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ロリータ女王様の災難編

さてさて、よってらっしゃい見てらっしゃい。冬の女王様と女好きの男の邂逅だー。

………と、趣向を変えて物語を始めてみましたが、いかがです?

どうでもいいい、ですか………まぁこちらとしてもその辺の感想はどうでも良いですからね。お互いさまってやつです。

さて、これから男はどうするのでしょうかね。冬の女王様は男の予想よりもずっとずっと小柄で、その上ちょっと男性に不信感を覚えているようなので、一筋縄にはいかなさそうです。

「それで、あなたは私に何をしようというのかしら?怪しい薬?頭のおかしい香?それともちんぷんかんな催眠術?………言っておくけど、私には効かないわよ。塔の中でその手のものは効果が消えるもの」

「いやいや、私はそんなもの用意していませんよ。何より氷漬けにされてしまってはどれも使えませんしね」

まず男が始めたのは何気ない会話。ここからすこしずつ話を広げて、深く深く相手を知ることこそがナンパの基本にして真髄なのです。

何をするにも理解は欠かせませんし、どんな手段も相手を理解せずに使っては効果が低いのです。

………まぁ、極稀に何をやっても効果が最大限に出るような相手も居るのですが、それはこの際例外として除いてしまいましょう。

とにかく女性を口説くためには、相手を知ることは欠かせないのです。

「あらそう………それじゃ、私を口説きに来たとでも言うのかしら?そうだと言うなら四人目になるわ」

「おや、よく分かりましたね」

「少なくとも、あなたみたいにほとんど荷物も持たずにここまで来るような奴は全員私を口説こうとしたもの」

ですが冬の女王のガードは中々に鉄壁で、何度も口説かれただけはあります。


ですが、男にとってはこれくらいの拒絶程度であればないも同然。ガードになっていないどころかむしろ逆効果ですらあります。

彼にとって、女性を口説くときの障害はある程度までは大きければ大きいほど燃えるだけなのですから。

男は脳内で少しずつ冬の女王を口説くための策を立てていきます。

まず最初の会話で好みやら何やらを分析して、それに自分を合わせていく。

そしてそこで心を開き始めたら、今度は自分から相手に接近することで距離を縮める。

そこからは何気ない会話や行動と言った些細なことで自分への信頼や信用を積み重ね、最後に自分の方からちょっとだけ後押しする。

それが男の常套手段であり、数多の女性を口説き落としてきた『常勝不敗の女好き(レディ・キラー)』の手腕なのでした。

「………そうねぇ、それじゃ私を口説こうって言うのなら、あなたの秘密を言ってみなさい?何があっても凍らせたりはしないから」

でも冬の女王は、これまでに来た男たちからあることを学んできていました。

『まず秘密を言えと言って、素直に答えなければ警戒、答えた時内容がどうでも良い程度のものなら多少警戒、相当隠したそうなことであるのなら安心しても大丈夫』ということを。

しかし男も負けてはいません。

彼は女王の質問の意図を、経験則から推測してこう答えたのです。

「そうですねぇ、秘密って訳じゃないですが………私がこれまでに関係を持った人数は二桁後半くらいになりますよ」

これまでにもきっと、こんな質問をしてくる相手が居たのでしょう。

その時の経験と百戦錬磨の勘が彼を正解へと導くのです。

もうこれはただの質問ってレベルではないですね。完全に駆け引きの難易度が出合い頭にやるそれではありません。

やがて、冬の女王は男の拘束を解き、どこかへ引っ張っていきました。


急に女王が自分を招き入れたのでキョトンとしていた男でしたが、そこでようやくあることに気が付きました。

寒い、ものすごく寒い。もう凍死してしまいそうなほどに寒いという事に。

つまり女王は彼を温かい服装に着替えさせようとしているのです。

まぁ、何をするにも厚い毛皮のコートを羽織ったままでは少し不便ですからね。きっとそこら辺の気を利かせてくれたのでしょう。

男は、女王の気づかいに少し嬉しくなりつつも、彼女の性格をこう分析しました。

『多少これまでに言い寄った男たちのせいで疑り深くなっているが、根っこの部分では騙されやすいし信じ込みやすい。それと多少優しい』と。

しかしその予想は僅かながら外れている所があったのでした。

彼女が男を招き入れたのは………地下牢。

いやいきなり地下牢にぶち込むとかないでしょ。とか思うでしょうが………彼はあえてポジティブに考えました。

ここまで人間不信が酷ければ口説き落とした時は凄く尽くしてくれるだろうなー。と。

まったくもって能天気な男です。

でも考えなし、というわけでもなかったりします。

「なにニヤニヤしてるのよ」

「いやあ、ちょっとおかしくって」

冬の女王様は苛立った様子で地下を出ていきましたが、男はあることに気付いていました。

牢には鍵が掛けられていないことに。

その上手枷足枷もないので脱出も容易………まるで、女王様が男を試しているかのようなのです。

ここで取れる作戦は二つ、ここを出て会いに行く、あるいはここで待つ。男の経験則上、こういう場合普通は出て会いに行くのが定石なのですが………この投獄を受けて考え方を変えていました。

彼女は、これまでに出会った女性の中でも有数の攻略難易度を誇り、その上定石は通じない。と。

なのであえて牢を出ず待機し、ひたすらに彼女が来るのを待つことにしました。

幸いにしてこのような事態を想定し、最低限の食料は用意していたので、ある程度なら持ちこたえられそうです。

そもそもこんな事態を想定している方がおかしいのですがね。この際それは知らないことにしましょう。


―――――


………さて、ここからはしばしの間男がただ待つだけですので、一旦他の女王様たちの方を見てみましょう。

「そういえば、秋はどうなんだい?アタシたちだけが言うのも不公平だろ?」

「そーですねー。でも聞かない方が良いかもしれませんよー?」

今女王様たちは、秋の女王様が自分の悪かった点を中々言わないので、殴り合いに発展しかけている最中でした。

正に火が付く五秒前と言ったところ。

でも秋の女王様だって、言いたくないから言わない訳ではないのです。

ただ………『これ言ったら、みんな引くだろうなぁ』とか思っているから言わないのです。

しかし、流石に自分が殴られるのに比べればみんなに引かれることくらいなんてことはないと考えたのか、夏の女王様がいよいよ飛び掛かろうとした直前で話し始めることにしました。

「まあー、私がちょっと冬の周りの人間をなんとなくで全員人間不信にしちゃったからだろーなー」

「「お前が犯人か!」」

………もちろん、これまでの二人に負けず劣らず、いやそれ以上に酷い理由でしたが。

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