光の国編 Ⅸ
ある日、それは起こってしまった(だいたいここにきて一週間がたったくらい)。その日も僕はいつも通り訓練所に行き、いつも通りカピスさんに負かされ、いつも通り王宮に帰り、いつも通り汗を流すはずだった。
「あーぁ、今日もカピスさんに負けた。いつになったら勝てるんだろう。でも、最初僕が無属性だって言ってもカピスさん何も対応が変わらなくて逆にこっちが驚いたなぁ。しかも、カピスさんだけじゃなく他の団員の人も僕に普通に接してくれるし。」
この日の僕はいつもとなんら変らなっかった。いや、少しだけ浮かれていた。だから、いつもなら気付ける違和感にこの日、あの時の僕は気づくことができなかった。
王宮から戻ると僕はいつも通り汗を流すため、お風呂場に向かった。しかし僕は見えなかった。使用中と書かれた札がかけてあることに...。言い訳を言いたい。いつもこの時間に使う人いないのだ。
僕はいつものように服を脱いで浴槽に行く。(タオルは持ってるからね。)
「はぁ、訓練の後の風呂は(ガラガラ)格べつ...ん?」
「あっ、シークくんだ。シークくんもお風呂に入りに来たの?」
王女殿下が浴槽に浸かっていた。
王女殿下!?なんでここに。...そういえば使用中の札がかけられていたような気がする。あぁ〜なんで見逃してしまうんだ〜。
「ア...アイリス様。ごめんなさい、すぐに出ますから。」
王女殿下とはあれから少しは会話したものの、前世で友人なんてしっかり作れていない僕にとって女の子と話すのは至難の技で、ましてや将来的に僕に好意を寄せるようにしなければいけないのだからもうどうすれば...。
「もう、シークくん。何回言えば分かるの。私のことはアイリスでいいと言ってるでしょ。」
「でもさすがに王女様にそんな、呼び捨てなんて。っていうかこんな状況でそんなこと言ってる場合じゃ」
「ほら、シークくんもお風呂に入りに来たんでしょ。一緒に入ろうよ。」
「は?」
いやいや待て待て待て。いくら子供とはいえそんな男女が一緒に入るなんて、そんな。
「いや、アイリスさん。幾ら何でも、それはいけないですって。アイリスさんは一国の王女なんですよ。しっかり自覚を持ってください。」
「むぅぅ〜。」
あっ、かわいい。
「わかった。」
「そうですか。良かったです。」
やはり、一国の王女だけあってさすがに理解が早い。
「この後、私の部屋来て。」
「え!?」
どういうことだ。一体何を企んでいるんだ。
「何故でしょうか。」
「だってシークくん、全然私と遊んでくれないじゃない。これじゃあシークくんが私の護衛役の意味ないじゃない。」
「なっ!?」
確かに僕は最近自分を鍛えることにばかりに頭が回ってしまい、王女殿下の護衛というここに住むうえでの役目を疎かにしてしまっていた。...ん?遊んで?
「...わかりました。今後はできるだけ一緒にいるようにします。」
「そう。じゃあ、一緒にお風呂入って。(ニコッ)」
「な!?いや、でも。」
「できるだけ一緒にいるんじゃなかったの?。」
「くっ...わかりました失礼します。」
(チャプン)
「ねぇ、シークくんはさ。なんで私をさけるの。」
「いや、別に避けてるわけじゃないですよ。」
「ただ...」
「ただ何よ。」
「ただ、無属性である僕がアイリスさんと一緒にいると迷惑になるかと思いまして....。」
「何それ。...そんなの関係ないよ。(ボソッ)」
「え?」
「そんなの関係ないよ!そんなのただの言い訳だよ。」
(カチン。)
さすがに頭にきた。僕がどんな気持ちで、 もういくら相手が子供だからって容赦はしない。
「言わせておけば。君は僕の気持ちを何一つわかっていない。常に自分を中心に考えるのはやめてください!」
「...ヒック、...ヒック、...ウエーーン!」
やばい泣かせてしまった。幾ら何でも言い過ぎた。
「すみません、幾ら何でも言い過ぎ」
「自分を中心に考えているのはそっちの方じゃない。ヒック、迷惑?そんなのただ自分が無属性であることで悪口を言われたくないだけじゃない!」
「なっ。」
確かに僕は僕が無属性であることで前みたいに嫌な思いをするのを恐れてしまっているのかもしれない。
「そんなことじゃあ。ヒック、いつまでたっても、そのコンプレックスで嫌な思いをすることにヒック、なるんだよ。」
...そうか、父さんたちは僕のコンプレックスを改善するためにここに僕を行かせたのか。それなのに僕は嫌なことから避け続けて、
「わかったよ、アイリス。僕はもう逃げない。誰になんて言われようと、僕の属性は父さんの母さんから授かった大切なものなんだ。これからは誇りを持つことにします。」
「うん!」
こんな歳(精神年齢)にもなって気づかされるなんて。僕もまだまだだな。
「ようやくアイリスって呼んでくれたね。」
「はっ。すみません。」
「もぉ〜。アイリスでいいって言ってるでしょ。後、敬語も禁止だからね。」
「わかりまし(ギロッ)...わかった。...やっぱ無理です。」
「うぅ〜。これから意地でもその口調を直してやるんだからぁー。」
「アイリス、ありがとう(ボソッ)。」
「何か言った?」
「いいえ、何でも。」
アイリスは僕に大切なことを気づかせてくれた。だから、いやそれだけじゃない。仕草や性格、何から何まで僕を包み込んでくれる、そんな彼女が「僕は好きになってしまった。」




