光の国編 Ⅴ
あの約束から9年後ーー
僕は今、訓練をしている。場所は、父さんが治めている領地にある、僕の家の中庭だ。最近知ったのだが、うちのお父さんは公爵家らしい。
「さぁ、シーク立ちなさい。そんなんで姫さまの警護が務まると思っているの?」
「はい!」
そう意気込んで突っ込むが、特段策があるわけではないのですぐにまた吹っ飛ばされた。そして、なぜ僕はこんなことをしているのかということを思案する。そう、あれは3年前ーー
僕はもうその頃には成長し、この世界の言語がある程度使いこなせるようになっていた。この頃のマイブームは体に纏わせる魔力を均一から局所的に変化させ、ハンター×2のゴ○vsゲン○ルー戦を再現することだった。
そして、母さんといつもと変わらずに他愛のない話をしていた。父さんはまだ仕事中だ。
「母さん、今日の晩御飯はなに?」
「今日は、シークの大好物にしようと思うわ。」
「やったー!」
「それでね。シーク、前にお母さんあと4年後にシークを王宮に預けなければいけないことは話したわよね。」
「えっ、聞いてないよ。」
「それでね、なにもできないまま姫さまの護衛は務まらないなぁって思ってね。」
「えっ、母さん姫さまの護衛ってなに?...ねぇ、母さっ。」
「昨日、お父さんと一緒に考えてあなたの今後をどうするか決めたわ。」
やばい。久しぶりに僕の直感スキルが発動してる。これはやばいって。
「ねぇ母さん、そんなことより早く今日の晩御飯の支度しよっ。ね。」
「シーク、明日から特訓するわよ。とりあえず、一年間ぐらいは体力作りで戦闘訓練はそのあとね。」
ダメだったぁ。うちの母さん強かったぁ。というかなんで僕の周りの人はこう強引っていうか、勝手に決めたことを僕に押し付けるんだ。
「というか母さん、体力作りはいいとして戦闘訓練は誰がしてくれるのさ。父さんは仕事で忙しいし、一体誰が見てくれるんだよぉ。」
すると突然聞き慣れた声が聞こえる。
「その点については心配はいらない。なんせファーラは元とはいえこの国の騎士団長だからね。」
「父さん、いつの間に帰ってきたの。」
「いやぁ、出迎えがなくて寂しかったよ。まぁ、いつもないけどね。はははっ。はぁ...。」
「ねぇ、母さん今の話本当?」
「まぁ、だいぶ昔の話だけどね。というわけで、明日から特訓始めるわよ。」
と、そんな感じで始まった特訓という名の地獄は本当にきつかった。その頃から座学も始まったのだが、その点については問題なく算数はもちろん言語学やその他教養も柔軟性に富んでいる子供の脳故、すぐにマスターできた。
なので最近では座学よりも体力作りがメインだったのだが、今日ついにそれが終わりやっと戦闘訓練が始まったのだ。
ちなみに僕の得物は木刀だ。オリジナルスキルに居合があるくらいだから、刀が存在するのではないのかという安易な考えで前に母に刀の有無を聞いて見たところ、存在することが判明した。どうやら、闇の国から発祥したらしい。
しかし、うちの家には刀がなく母の知り合い鍛冶屋に作ってもらったのがこの木刀というわけだ。
「さあ、立ちなさい。シーク。」
「はい。」
(正直、母さんをなめてたな。さすがに勝てないにしろいい線を行くと思っていたんだが、手も足も出ない。やはり、身体強化ありでもまだきついか。これは僕も本気を出さないとな。)
するとシークはあろうことか木刀を腰にしまいながらも柄には手を添えたまま、左足を半歩後ろに下げ、少し前かがみになった。そう、居合の体制である。
「なにシーク、降参するの?...ん?」
この時、母ファーラは息子が放つオーラに息を飲んだ。そして、今度は自分からシークに向かって行く。
そして、シークに刀を振り下ろす。
がその時、シークの抜きはなった斬撃が先に降りおろしたファーラよりも早く届き...なんていうことはなくあっさりとファーラの剣がシークの頭上を捉えそのまま気絶してしまった。
次に目を覚ますと僕はベットにいた。僕のベットだ。まだ、赤子の頃は両親と同室となったが今はありがたいことに一人部屋を与えられている。
「分かってはいたけど、やっぱりダメだったかぁ。」
落ち込んではいるが、当然だと割り切る気持ちが強い。僕もこの一年で成長したがまだ足りないとは自覚している。
「久しぶりにステータスを見ようかな。」
「ステータス」
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シーク・アークラット 4歳 人族
属性:無 性別:男
能力数値:410
スキル:アイテムボックス1/10
剣術の恩恵1/10
オリジナルスキル:七姫の行方0/7
直感
成長
居合1/10
魔眼<時>0/10
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(おお、案外成長してるなぁ。能力数値はようやく平均の半分ちょっとか。居合は母さんのとき初めて使ったんだけどもうレベルが上がってる。)
そんな風にステータスを見ていると、ドアの開く音がした。母さんだ。
「シーク、状態はどう?」
「うん、大丈夫だよ。」
「そう、よかったわ...。辛いでしょうけど、私はあなたに強くなってもらいたいの。たとえあなたが無属性でも誰もあなたをバカにできないくらい強く。」
そう、僕はもう自分が人より劣っていることに気づいていた。だけど、僕がこんなどうしようもない僕が今まで腐らずにやっていけたのは...
「うん、僕は強くなりたい。あのとき母さんが僕を救ってくれたときみたいに。」
「えぇ、あなたはきっといえ、絶対誰かを守れるくらい強くなる。だから、その第一歩としてまずは私と一緒に強くなりましょう。」
「うん!」
そうして一年間さらに辛い修行が続いた。