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第1回 ドイツ語

1 導入



 第1弾はドイツ語です。またも、のっけから真打ち登場、みたいな。

 ドイツ語は、インド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派に属し、特に英語およびオランダ語と近い関係にあります。ゲルマン語派には上記の他、フィンランド語を除く北欧の諸言語が属します。

 ドイツ語はドイツに加え、オーストリア、スイス、リヒテンシュタインなどで使用されます。


 ドイツ語はここ数年、アニメやライトノベルなどのネーミングに利用される頻度が、英語を抜きトップに躍り出ているようです。今や、「厨二病患者ご用達の言語」という不名誉な称号を、ほしいままにしている感があります。

 それもこれも、特有の硬い重厚な響きに起因するらしく、そのことを象徴する言葉がかの有名なKugelschreiber/クーゲルシュライバー(ボールペン)なのです。


 文法は難しいと言われますが、発音はかなり規則的で、ローマ字読みが通じることもざらにあります。というより、発音に関しては英語が特殊すぎるのです。




2 文字



 ラテン文字26個に加え、ウムラウトという綴り字記号の付いた母音字3つ(ä、ö、ü)、そしてエスツェット(ß)の計30文字を使います。


 ウムラウトは本来、文法上の規則などの理由によって、母音の発音が変化する現象を指します。転じて、変化後の母音に打つ記号も、ウムラウトと呼ぶようになりました。

 記号の形はトレマと同じです。スウェーデン語などでも用います。

 Ä/äをアー・ウムラウト、Ö/öをオー・ウムラウト、Ü/üをウー・ウムラウトといいます。


 ßは語頭に立たず、大文字はありません。


 名詞は一般名詞でも、語頭を大文字にします。逆に形容詞は、英語のJapanese/ジャパニーズ(日本の)やSpanish/スパニッシュ(スペインの)に相当するものでも、語頭は小文字です。




3 母音(1文字の場合)



 二重母音など(→4)を作る文字の並びが生じなければ、a、e、i、o、uは概ねローマ字どおりに読みます。


【a、i】日本語のア、イとほぼ同じ。


【u】口を尖らせてウ。


【o】開口音のオと閉口音のオがあります。どちらも、カナ書きする時はオ段です。


【e】開口音のエ、閉口音のエ、そして曖昧母音があります。全て、カナ書きする時はエ段です。


【y】ayやeyという綴り(→4)の中で現れます。単独で現れるのは外来語で、この場合は後述のüと同じ音。


【ä】開口音のエ。

(例)Götterdämmerung/ゲッターデメルング(【北神】神々の黄昏。ラグナレクの誤った訳から生まれた言葉)


【ö】閉口音のオを言う時のように口を尖らせ、その状態で無理矢理エと言います。エ段でカナ書きします。

(例)Hödur/ヘードゥル(【北神】ヘズ。因みにヤドリギはドイツ語でMistel/ミステル)


【ü】uを言う時のように口を尖らせ、その状態で無理矢理イと言います。ユと聞こえます。

(例)Walküre/ヴァルキューレ(【北神】戦乙女。英語でヴァルキリー):ワルキューレは誤読(→5)




4 母音(2文字の場合)



【ai、ay、ei、ey】全てアイ。

(例)Einherjer/アインヘリヤー(【北神】エインヘリヤル。ヴァルハラに集められた戦死者の英霊)


【au】先入観なしに聴けばアオですが、カナ書きする時は綴り通りアウとするのが普通。

(例)Faust/ファウスト(中世の伝説に登場する錬金術師。ゲーテの戯曲で有名)


【eu、äu】いずれもオイ。

(例)Teufel/トイフェル(悪魔)


【ie】イー。外来語では、綴り通りイエになることもあります。

(例)Kriemhild/クリームヒルト(【ニベ歌】ジークフリート、のちエッツェルの妻)




5 子音(1文字の場合)



【f、k、l、m、p、t】全て英語と同じ。


【b、d、g】

(1) 語頭にある時、および母音またはl、rの前にある時は、いずれも英語と同じ。gに関しては、magic/マジック(魔法)などの発音ではなく、dragon/ドラゴン(竜)などの音です。

(2) それ以外だと無声子音になります。bはp、dはt、gはkの音。

(3) ただしgは、iの直後で、かつ母音が後続しない場合は、後述(→6)するa、o、u、auの後ろ以外のchと同じ音。

(例)Siegfried/ジークフリート(【ニベ歌】前半の主人公。北神のシグルズに相当):ジーグフリードではない。

(例)Erlkönig/エルルケーニヒ(ハンノキの王。「魔王」と訳されるがサタンではない)


【h】英語のhell/ヘル(地獄)のh。ただし母音の後では発音せず、母音を長く伸ばすことを表します(→7)。


【j】ローマ字のy。

(例)Freyja/フライヤ(【北神】フレイヤ。豊穣の女神)


【n】英語のdemon/デーモン(悪魔。正確にはディーモン)のn。


【r】

(1) 母音の後でなければ、フランス語のrと同じ音か、巻き舌。巻き舌は、ライオンの真似をしてガルルルル……、と言う時の音。

(2) 母音の後では、特に口語において、母音化して単にアと言います。ただし語末のerはエアではなくアー。カナ書きする時は、語末のerをアーとするのを除き、アではなくルと記すことが多いです。

(例)Tarnkappe/タルンカッペ(【ニベ歌】被ると透明になる頭巾)

(例)Fafner/ファーフナー(【北神】ファーヴニル。シグルズに倒された竜)


【s】(1)母音の前では、有声子音になって英語のz(摩擦音)。(2)それ以外だとローマ字のs。

(例)Samson/ザムゾン(【旧約】サムソン。ペリシテ人と戦った民族的指導者)


【v】英語のf。英語のようにvと読むのは外来語。

(例)Parzival/パルツィファル(【アサ王】パーシヴァル。聖杯伝説に出て来る騎士)


【w】英語のv。

(例)Wotan/ヴォータン(【北神】オーディン。最高神)


【x】英語のaxe/アックス(斧)のx。exam/イグザム(試験)のように有声子音にはなりません。

(例)Xanten/クサンテン(【ニベ歌】ジークフリートの故郷)


【z】ローマ字のts。

(例)Ziu/ツィーウ(【北神】テュール。軍神)


【ß】ローマ字のs。なお、ßの前は必ず長母音か二重母音です。


【c、q】後述(→6)するsch、ch、quなどの綴りの中にのみ現れます。

 外来語だと、cは単独で発音されることもあります。読みかたは借用元の言語によって様々です。




6 子音(2文字以上の場合)



【ng】英語のring/リング(指輪)のng。

 語末のgが無声子音になる(→5)のに引きずられてか、ンクとカナ書きするのが見られますが、ングで結構です。

(例)Balmung/バルムング(【ニベ歌】ジークフリートの剣)


【ss】常にローマ字のs。なお、ssの前は必ず短母音です。


【sch】ローマ字のsh。カナ書きすればシャシュショ。


【tsch】ローマ字のch。カナ書きすればチャチュチョ。


【sp、st】語頭にある時に限り、sはローマ字のshの音になります。pやtは普通に発音します。


【ch】

(1) a、o、u、auのいずれかの後では、kに対応する摩擦音。kの音が生じる口の中の奥あたりで、口蓋と舌の間を狭め、その間を息が通過する時に出る音。aの後ではハ、oの後ではホ、uとauの後ではフと聞こえます。chに更に母音が後続する場合は、ハ行でカナ書きします。

(2) 上記以外では、日本語のヒに含まれる子音。ヒは実は、英語のhilt/ヒルト(剣の(つか))のhiではありません。カナ書きすればヒ。母音が後続すれば、ヒャヒュヒョ。

(例)Walpurgisnacht/ヴァルプルギスナハト(聖女ヴァルプルギスの祝日の前夜。4月30日の夜。ブロッケン山で魔女が宴を催す)

(例)Alberich/アルベリヒ(【ニベ歌】小人の王)


【chs】xと同じ(→5)。


【ck】2文字でk。


【dt】2文字でt。


【ts、tz、ds】全てローマ字のts。

(例)Etzel/エッツェル(【ニベ歌】フン族の王。史実上のアッティラ)


【qu】qはk。uは英語のv。


【pf】pとfをほぼ同時に発音する破(さつ)音。fを言う時のように上前歯を下唇に被せておいてから、両唇を閉じ、勢いよくpを言うと、うまくいきます。

 カナ書きする時は、綴り通りプフとすることが多いようです。しかし、fはほとんど聞こえないため、単にパ行で記す立場もあります。




7 母音と子音の長短



 同じ子音字が2つ連続しても、1つの場合と同じように発音します。イタリア語のように長くはなりません。子音字の数は、直前の母音の長さに影響するだけです(後述)。

 しかしカナ書きする時は、あたかも長く発音しているかのように記すのが一般的です。mやnが連続する時はンを、それ以外の子音ならば「ッ」を補います。

(例)Nebelkappe/ネーベルカッペ(Tarnkappeと同じ):ドイツ人には、pを長く発音している感覚は無いようです。


 母音は、二重母音(→4)などを作る組み合わせでなくても、次のいずれかの条件を満たすと長く発音します。

(1) 同じ母音字が2つ連続する時。ただし、iとuが連続することはありません。

(2) 直後にhがある時。この場合hは無音です。

(3) アクセントがあり、かつ、直後の子音字がゼロか1つの時。アクセントは原則として最初の音節にありますが、例外はかなり多いです。

(例)Aaron/アーロン(【旧約】アロン。モーセの兄)

(例)Hagen/ハーゲン(【ニベ歌】ジークフリートを暗殺した)

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