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第二十七話 生存競争

遅くなりました。続きです。

 最初に動いたのは蠍だった。


 蠍は逃げるジーク達には目もくれず、ブオンと風を切り裂く音を鳴らす勢いでその場で一回転をする。


 それは魔法が直撃した後とは思えない淀みの無い動きで、身体の不快を取り除くためが主な行動だった。


 一拍置いて、ガラガラと何かが崩れる音が広場に鳴り響く。


 それは蠍のただの攻撃ですらない行動一つで、広場に設置してあった露店が軒並み倒壊する音だった。


「(まるで弾丸石礫(バレットストーン))」


 ユミルは蠍が一回転した時、その身に纏っていた鎧の表面が剝がれ落ち、細かな破片となって辺りに飛散するのを確認した。


 その瘴気の鎧を即座に礫に変え遠心力を使って放つ動作は流麗であり、熟練された者が使う放出魔法のようだった。


 しかし今のは魔法では無いことをユミルは知っている。


 魔力を直接視ることが出来るユミルだからこそ、その攻撃に魔力が含まれていないのが分かった。


「(範囲重力で対応可能……やっぱり長期戦は不利)」


 魔力を消費しながら戦う人間にとって、瘴気と魔力を併せ持つ魔物との長期戦を挑むのは分の悪い賭けであり、それは()()()使()()()()ユミルにとっても同じだった。


「(仕留めるなら、短期決戦)」


 重力魔法で掌握していた破片を全て砕き無力化してから、当初の予定通りにユミルは反撃に移ろうとする。


「(ーーッ、回避)」


 が、蠍が尾を持ち上げこちらを狙うように鎌首をもたげている姿を確認して、ユミルは急いでその場から離れる。


 魔力が尾に集中している……攻撃がくる。


 ズガン。ズガン。ズガン。


「(こういう戦い方をするの)」


 ユミルが走り出した後に鳴り響くのは、何か硬いものが地に叩きつけられる音。それは蠍の尾から遠心力すら使わずに放たれる、放出魔法もどきが生み出した音だった。


「(連射も可能……遠心力も関係してなさそうだし、本当に魔法みたい)」


 緩急をつけながら地を駆け回るユミル。その前後の地面には、散弾銃のごとく尾から放たれ続ける硬質化した瘴気の破片によって、銃痕のような穴が空いていた。


 どの様な仕組みで放たれてるかよく分からないが、直撃すれば即死。それこそ掠るだけでも四肢の一部を持っていきそうな攻撃だった。


「(動きは視えてる。大丈夫)」


 けれど蠍の繰り返し行われる攻撃は、ユミルに当たらない。


 自傷ギリギリまで強化した身体と重力魔法で生み出した足場を使い天と地を駆け、それでも避けれきれないものを手に持つ刀で払いのける。


 ユミルは己の全てを使って、華麗に避け続けていた。


 そして


「(反撃開始)」


 ユミルはついに討魔を開始する。


指揮(タクト)


 天と地を駆けながらユミルは刀を持っていない手を蠍に向け、指を振るう。


 すると空中に停滞していた二本の巨剣はそれに呼応するようにくるりと剣先を蠍に向け、目にも止まらぬ速さで突撃する。


「(心臓と結瘴の位置は把握完了。でも、まずは機動力を削ぐ)」


 魔物を完全に斃すには魔力の源である心臓か、瘴気の源である体内の結瘴、またはその二つを破壊する必要がある。


 特に等級の高い魔物程、この二つを破壊しない限り斃すのは不可能に近い。


 これは普通の生物とは違う、たとえ致命傷を与えたとしても魔力と瘴気が有れば生存本能によって生命活動を止める事がない魔物の特性によるせいだ。


 ガキィン、ガキィン。


「(予想通り、弾かれた。でも……)」


 ユミルの脚の鎧に覆われていない節を的確に狙った攻撃は、巨体に似合わない速度で反応した蠍の厚い鋏によって、容易く弾かれる。


 しかしユミルの攻撃はこれだけでは終わらない。


「解」


 片手を突き出し拳を開く動作とユミルが解と告げた瞬間から、弾かれ錐揉みしながら宙を舞っていた二本の剣は砕けたようにバラバラになる。


 いきなり砕けるには不自然な程に、細かく均等に。


「再構築」


 そして突き出した拳を今度は握ると、バラバラになったはずの剣の破片は宙でその形を変え、ユミルが指を振るい再び蠍に向かって突撃する頃には全くの別物になっていた。


「模倣『霰』」


 模倣したのは第六等級の放出魔法である霰。それは放った水を凍らせ、氷結したものを降らせるだけの魔法だ。


 最早それは魔法では無くただの自然現象と大差ないが、ただ今ユミルが降らせるのは重力魔法によって加速し指向性を持たせた無数の魔鉄の塊であり、威力も消費魔力も桁違いのものなっていた。


 ギチギチギチギチ。


 避けられない。そう悟った蠍は本能がそうさせるのか警告音のように鋏角を鳴らしながら、厚い鋏を盾の様にして防御姿勢をとった。ご丁寧に身体の節すら全て鎧で覆った完全防御態勢で。


 そして堅牢な盾となった蠍は、降り注ぐ魔鉄の雨を迎え撃つために足を止める。


「(動きが止まった)」


 それはユミルの狙い通りの行動だった。


「(今が好機)」


 今の攻防は持続しない。動きを止めた蠍と降り注ぐ魔鉄の雨がぶつかり合う、けたたましい音を響かせる時間は後数秒程度。


 その僅かな時間をユミルは無駄にはしない。


『妖精の歩み』


 重力魔法で浮かべた瓦礫を足場にして、ユミルは宙に駆け上がる。


 そして蠍を上から見下ろせる位置まで到達すると、アイテムボックスから新たな武器を取り出す。


 それは自身の身長と同じぐらい大きく、また自重も同じぐらいのモノ。


 そしてジークから貰ったお手製プレゼントの一つあり、ユミルの切り札の一つ。


 対物(アンチマテリアル)ライフル。


 ユミルの手にするのはジークのユニーク魔法によって生み出された、異世界の兵器だった。


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