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不意に、コーラカルの手中の肉塊が蠢いた。
コーラカルは目を見開き、肉塊へ顔を寄せ、「アダン様」と囁いた。少し待つと肉塊が蠢いたのが見て取れた。
まだアダンは生きていた。肉塊の状態になってまだ意識を保っていたアダンだったが、先ほど自分が見ていたものに疑問を抱く暇もなく、全身に激しい痛みを感じた。すでに体が吹き飛んでいるのに「全身」とはおかしな感覚だが、とにかく耐えがたい激痛がアダンを襲っていた。
「アダン様……聞こえますか?」
「……ッ!」
「痛みは当然です、今アダン様の体は崩壊してなお神経が繋がっている……そんな状態です。むき出しの痛覚が傷めつけられているようなものです」
「……っ?」
「アダン様、その疑問も分かります……オー様の胸板を貫いたことを覚えていらっしゃいますか。その他にも……傷の治りが早かったこと、尋常ではない速さで体が動いたこと、人ならぬ視覚……それらすべては神……彼が仕組んだこと、人を越えた絶対的な存在を作り上げ、それを『神』として置き、世界を創り直す……それが彼の望んだことです」
アダンだった肉塊は蠢き、絶え間なく続く激痛に耐えた。
「……ですが、アダン様は不完全です。彼が、神が想定した完全なる姿ならば、瞬時に再生が可能なはず……アダン様、おそらくその姿のままで生きられるのもひと月程度。その間、感じられている痛みは続きます。そして最後には……餓死するでしょう。もっとも、それまでにこの世界は崩壊します……ですが、どちらにせよいつかは終わります」
「……?」
コーラカルは何か迷っている様子だった。激痛の中、先を促すように蠢く手の中のアダンを見て、彼女は途切れ途切れに話し始めた。
「……ひとつだけ、ひとつだけあの男に対抗する術が思い当たります。ですが、その方法を取ればどうなるか分かりません。もしかすると……いいえ、高い確率でアダン様は今以上の苦痛と絶望を味わうことになります。……閲覧や再生、読み取りができる機器が失われた創造物は、誰の目にも触れることはありません」
アダンはコーラカルの言っている意味が理解できなかった。
「たとえ『神』に勝ったとしても、作り物の世界と、本物の世界の狭間に取り残される……それは永遠に続く虚無です。誰とも交われないまま、狂うこともできず、ただただ無為な時間が刻まれる。そんな世界に取り残されます」
「……」
「アダン様……今貴方が感じている苦しみも、痛みも、常人では耐えがたいものです。ですが、いつか終わりが来ます。ですが、もし私の考える方法を実践すれば、それ以上の苦痛が続きます。それも永遠に、『神』に勝っても負けてもです……もしかしたら、その方法が上手くいかず、何もできないかもしれません」
それでもアダンは、コーラカルに方法を教えるよう、激痛が走る肉塊を無理やりに動かした。
「……初めの一撃以降、あの男に攻撃が当たらなくなったのは、アダン様たちA型がそのように作られているからです。というより、それはこの世の必然。次元のずれた創造物が、上位次元の存在に傷をつける事はありません。二次元の絵画に描かれた獰猛な獣は、それを閲覧する三次元の男に、牙を向けることはできません。絵画に手を伸ばし、乾ききっていない絵の具が指先についた。ただそれだけの事なのです」
「……ッ?」
「アダン様、私の記憶を覗いたのですね。そう、私は介助用ヒューマノイド……神を名乗る彼は、かつては私の主人、人間でした。人間を補助するために造られた道具が私なのです。それはつまり、私は彼と同じ次元に存在しているということです。だからこの世界の蟲は私を傷つける事はできないのです」
「……っ」
「そうです、アダン様に私の肉体を捧げるのです。絵画の猛獣が、三次元の肉体を得るということ……非現実的で、成功するか全くの未知数です。ですが、人間から『感情』を抜き取れるのならば、きっと……」
コーラカルは崩壊する世界の真ん中で、静かに目を閉じた。それからゆっくりと瞼を上げ、美しい瞳で肉塊のアダンを見据えた。
「まだこの世界が無くなるまで時間があります……決断する前に、私の話を聞いてくれますか。その間、アダン様が感じる苦痛も増していくでしょう。それ以上の苦しみが、絶望が待ち受けていて、なおあの男と戦うかどうか……話の後でお決め下さい」




