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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あとに残るもの

なんちゃってミリタリーなので、細かい部分はスルーしていただけると嬉しいです。

私が初めて人を殺したのは4ヶ月の訓練を終えて、任務に着いた18の時でした。その時の戦争は、武装解除の虚偽申告、そして大量破壊兵器を保持していたことによる進展義務違反をしていた国に対しての我が国の軍事介入によるものでした。敵対国に赴任した日の朝。私は敵を誘き出すために紛争地域の市街地に『撒き餌』をして、それを監視していました。撒き餌に使ったのはなんてことはない普通の弾薬です。この弾薬を拾った者を射殺するのが、私の初めての仕事でした。撒き餌を拾って移動した者は我が国へ、それを使用するだろうと考えて、その行為を止めるために交戦せよという命令があるからです。


私の撒き餌はなんとも人の良さそうな好青年が拾いました。争い事とは無縁そうな細い腕をした二十歳そこそこに見えるその青年は弾薬を拾い、訝しげに見つめて、首をかしげ、周りを見渡して、弾薬を持ったまま一歩足を踏み出しました。それは、交戦の合図でした。私は4ヶ月の訓練で培った技術で、しっかりと狙いを定めて引き金を引きました。銃口から飛び出た7.62x51mm NATO弾は青年の体に吸い込まれるように進み、青年の体に入っていきました。銃弾がヒットした青年は衝撃で体を跳ねさせて、地面に伏せました。その場には青年以外の人間たちも歩いていて、青年が倒れたことと銃声に驚き、恐れ、泣き、悲鳴を上げて建物の中へと逃げていきました。人の良さそうな顔をした青年の顔は命が消えた色をしていました。


初めて人を殺しました。正直な話をすると、弾が青年にヒットした瞬間は恐れや戸惑いよりも任務を成し遂げたという高揚感でいっぱいでした。人を殺すことはいけないことだと幼少から教わってきたにも関わらず、私は人を殺したことに興奮を覚えました。国のため、家族が安心して暮らせるようにするため、様々な理由のもと軍人の道を選びました。私の放った一発の銃弾によって、私の望んだ世界に一歩近づいたのだと確信しました。その日は、その青年一人を殺して終わりました。


夜になり、眠ろうと目を閉じると一発の銃声が聞こえて飛び起きました。敵からの奇襲だと思った私は同僚を叩き起こしました。しかし、複数人いる同僚の全てが、銃声を聞いていなかったのです。私は混乱しました。あれほどハッキリ聞こえたのに、と。パニックを起こしている私は騒ぎを聞き付けた上官に連れ出されました。上官は私の昼間の功績を褒めてくれました。それと同時に話をしてくれました。人を殺した興奮が冷めれば、あとに残るのは人を殺した感触だけだ、と。そこで、私は気づきました。私が聞いた銃声は、昼間に私が青年を撃った銃声と同じものだったのです。


初めて人を殺した日から5年が経ち、私は一線を退きました。一線を退くまでに私は63名を射殺しました。そして、それらの興奮は冷めて、私の手には、目には、耳には、頭には人を殺した感触だけが残っています。夜、眠る度にすがり憑かれるのです。恐ろしい形相をした男が、バラバラになった手足が、頭の割れている女が、悲痛な面持ちで見つめる子供が。全身を這い、恨めしい怨めしいと私の周りを練り歩くのです。共に戦った同僚は、これらに耐えきれず自ら命を経ちました。


私もそのようにしてみようと思います。リボルバーに一発の弾を込めて。

ニコラス・アービングの話を一部元にして作成いたしました。

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