ。私は貴女がどこの家のどなたかすら存じ上げません。私たちはあの時初対面だったはずですわね? だというのに、貴女は初対面の私に対して、突然暴力を振るった。謝罪をしていただけるのならばここだけの話に致しますので……」

「私を馬鹿にしないでちょうだい!」


 アンジェリアの言葉は、かの女性の怒りを買うだけだったようだ。アンジェリアは後退して逃げようとしたが、相手が勢いよく近づいてくる方が早かった。


「お金があるからって……人を自由に操れると思わない事ね! 貴女みたいな守銭奴には必ず精霊様が天罰をくだすのよ!」


 ドンッと肩を押されたアンジェリアは、廊下に倒れ込んだ。様子を窺っていた人の中から、キャアと悲鳴が上がる。淑女とは思えない、重さを感じるようなドスドスという足音を立てて、相手は去っていった。


「……もうっ! 人違いも大概にしてよ!」


 一人取り残されたアンジェリアは周囲からの視線に顔を赤く染め上げながら、そう文句の声を上げるのだった。

◆キャリー・マクドナルド

 貴族学院一年。平民。バリーとは双子。


◆バリー・マクドナルド

 貴族学院一年。平民。キャリーとは双子。

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