未定
退屈な日常を体現する音が指から流れ出す。
今日は長い。
夕方のピークを過ぎたこの部屋はまるで世界から切り離されてしまったようだ。そんな時にもやってくるのが彼女だったり何だか嫌な予感がする。彼女の勘のよさがうつったのかもしれない。でも、そう思うと笑い飛ばすことができない。何かが来る気がする。店の電話が鳴り一気に現実に引き戻される。
「はい。西野です。」まだ、勤めて3年なのにロボットのように電話口に発する。
「お疲れ様です、アルバイトでお世話になっている山口の母です。あの、娘はしばらくそちらのバイトに行けないと思います」お喋りだという彼女の母は歯切れが悪い。妙な間が空いた。ため息を挟んで「入院したんです」と告げられた。「ご病気ですか?」「いや、違うんです。そうじゃないんです」彼女は見えない何かを振り払うように言った。「事故なんです、事故にあって、植物人間状態なんです。今は今はそうなんです。」「分かりました」ロボットとしては次の言葉が出てこなかった。「あっあの。お見舞いに行っていいですか?よく話をしてたんです」彼女の母はぜひ来て欲しいと病院の部屋番号と来る前に連絡して欲しいと電話番号を教えてくれた。