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 静まり返った月明かりの広場に、人影が現れた。

 月の明かりに淡く照らされる顔は人形のように美しかった。

 人影は――コーラカルは、その腕に肉塊を抱いていた。


 肉塊は血を滴らせ、彼女の衣服に赤い染みを作った。

 月明かりに照らされ、その肉塊に人間の頭部と思われる部分が見えた。

 肩から下は蚯蚓ミミズに握りつぶされ、衣服、肉、骨、血が混ざる見るも無残な姿。


 唯一人間の面影を残す顔は死の苦痛に歪んでいた。

 その亡骸は、グリレだった。

 焼け焦げ散らばる蚯蚓の残骸の中、コーラカルはグリレの亡骸を持って進む。


 白く淡い光の中心で、コーラカルはそっとその亡骸を置いた。


 彼女の周囲に散らばる焦げた蚯蚓を栄養源に、新たな蚯蚓が湧き出していた。

 瞬く間に彼女の背丈を越える大きさになった蚯蚓は、コーラカルを見下ろした。


 だが、蚯蚓が彼女に触れることはなかった。

 ずるずると粘液の音を沸き立たせながら、蚯蚓は闇の中へと消えた。


「ああ、貴方も先立たれてしまったのですね」


 コーラカルは抑揚のない声でそう言うと、死の恐怖で見開かれたグリレの目を、人形のように穢れのない指でそっと閉じた。それと同時にあれほど苦痛に歪んでいたグリレの顔が、眠るような安らかな顔へと変わった。

 コーラカルはグリレに倣うように目を閉じ、彼の死を悼んだ。彼女の顔にほんの僅かだが感情の色が浮かび上がった。だが、目を開くと同時にその色は消えうせ白く無機質で美しい顔に戻った。


 静寂の中、わずかに聞こえた自身を呼ぶ声を聞き取ると、コーラカルは立ち上がった。グリレの死体を見下ろし、もう一度目を閉じてから、自身の名を呼ぶ闇の中へと消えていった。

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