光の国編 ⅩⅤ
僕は魔族と向かい合う。
「さぁ、始めようぜぇ。」
(どんなに言い繕っても僕にできるのは、魔眼を使った一点集中攻撃のみ。初めの一撃でやつに攻撃を与えることができれば、僕にも勝機はある。)
僕はいつものように前のめりの姿勢となって、木刀を構える。それと同時に、木刀に魔力を纏わせる。
(僕だってこの二年間、何もしてなかったわけじゃない。)
僕は木刀に魔力を纏わせる。刀の芯まで、刀身は鋭くさせて。
(こうして、木刀に僕の魔力を纏わせることによって、この刀はより硬く鋭くなる。)
「なんだよ。鍵、使わねぇのかよ。...まぁ、いいや。死にそうになったら使うだろ。」
そう言って、勢いよく飛び出す魔族。僕は、目で捉えられないため直感に従い、相手の位置を測る。
(ここだ。)
「魔眼解放!」
瞬間、魔族の時間が止まる。時間にして、0.75秒。
「届け!」
僕の振るった刀は、確かに魔族の脇腹を捉える。
「なっ!」
僕は、相手の感触を確かに感じながら、勢いを殺すことなくそのまま刀に力を込め続ける。
「斬れろぉー!」
僕は全身全霊を持って、力をこめる。が、手応えはなく。魔族は僕の攻撃に従うようにその攻撃を受け流した。
「へぇ〜。魔眼ねぇ。結構厄介な力を持っているようじゃないかぁ〜。
けどまぁ、もう見たし、お遊びに付き合っている暇はないんだよ。次は、もっと強めに行くから、油断してると...死ぬぜ。」
そう言って魔族は僕に迫ってくる。
「お前の攻撃は基本的に左下段から右上段の範囲での攻撃が主だとみた。さぁ、これはどうする?」
魔族は僕の眼前に迫ろうかと言う距離で....直角に僕の視界の左へ移動した。
(爆発を移動に使ったのか!)
そう理解するのも束の間、僕は右手を抑えられ刀を抜けなくさせられる。と、同時に肩に手を当てられ、後方へ、よりにもよってアイリスの方へ吹き飛ばされる。
「なんだよ。つまんねえなぁ〜。早く使えよ鍵をよを〜。」
そう言って、またしてもアイリスに視線を向ける。
(あの魔族の言い方から察するに、七姫の行方を使えばこの状況をなんとかできるかもしれない。でも、なんだろう。この胸の違和感は。直感的に使ってはいけないような感じがする。)
「シークくん!大丈夫?」
「あぁ、なんとか。大丈夫です。」
「シークくん、何かこの状況を打開できる方法があるなら、使って。私は気にしなくて大丈夫だから。」
どうやら、僕と魔族との一連の会話で自分が何に関わりがあることを察したようだ。
(あぁ、そうだな。迷っている暇じゃない。)
「アイリス。僕とキスしてほしい。」
「ふぇっ!シークくん、い、今冗談を言ってる状況じゃ」
「ずっと前から、もしかしたら出会った頃から、僕はアイリス、君のことが好きだった。」
「え、シークくん...う、嬉しいよ。私だって、私だって!、ずっとシークくんが好きだっ っん」
僕はアイリスの気持ちが確認できるとすぐさまその柔らかそうな唇に自身の唇を押し付ける。
直後、周りから光が溢れ、僕の身を包む。
すぐさま光が収まると僕の身には純白の鎧が纏われ、手には柄が白く、刃は銀色に輝いた刀が握られていた。
「こ、これが...英雄武装...」
「やっと来たか。待たせるんじゃねえよっと」
魔族はその姿を見るや否や真っ直ぐに僕目掛けて、いや、見える。この魔族は真っ直ぐではなくジグザグに進んでいた。
(この武装によって能力が大幅に上昇しているのか。というか、この魔族しっかり、遠距離魔法警戒してる。抜かりない。)
僕は目の前に迫ってきた魔族の行動を捉え、奴が右手を僕に向けたため、僕はその延びた魔族の腕を、切り落とした。
「グハァ。」
(すごい。ここまで違うものなのか。やれる!今の僕なら!)
僕は確かに残る感触を、拳を握りしめることで振り返り、視線を魔族へと戻す。
「はっはっはっはぁ!ようやく面白くなってきたじゃねぇか。」
すると魔族は全身に紫色の魔力を纏い、切られた右手を魔力を物質化することで補い、ついにはその魔力で西洋甲冑に酷似した鎧を身に纏った。
「さぁ、第二ラウンドだぁぜ〜。」




