奴隷、はじめます! (1)
「――入って」
奴隷になると宣言すると、アルハはアドルフの寮の部屋に案内された。
「で……ご主人様、あたしは何をすればいいんでしょう?」
「部屋、見ればわかるだろ」
アルハは、部屋の中をぐるりと見渡してみた。
室内には、まず、作り付けの机があった。机の上には、乱雑に本が積み上げられている。
大きな本棚が一つあって、それにも本がびっしりと並んでいた。
窓や床は随分掃除をしていないのか、埃が積もったりしている。
その他には、簡素な生活用品類と、そして、――一人部屋には不似合いな、大きなベッド。
……大きなベッド!?
「ああ、奴隷ってそういう意味の……」
……グッバイあたしの貞操。
あ、でも、こんな格好良い人相手なら、それもいいのかも……。
「……何か勘違いしてるだろ」
はあ……とため息をついて、アドルフはこう言った。
「掃除。五分で」
「えっ」
「出来なかったらクビ」
アルハは覚悟を決めた。
「――わかりました。掃除用具はどこにありますか?」
「部屋の隅」
日用品に混じって、ほうきとちり取りが置いてあった。
「これじゃ足りないですね……あたしの部屋から持ってきますね。【転送】」
アルハが短い呪文を唱えると、室内に掃除用具が現れた。はたき、雑巾、エトセトラ。
「【掃除・窓】【掃除・床】【整頓・机・本棚】……」
続けて、呪文を三つ。
自動で動く掃除用具によって、みるみるうちに部屋は綺麗になっていく。
「……これで、九六位?」
「あたし、こういう日常の魔法は得意なんです」
アルハは、ご主人様に向かってドヤ顔を決めていた。