光の国編 Ⅶ
「そうか...。君の意思、確かに受け取った。ようこそ王宮へ、歓迎しよう。今日からここが君の第二の家となる。」
「はい、必ずや王女殿下を守ってみせます。」
そうして、僕の意思も決まったところで
「じゃあ。そろそろ僕たちは帰ろうか。」
「えぇ。それでは陛下、シークを宜しくお願いします。」
「もちろんだ。」
(そうか、もう帰ってしまうのか。まぁ、公務もあるからな。)
僕の表情が曇ったのが見えたのか、二人は僕を抱きしめてくれた。
「シーク、これから辛いことがたくさんあるかもしれないが、精一杯頑張りなさい。」
「いつでもお家に帰ってきていいのよ。」
そう言って抱きしめてくれた時、二人の腕はとても温かかった。ずっと一緒にいたいと思わさせられる。だが、こういう時こそ心配させてはならない。
「うん。精一杯、頑張るよ。」
そう、僕は強くなるって決めたんだ。
そうして、二人は帰ってしまった。
結局両親には言えなかったが、陛下には国を治める長として、転生者としての僕の使命を言わなければいけないと前々から思っていた。そして、この部屋にいるのは僕とアイリスと陛下の三人だけだ。つまり、この場が絶好の機会だ。
「陛下。少し話したいことがあるのですが、よろしいでしょうか。」
「よかろう。...どうしたのだ。シークくん。」
「いぇ...その。」
僕がチラッと王女殿下に視線を移すと、陛下も察してくれたのか
「アイリス、そういえば「お母様」がお前を呼んでいたぞ。」
「えっ、本当?すぐ行かなきゃ。じゃあまた後でねお父様、護衛さん。」
そして、光のごとく部屋を飛び出した王女殿下をほほえましく思うのと同時に、あの猿でも分かるような嘘を自然に信じ込ませてしまう陛下の技量に驚きを隠せなかった。
「それでシークくん。二人きりになってまで話したいこととは何かね。」
「はい。とても、重要な話です。」
ここで一瞬口にするのをためらってしまう。こんな子供ごときのいうことを信じてくれるのだろうかという思考にどうしても至ってしまう。
だが、やはり陛下には嘘と思われても話しておくべきだ。それに陛下は理解のある人だし、このことで協力もしてくれるかもしれない。
「...陛下。単刀直入に申します。私は転生者なのです。」
僕は陛下の様子を伺うが、意外にも陛下は反応が少なかった。
「転生者というと、いわゆる前世の記憶を持った?」
「そうです。その認識で合ってます。」
そして、陛下は少し考える仕草をした。
「それは、君の両親にも伝わっていることなのかね。」
良かった。どうやら、100%ではないけど信じてはくれたらしい。
「いいえ。僕が転生者であるという事実なら伝えても良かったんですが、本題はその後にあります。」
「そうか。ではなんだ。君が本当に伝えたいことは。」
「はい。僕はこの世に生を受ける前、所謂神様という存在に会いました。そこで僕は言われました。もうすぐ...もうすぐ邪神が生まれると。」
「...それは真かね。」
「本当です。正確にはあと10〜15年後程です。」
そして、また陛下は考える仕草をした。
(やはり、こんな確証もないこと信じれるはずがないか...。)
「そうか、よかった。やはり君が英雄武装を受け継ぎし者か...ボソッ。」
「あの...陛下?」
「あぁ、すまない。いや、君の話を信じよう。」
そういって、陛下が僕に笑顔を見せた。いや、でも信じてくれるのは嬉しいんだけど
「でも、なんで陛下はこんな確証もないことを信じられるのでしょうか。」
「はっはっは。君は面白いなぁ。確かに何も知らないものがこの話を聞いたら、子供の戯言として聞きすらしない
だろう。」
(確かにそうだけど、何も知らない?)
陛下の顔がにやけているのが見えた。
「...君は”七姫の行方”を持っているね。」
(はっ?なぜそれを。僕はこのスキルを一度も誰かに言ってはいない。しかもこれはオリジナルスキルでノーマルスキルではない。まさか、相手の思考を読むスキルが)
「驚いているようだな。なに、これはスキルなんかじゃないさ。」
(じゃあ、あんたはエスパーか何かか。)
「一つ昔話をしよう。その昔、この世界に最悪の危機が訪れた。そう、邪神が現れたのだ。」
ん?そんな昔話あったっけ。
「だが、一人の竜人が現れ七人の戦乙女たちと共に邪神を打ち倒した。」
「それって。」
僕は、その竜人と似ている。
「この昔話は本当の話だよ。しかもその竜人は初め魔力がなかったという。もう何千年も昔だがな。しかし似ていると思わないか君の使命とやらと。」
僕はまだ使命を言っていない。...陛下はどこまで知っているんだ。いや、何もかも知っているのかもしれない。
「君の話を信じる要因になったのがこれだ。その竜人は今の君と同じく各国の王に邪神の復活を告げ、そして七つそれぞれの英雄武装を手にし、見事邪神を倒した。」
「いや、でも。」
僕はそんな話聞いたことがなかった。
「そんな昔話は知らないか。それは当然だ。なぜなら、この話は各国の王にしか伝わってないからだ。」
どうりで知らないわけだ。でも、そんなにこの話が大切な話なのか?
「理由は二つ。一つはこれを広めてしまうとその英雄が現れたと言うことは、同時に邪神が復活すると言うことの証明であるため、英雄が現れた時人々に恐怖が募り、君と、あと政治に悪影響が生じること。
二つ目は、自らを英雄と自称する奴を出さないようにするためだ。まぁ、これは看破のスキルを持つやつを連れてくれば良いのだが、ことは重大だ。もし、そいつが嘘でもついていようなら目も当てられない。」
なるほど。つまりはこの話を持ち出してくるということこそ、自分が英雄であるということの最大の証明になるのか。
「理解してもらえたかな。」
「じゃあ、現在存在している七魔王というのは?」
「その子孫、あるいはその同等の力を持った魔族が再臨したのだろう。」
「そうですか。...わかりました。」
「よし。では、私も協力しよう。と言いたいところだが、君はまだ若い。その年で、何も子供らしくできないのは悲しいだろう。...よって」
なんかすごいやな予感がする。
「君を一年後、アイリスと同じ時期にこの国の魔法学校に入学せさせることにした。まぁ、これはカイくんからも言われていたことなんだがな。」
まじか。俺、無属性だぞ。何考えてんだ、あのクソ親父め。
「ということだから、これから一年はこってり騎士団で絞られてくるといい。」
「...え。さっき魔法学校って」
「ちなみにこれはファーラ嬢から言われたものだ。」
何してくれんだ、母さーん!




