莠コ蠖「縺ョ鬘倥>縺ッ雋エ譁ケ縺ィ蜷後§
アダンは目を覚ました。
目に映るものは、白。
純白の世界だった。
だが、よく見るとそれは白い花だった。
アダンが居るのは辺り一面の、白い花畑だった。
いつの間にここに来たのか。
自分は死んだのか。アダンがそう思ってぼんやりと辺りを見回すと、人影が見えた。よく目を凝らしてみると、それはコーラカルだった。彼女の姿が実体としてはっきりに見え、体の感覚がはっきりしているところをみても、まだ自分は死んでいないようだと、アダンはため息を吐いた。
アダンは自分の体に、外套が張り付いてしまっていることに気が付いた。肘のあたりまで破けた外套が腕に張り付き、入れ墨か何か、奇妙な紋様のようになってしまっている。爪を立て、はがそうと試みるが、外套は血か何かで固着しており、剥がすのは難しそうだ。袖だけでなく衣服のあちらこちらが裂け、体に接着し、脱ぐのは不可能な状態だった。立ち上がると、ぼろになった黒い外套が風に揺れ、まるで死神か亡者のように見えた。
アダンはそのまま、コーラカルに歩み寄り、彼女の足元には何かがあるのに気が付いた。コーラカルはその二つを見下ろし、辛そうに眉を寄せていた。コーラカルの足元にあったのは死体だった。片方は蜘蛛のような異形、もう片方は――。
アダンは思い出した。目の前でマイが死んだこと、そして自分の身に起きたことを。コーラカルは蜘蛛の死体に、人形のように穢れの無い手を乗せ、「強さへの執着を捨て切れなかったのですね」と呟き、目を閉じた。数秒の後に目を開け、黒く焦げた死体へ手を触れ、またきつく目を閉じた。
「マイ様……」
ああ、やはりマイは死んだのだ。
彼女はむごたらしく焼き殺された。そして自分も蟲になり、怒りのままに蜘蛛を殺したのだ。そうなると、なぜ自分は人間の姿に戻っているのか。
「俺は一体……俺は蟲になったんじゃないか」
「はい、ですがあのお方のお陰で……」
コーラカルが指さした先にアダンは目を向ける。
白い花畑の中に、巨大な黒い塊が見えた。
それは巨大な蟷螂だった。
「あいつは……?」
「マンティーデ様……聖堂街の英。アダン様たちの前に、蟲を倒そうとしていた方です」
聖堂街の蟲狩マンティーデ。たった一人で聖堂街を守っていた女傑だったが、ある時を境に居なくなったいう話はアダンも知っていた。だが、そんな伝説じみた存在が、蟲になっているとは思いもよらなかった。かつて純白の鎧を身に纏っていたという彼女だったが、白い花畑の中で佇む今の彼女の体躯は、暗闇のように黒く染め上げられていた。
「あいつに俺は助けられたのか」
「はい、あのお方は蟲になってなお、気高いお方でした」
「だがどうやって」
「それをお答えするのは、終わってからにいたしましょう」
「終わって……?」
アダンが一瞬、コーラカルへ視線を向けている間に、蟷螂アダンのすぐ近くまで来ていた。僅かに驚いたアダンの眼前に、蟷螂はその巨大な鎌を差し出した。そこにはシガールの大ぶりな刀が置かれていた。
「これを使えと?」
蟷螂は巨大な頭部を動かし、静かに頷いた。




