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七姫の行方  作者: ペン介
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光の国編 Ⅺ

 ある日の早朝。ここは、王宮のとある訓練場。そこで僕は自分の魔法を観察していた。うん、相変わらず濁った透明色の魔力だ。


言っておくが、もちろん僕が邪神討伐という使命から逃れられてはいない。というより、忘れたい事実はそっちではなく武装の件についてだ。


ーここで振り返りをしよう。僕は邪神討伐をするために必要となる、あるアイテム、というより武装を手に入れなければいけないのだが、それを手に入れるためには各国の属性の鍵となる姫と粘膜接触(キス)をしなければいけないのだ。ー


 そんな訳で、僕はアイリスを好きなのにもかかわらず、公的に浮気をしなければいけないのだ。忘れているかもしれないが、僕は前世は日本人。そういう倫理感に反することはしたくはないのだ。それに、一人や二人ならまだしも七人、いくら伝承が継承されているからと言って...どうしたものかなぁ。


 と、ぼやくのはもう何十回目だろうか。数えるのが面倒になっていた頃、時がすぎるのは早く、とうとう今日は光の国最大の魔法学校、聖堂学院に入学するための試験、入試が行われる。ここは地球で言うところの中高一貫制をとっているところで、学費の面もあるためこの年で入学するのは大体が貴族である。


 さて、試験内容は簡単な筆記と実技として魔法の行使をする。筆記に関しては、算術と魔法学基礎、言語学の三つなのでこれは問題ない。しかし、魔法実技は....頑張るしかない。一応策は考えているんだが。


「シークくん、一戦手合わせしない?」


 アイリスが来たようだ。アイリスもこの一年と少しで成長し、今は光属性魔法の初歩はマスターしたと言っていいほどになっていた。というか、いつの間にか中級にまで届きそうな、あれ...僕いらない子なんじゃなくはない!


僕だってただ漫然と日々を過ごしてきたわけではない。僕は魔法が使えないからね、剣術を鍛えるしかないんだ。


「ねぇ、シークくん?」


「はい!」


 しまった。自己嫌悪にかられている場合じゃない。しっかりしなければ。


「いいかな?」


「いつでもいいよ。」


 そう言うとアイリスは手を前にかざし、唱えた。


「バレット・レイ」


 すると6発の光の弾丸が僕に向かって放たれた。相変わらず早いな。さすが光属性。というのもあるが、アイリス自身の魔力操作も大きく起因している。そしていつも通り、僕はその魔法を魔力を纏わせた木刀で切った。


「ん〜。また簡単に防がれた。じゃあ、これはどう?」


「フォトン・バレット」


 今度はさっきよりも鋭く速い6発の光の弾が同時に僕に向かってくる。それを僕のレンジに入った瞬間、僕は一描きで最短コースを辿りながら、さっきと同様斬り伏せる。


 いや、さっきと違うのがあった。僕がそれらを処理している、絶妙なタイミングでアイリスが左から光の刃を僕に向かって振り下ろす。


 それを僕は今、ちょうど弾丸を斬り伏せた刀を、その刀身の方向を変え居合スキルを使って、右上方にある刀を左中央へ瞬時に移動させ、その勢いのまま光の剣を受け流す。


「え!」


 そのまま体制を崩したアイリスに、僕は木刀の鋒を向ける。


「くぅ〜。今日こそは魔眼くらいは使わせられると思ったのにー。」


 そう言って顔をしかめるアイシア。かわいい。


「まぁ、これでもお嬢様の護衛ですからね。でも、しっかり速度が上がっているし、6発をうまく使って裏もかけてる。」


「じゃあ」


「でも精度が落ちている。速さを追求するあまり魔法自体の完成度が下がってる。裏をかこうとしているのがバレバレ。これじゃあ本末転倒だ。何度も言うようだけど、魔法というのは魔力の塊だ。


 そして、魔力というのは膨大なエネルギー体。つまり、小さなエネルギーの集合物なんだよ。魔法を構成していく上で大切なのはこのエネルギー体のエントロピーをいかにして凝縮できるかにかかっている。


 それによって、魔力の強度が変わっていくからね。だから、いかに速度をあげつつ、凝縮できるかが光魔法士にとって永久、尽きることのない課題であり」


「相変わらす、何言ってるか分からないよ。」


「ごめん。だから要約すると、まだ伸びしろがあるということだね。」


「む〜。そればっかり。」


 そうは言ったものの本当に、アイリスの成長速度には目を見張るものがあると思う。僕も焦らされる。負けてはいられない。僕が彼女を守らなければいけないんだ。


「まぁ、でもこれで今日の入試は大丈夫でしょう。さぁ、支度して行きましょう。」


「えぇ。」


 そう、今日は入試。僕にとってはある意味特別な日。初めて公衆にアイリスの護衛として姿を見せる。アイリスに迷惑をかけないようにしなければいけない。


 僕の、もっといえばこの髪色のことで僕だけではなく、アイリスまでもがなめられるようなことになしたくない。いや、しなければいけないのだ。そのためには、試験を高得点で通過する必要がある。


「まぁ、頑張ってみようかな」


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