神、カイデーの問答
「汝、おっぱいは好きか。」
突如として降臨した神、カイデーは僕に問うた。
この質問の答えに、僕は悩んでいた。
答えはいうまでもなく、是。
なにも迷うことはない。
問題なのはその答え方である。
さながら某スポーツ漫画の主人公のように
「はい。男ですから。」
と、爽やかに語るもよし。
「ああ、それだけなら誰にも負けねぇ。」
これも悪くない。
だが、愛するものを語る際に何かの引用を用いるというのは、僕のポリシーに反する。
どこか、矜持に欠けるのだ。
言葉というのは時に歯痒く、その不完全さを嘆かずにはいられない。
こんなにも伝えたい想いが溢れているのに、言葉にしようとした途端それは陳腐な、チープな響きとなって、自分の表現力のなさ、語彙の少なさに虚しさを覚える。
そしてその虚しさは大きな波となり、怒涛に飲まれた僕の感情は涙に変わり、その場に泣き崩れた。
「なんとも嘆かわしいことだ。そなたのような純粋なまでの信仰者も、昨今ではごくわずかとなってしまった。清純な心ゆえ、現代の下界での生活はさぞ心が痛むことだろう。」
「あなたは一体...?」
「我が名はカイデー。数ある神話からその名を抹消されし、古の救済者である。」
「神様...?」
「ああ。本来、天界での隠居生活を余儀なくされた身ではあるのだがな。そなたのように、救済を求めるものがいる以上、見捨てるわけにはいかないのじゃ。」
「カイデー様...。
僕、悔しいんです。
こんな簡単な質問に、胸を張って答えられない自 分が。なんて不甲斐ない。僕にできることは、た だその悔しさに歯を食いしばり、地にひれ伏して 涙を流すことだけ...。
こんな...こんなはずでは...。」
神を名乗る男に差す後光はただ、眩しいだけでなく、悲しみを優しく溶かすかのように、僕の体を優しく包み込んだ。
「汝、おっぱいは好きか?」
その問いの答えを見つけるべく、僕とカイデー様の物語は幕を上げた。