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第3回 イタリア語

1 導入



 イタリア語はインド・ヨーロッパ語族イタリック語派に属する言語で、ラテン語の子孫に当たります。イタリアだけでなく、スイス、ヴァチカン、サンマリノ共和国でも用います。

 発音はかなり規則的で、ドイツ語と同様、ローマ字読みが通じる場合も多々あります。辞書に発音記号が書かれていない場合もありますが、この頁に記載した程度の情報さえあれば、ほとんど困りません。


 イタリア語と同じくラテン語から分かれた言語に、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語などがあり、これらを総称してロマンス語といいます。

 上記の言語は、語()や文法がとてもよく似ているとされます。1つ学習したら、「行き掛けの駄賃」に更に2つ3つ学ぶ人もざらにいます。

 よくテレビで、「フランス語とイタリア語とスペイン語が話せます」と言う人に対し、芸能人が「おおーっ!」と驚く場面が見受けられます。が、それは日本人が想像するほど困難なことではないようです。


 イタリア語の標準語は、中部のフィレンツェ周辺の方言を元にしているそうです。が、地域によってバラつきが大きく、特に南部と北部の隔たりが顕著だといいます。

 面白いのは、南部の人々の間で、中部ではなく北部の方言を「標準的なもの」として取り入れる傾向が生じている、という点です。北部が経済的に優位であることと関連しているとか。

 そのため教科書も、標準語でケース・バイ・ケースとされている事項を、北部の方言が一律に処理している場合、「とりあえず北部方言に従っておけばOK」と書いていたりします。




2 文字



 ラテン文字を使用します。うちj、k、w、x、yは外来語と固有名詞にのみ現れ、実質的に残りの21文字だけを用います。


 綴り字記号として、鋭アクセント(é、óなど)と重アクセント(à、ì、ùなど)を使います。フランス語と違って、アクセント(→7)の位置を示します。ただ、全ての単語で、アクセントのある音節にアクセント記号を付ける訳ではありません。

 鋭アクセントと重アクセントのどちらを使うかは、母音の種類に応じて決めます(→7)。




3 母音



 母音字はa、e、i、o、uの5つです。概ね、日本語のア、エ、イ、オ、ウに相当します。曖昧母音は無く、アクセント(→7)が無い母音もはっきり発音します。


【a、i】日本語のアやイとほぼ同じ。


【u】口を尖らせてウ。


【e、o】

(1) アクセントが無ければ、常に閉口音。

(2) アクセントがあると、閉口音で読む場合と、開口音で読む場合があります。開口音のほうが多いです。

 どちらで読むかは地域によって異なり、さしあたり区別しなくても通じるといいます。また、そもそも日本語に開口音と閉口音の区別が無いので、カナ書きするだけならeはエ、oはオで大丈夫です。


 イタリア語には、二重母音と三重母音が存在します。

 二重母音は必ず、iとuのどちらかを含みます。三重母音は、最初と最後の母音が必ずiとuのどちらかです。

 iやuが他の母音と隣接しても、必ず二重母音や三重母音になる訳ではありません。その場合でも、(1)iやuにアクセントがあれば、バラバラに発音します。(2)iやuにアクセントが無くても、分けて読む単語も、ごく少数ながらあります。


 いずれにせよ、二重母音や三重母音は綴りの通りに読みます。単母音、二重母音、三重母音のどれに該当するのかによって変わってくるのは、音節の数だけです。




4 子音(1文字の場合)



【b、d、f、l、m、p、t、v】全て英語と同じ。


【c】(1)eまたはiの前ではローマ字のch。(2)それ以外だとk。

(例)Cocito/コチート(【ギ神】コキュトス。アケロンの支流。【神曲】地獄の最下層。ルシファーが氷漬けにされている):1つ目のcはoの前なのでk、2つ目のcはiの前なのでch。


【g】(1)eまたはiの前では英語のj(破擦音)。本来ヂ、ヂェとでも表記すべき音ですが、日本語ではヂとジを区別しないので、ジ、ジェとカナ書きすれば結構です。

(2)それ以外だと、英語のdragon/ドラゴン(竜)のg。

(例)Virgilio/ヴィルジーリオ(ウェルギリウス。古代ローマの詩人。『アエネイス』の作者。【神曲】地獄と煉獄でダンテを案内した)


【h】発音しません。

 cやgの発音が、eやiが後続するか否かで変化するのは、上記の通りです。hは、cやgとeやiの間に入って、両者の関係を解く役割があります。cheはケ、chiはキ、gheはゲ、ghiはギと読みます。

(例)Acheronte/アケロンテ(【ギ神】アケロン。冥府を流れる川。『神曲』にも登場):アチェロンテではありません。


【n】(1)b、m、pの前ではmの音。(2)g、kの前では、英語のring/リング(指輪)のngの音。(3)それ以外だと英語のdemon/デーモン(悪魔)のnの音。

 日本語のンも、後ろの文字に応じて同様に変化します。よって、イタリア語のnをカナ書きする時は、母音が続く場合はナ行、そうでなければンとすれば十分です。


【q】必ずquという綴りで現れます(→5)。


【r】

(1) 二重子音(→6)のrrは巻き舌。ライオンの真似をしてガルルルル……、と言う時の音。

(2) それ以外は、舌先を上の歯茎に当ててはじきます。日本語のラ行は、これに近いといわれています。

 どちらも、カナ書きする時はラ行です。


【s】

(1) 有声子音(b、d、g、l、m、n、r、v)の前では、英語のzと同じ(摩擦音)。

(2) 前後が両方とも母音の場合は、英語のzになる時と、ローマ字のsになる時があります。どちらになるかは単語ごとに決まっており、zになるものが多いです。また、北イタリアでは一律にzとし、それが他の地域にも広まっているといいます。

(3) 上記以外は、ローマ字のs。

(例)musa/ムーザ(【ギ神・ロ神】ムーサ。芸術を司る9柱の女神。英語でミューズ):今回、sは英語のzの音です。


【z】ローマ字のtsになる場合と、英語のgoods/グッズ(商品)のds(破擦音)になる場合があります。

(1) 前後が両方とも母音の場合、前がl、n、rのいずれかの場合、及びzzと2つ重ねて書く場合は、tsになることが多いです。しかし、どれも例外はあります。

(2) zが語頭に来た時、北イタリアでは一律にdsと読みます。これも拡散中。




5 子音(2文字以上の場合)



【gn】nに近い音ですが、舌の先端から半分ほどを、べったり口蓋に付けます。ニャニュニョでカナ書きします。

 実際ニャニュニョに非常に似ていますが、ローマ字のy(半母音)は含まず、これで1つの子音です。しかし、単に「ニャ行」と説明する教科書がむしろ大半です。

 フランス語のgn、及びスペイン語のñ(エニェ)と同じ発音です。

(例)Carlomagno/カルロマンニョ(カール大帝)


【gl】

(1) iが後続する場合に限り、glの2文字で1つの音を表します。

「ニ」と言う時のように舌の先のほうを口蓋に当て、その状態で「リ」と言おうとします。リともギともジともつかない音が出ます。

 スペイン語のllと同じ音です。

 iに更に母音が続くと、gliの3文字で上記の発音になります。敢えてカナ書きするならば、リャリュリョがいちばん近いようです。

(2) glにiが後続しなければ、gとlはバラバラに発音します。


【sc】

(1) eまたはiが後続する場合に限り、2文字でローマ字のsh。iが後続し、それに更に母音が続くと、sciの3文字で上記の発音になります。シャシュショで表記します。

(2) scにeやiが後続しなければ、sとcをバラバラに発音します。scとeやiの間にhがある時も同様で、hは無音ですから、scheはスケ、schiはスキです。


【ci】母音が後続する場合に限り、2文字でローマ字のch。チャチュチョで表記します。


【gi】母音が後続する場合に限り、2文字で英語のj。ジャジュジョで表記します。

(例)Giove/ジョーヴェ(【ロ神】ユピテル。最高神。ギ神のゼウスに相当。【天文学】木星):ジオーヴェではありません。


【qu】qはこの綴りでしか現れません。英語のquest/クエスト(探求)のquの音。

(例)Quirino/クィリーノ(【ロ神】クィリヌス。ローマを建国したロムルスが生きたまま昇天し、神になった姿)


【cqu】母音の後この並びが生じると、kの音の二重子音(→6)になります。




6 二重子音



 イタリア語はドイツ語と異なり、同じ子音字が2つ連続すると、長く発音します。

 z、gn、gl(eかiが後続する場合のみ)、sc(eかiが後続する場合のみ)は、母音の後に来ると、文字を重ねなくても二重子音になります。

 カナ書きする時は、mm、nn、gnならば「ン」を補い、それ以外の子音では「ッ」を補います。

(例)Nettuno/ネットゥーノ(【ロ神】ネプトゥヌス。海の神。ギ神のポセイドンに相当。【天文学】海王星)

(例)Giovanni/ジョヴァンニ(【新訳】ヨハネ。洗礼者と十二使徒の1人がいる。後者は伝統的に、『ヨハネによる福音書』や『ヨハネの黙示録』を著したとされた)




7 母音の長短



 アクセントがあり、かつ開音節にある母音は、長く発音します。

 アクセントが最後から2番目の音節にある単語が、全体の8割を占めます。特に、最後から2番目の音節が開音節である単語は、ほぼ全てそこにアクセントがあります。

 それに次いで多いのが、最後から3番目の音節にある語です。

(例)Orlando/オルランド(【狂えるオルランド】カール大帝の陣営で最強の騎士。フランス語でロラン):アクセントは最後から2番目の音節であるlanにありますが、閉音節なので伸ばしません。

(例)Lucifero/ルチーフェロ(ルシファー。神曲にも登場):最後から3番目の音節であるciにアクセントがある珍しい例。


 2音節以上から成り、かつ最後の音節にアクセントを持つ単語は、その母音にアクセント記号(→2)を打ちます。この場合は短く読みます。

 eやoに鋭アクセント(é、ó)があれば、その母音は閉口音(→3)です。重アクセント(è、ò)だと開口音です。

 a、i、uには、鋭アクセントを使う者も、重アクセントを使う者もいますが、発音に違いはありません。また、重アクセントだけを使用する者もいるようです。

 アクセント記号はその他、同音異義語と区別する、などの目的でも用います。

(例)Noè/ノエ(【旧約】ノア。ノアの箱舟の人):記号のあるeにアクセントがあり、重アクセントなので開口音です。

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