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第二十四話 一歩

遅くなりました。続きです。

 ミサキ達がどうしてこうなったと頭を抱え脇目もふらずに端末とにらめっこをしている間に、気づけば魔導列車はトリアへと到着した。


「これは……壮観ですね」

「うわぁ〜〜! ファンタジ〜〜」

「すげぇな」


 ミサキ達は眼前に広がる満開に咲き誇っている花達をみて、自然と声をあげる。


 ミサキ達の視界に最初に入るのは見上げるほどの聳え立つ巨大な一本の大樹。


 そして次にそれを中心にして綺麗に整地された道に目が移り、至る所に計算されて植えられたであろう色とりどりの木々と花々がまた綺麗だ。


 それは首都ヴァールテクスとはまた違った、前世では決して見ることの出来ない魔法(人の手)によって昇華された自然と文明の調和したかの様な光景がミサキ達の前に広がっていた。


 その光景はミサキ達の先程まで抱えていた悶々とした気持ちを何処かに消してしまうほど、魅力的だった。


「ん。人が沢山」

「だな」

「屋台も沢山?」

「あるな」


 立ち止まったミサキ達を無視して言葉を交わし行くのは、やはり何時も通りのジークとユミルだ。


「じゃ、行こ」

「……全てを制覇するとか言うなよ」

「うい」


 二人はそのまま立ち止まって何やら感動している三人を置いて、出店が多く立ち並んでいる大樹の根本に向かってゆっくりと歩を進める。


「あ、置いてかないでよぉ〜」


 我に返りジーク等に気付いたミサキ達は足早に近づく。


 追いつくとややゆったりとしたユミルの歩速に自然と合わせながら、盲目だと分かったユミルにも会話に参加しやすいように、やれあそこの花が紅くて綺麗だとか美味しそうな食べ物があるだのと、具体的な雑談をし始める。


『にぎやかだね』

『ん。うるさい』

『でも、エミルはきらいじゃない』

『知ってる』


 ミサキ達の活気ある声に雑踏の音。


 花の匂い。


 肌で感じる陽の光。


 そして第六感とも言える、魔力が視える能力によってモノクロームな世界を眺めながら、ユミルはエミルと他愛のない会話を続ける。


『機嫌はなおった?』

『うん』

『そっか』

『それよりも――』


 会話の中に混ぜたユミルの心配事は、二つ返事と伝わる感情であっさりと杞憂に終わる。


 一応、列車内で勇気を出したのに挨拶から失敗の連続だったので少しぐらい不貞腐れているかと思っていたが、そんなことはエミルは微塵も気にしていなかった。


「(他人の視線にも慣れて来たみたいだし、不安要素は無くなってきた。後は……)」


『おねえちゃん! きいてる?』

『ん……ごめん』

『もう。おねえちゃんは、なにをたべるの?』

『んー、どうしよう』


「お肉はある?」


 エミルとの会話から一転、好物が同じであるお肉でも食べようと思い至り、ミサキ達にとっては脈絡の無い質問で割り込む。


「お! なになに、ユミルちゃんは初手からお肉をご所望なの〜? ちょっと待ってね〜」

「そうですね……案内図を見る限り、東側の方にお肉関連の屋台が集中してますね」

「串焼きにステーキ、肉詰めパン……色々あるな」


 ユミルの不躾としか言えない質問に対して、ミサキ達は一切の不快感を表さずに寧ろ嬉しそうにユミルの質問に答える。


 何がそんなに嬉しいのか、ユミルは首を傾げる。


 ただ一つだけ分かるのは。


『……変な人達』

『だね』


 自身に社交性が無いのを、ユミルは自覚している。


 無愛想で無機質。おおよそ人に好かれる要因が少ないと言っていい。


 けれどそれを理解していて尚、ユミルは改善する気が無かった。


 何故ならその方が(エミル)が表に出た時に、有利に運ぶから。


 無愛想で感情の起伏が少なく静謐な(ユミル)であるほど、(エミル)が初心で快活で感情が豊かな愛される存在になれる。


 それは今までの過程において証明されていた。


 唯一の例外はジークやバルド(パパ)などの指で数えられる程度の人達だけで、それ以外の有象無象には明確に差を感じとっていた。


 変な人。


 ジークの旧友だと理解しても、ユミルはミサキ達がどの様な人物か知ろうともしてなかった。


 ユミルにとってエミルが感じたものが全てであり、エミルが興味が無いものはユミルにとっても同じだから。


 無害ならそれで良かった。


 けれど、エミルはミサキ達に感情を持った。姉に一度殺されかけても変わらずに接してくる珍妙な彼等に興味を持った。


 ならばユミルのする事は一つ。


『次はどうしようか』

『うーん。どうしようね』


「あぁ、ユミルちゃんがまた上の空に……」

「もうそろそろ目的地です。お肉、お肉で何とかしましょう」


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